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叔父さんと僕(オヤジ編)
エピローグ・その5

■第三章〜別れの日(九龍編)〜

「叔父さん・・・・・少し・・出かけてくるね・・・・」
そう言って、叔父さんの手を握り締めた。
本当は・・本当は、傍に居たいんだ。
だけど、日本にはこれ以上居られないんだって、よく判らないけど・・・お父さんの仕事の関係みたい。
1人でも、傍に居たい。離れたくない。
・・・・でも、子供だから・・・ダメだって、1人じゃ生活は無理だって・・・、静かにそう言われたから、何も言えなくなった。
ロゼッタの人達が来てから、お父さんは焦ってるみたいで、なんだか怖い。
・・・・協会の人も、怖かった。
名前を聞かれて返事したら、急に腕を掴まれて、訳がわからない事を言われて、何かを近づけられて、それがすごく怖かったんだ・・・。
『秘宝』とか『秘文』がどうとか言ってたけど・・、何の事だったんだろう?

あの時叔父さんが飛び起きて、庇ってくれたのは・・・・夢とかじゃないよね・・・?
ちゃんと聞いたもん・・、『おまえのせいじゃない』って・・・『大丈夫』だって・・・、言ってくれたよね・・・?

「叔父さん・・・」

いつもそうだよね・・・、欲しいって思った言葉をくれる。
呪いはまだ解けてないのに、お医者さんの話だと、いつ起きるかとかまるでわからないって言われたのに・・・。あの時、無理したんじゃないかな・・?大丈夫だった・・?

大丈夫じゃ・・ないよね・・・。

また俺のために無理したんでしょ・・?
叔父さんのばか・・・ばか・・・・・・だけど・・・・・・・・・・・・大好きだよ。

もう決めたんだ。

叔父さんが呪いにかかって、倒れちゃって・・・、その後から覚えてない。
病院で目覚めたら、叔父さんは・・・眠ってた。
ずっと・・・ずっと後悔してた。
違う、今も・・・・苦しい。後悔はずっとしてる・・・。
俺が悪いのは、判ってるんだ・・・。
『おまえのせいじゃない』って言ってくれたけど・・・、あの時、もっとしっかりしてたら・・・強かったら・・・って・・。
助けたかった。
助けたかった・・・・・・・・・のに・・。
・・・・・・庇わなくて良かったのに・・・、叔父さんがこうなる方が、辛いのに。
代われるなら代わりたい。
泣いて泣いて・・・叔父さんにまた助けられて・・・、決めた。
強くなるんだ・・・助けるために。
助けられるのなら、そのためなら・・・何だってするって、決めた。
助けられるなら、死んだって良い。

だから、《宝探し屋》になろうと思う。

きっと何か手段があるはず。遺跡でかかった呪いだから・・解ける方法だってきっとそこにあるはずだから。泣いて立ち止まってても、叔父さんを助けることなんて、できない。
だから・・・・・・決めた。

きっと、1年したら・・・試験受けに戻ってくるから・・・・。
待っていてね・・・?必ず、叔父さんを助けてみせるから・・・。

「九龍・・そろそろ時間だ」
「うん・・・」
お父さんの声に頷いて、叔父さんの手をぎゅっと力を込めて握り締める。
冷たい手だね・・・。心の底からイヤな・・・イヤな考えが涌き出てきて震える。

このまま目が覚めなかったら・・・・?

怖いよ。すごく・・・・・。
だから、だから・・・・行かなきゃ。
立ち止まってる時間はないんだから・・・。
ごめんね・・泣くのは、コレが最後だから。

「叔父さん・・・・・・・・行ってきます・・・」

叔父さんが好きだって言ってくれた笑顔を頑張って作って手を離した。

行ってきます・・・叔父さん。待っててね・・・?

「九龍・・・・」
振り向いて涙をごしごしと拭う。もう泣かないよ。
「お待たせ・・お父さん」
近づいてきたお父さんに腕を引っ張られて、ぎゅって抱きしめられる。
温かい・・・。
「・・・・・九龍・・、必ず呪いを解く方法を探してみせる・・だから、安心しなさい」
「うん・・・・俺も・・手伝うから・・・。絶対助けてみせるから・・・」
「あぁ・・・そうだな」
絶対に、助けてみせるんだから・・・・。


部屋を出て、歩き出して・・・お父さんが急に立ち止まった。
「九龍・・・1階のロビーで待っていなさい」
「忘れ物・・・?うん、判った」
何だろう・・・?お父さんの顔、強張ってて怖い。
どうしたのかな・・・?不思議に思いながら、言われた通り、ロビーに向かった。


暫くして、あまりにもお父さんが遅かったから病室に迎えに行ったら・・・大変なことになってた。

病室に入る前から、凄い物音がしてて、慌てて開けたら・・・・。
お父さんが、叔父さんをお布団でぐるぐる巻きにして・・・・蹴飛ばしてた。
叔父さんは、殴られたみたいで、顔とか腫れてるし・・・、怪我もしてた・・。

なに・・・してるの・・・・?

「・・・・・・・・・・・や・・ッ・・・」

お父さんが何か言いながら、また蹴った。
やめて・・・・ッ!

「やめてーーーーッ!!」

どうしよう・・・足が、足が・・・動かない。
怖くて、体が動かない・・・。
やめて、やめてよ・・・お願いだから!
「やめ・・・・て・・・ッ!」
お父さん!
「おとうさん!!お父さん!!!!やめてッ!やめてったらー!」
「はッ!?九龍!?」
俺に気づいたけど、また殴ろうと手を上げたから、慌ててお父さんにタックルした。
「九龍、危ないだろう・・・?いい子だからロビーで待ってなさい」
どうして・・・?何を言ってるの・・・?
「お父さん!いい加減にして!叔父さん怪我してるじゃないか!」
やめて、お願いだから、やめてッ!!いやだよ、こんなの、いやだよ・・・ッ!
「は、葉佩さん・・・・お、落ち着いてッ!」
誰かの声に、お父さんが・・・大きく瞬きして、まわりを見渡した。
「お父さん、どうしたの?落ち着いてよー!」
叫ぶみたいに、言うとお父さんは・・・小さく「あぁ・・・」と呟いた。
「や、やっと落ち着いてくれたかね・・・葉佩さん」
「先生!患者が!」
「こ、これはいかん!早く処置をせねば!!」
お医者さん達の声みたい・・。
良かった・・・。

助かるよね・・・・?
ホッとして気が抜けて床に座りこんだら、お父さんの・・・小さな声が聞こえた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まぁいいか」

まぁいいか・・・?

酷い。
「お父さん・・・酷いよ・・」
「・・ッ!?」
泣かないってさっき決めたのに。溢れて止まらない。
でも、でも・・・・酷いよ・・・お父さん。
あんなに優しかったのに・・・・どうして・・・?
俺が何かしたのかな・・・?
寝てる叔父さんに、お父さんを怒らせることなんて、出来ない・・・・よね・・?心当たりないけど、やっぱり俺のせいなのかな・・?
でもだからって・・・。
「叔父さん・・・病気なのに・・・・酷いよ・・」
呪いにかかって、寝たきりなのに・・。
抵抗とかもできないのに・・・。
俺に対して怒ってるなら・・・、叔父さんじゃなくて、こっちを叩けば良いのに。

「く、九龍これにはワケが・・・ッ!」

肩を掴まれたから、びくっと身体が震えてしまった。
・・・・・・・・・どうしよう、とても怖い。
言い訳をしようとしてるけど、イヤだ。聞きたくない。
「ごめんなさい・・・暫くお父さんと話したくない」
「く・・・ろう・・・」

嫌われてただなんて、知らなかったんだ・・・。
ずっと優しくしてくれてたのに・・・。
何か不満があるなら言ってくれたらいいのに。
俺、バカだから・・、わかんないよ・・・。

どうしよう・・・思っても見なかった・・。
お父さんに嫌われてたなんて・・・、考えたことなかった・・。

足元が崩れたみたいな、怖さが・・・喉に張り付いて・・・どうしよう・・?

「・・・叔父さん・・・」

どうしよう・・?どうしたらいい?
怖いよ、どうしたらいい?

ごめんね、叔父さん・・・・どうしてお父さんが叔父さんを殴ったのか判らないけど・・・、きっと、俺のせい・・・だ・・。

「お父さんを許してね・・・?ごめんね・・・」

恨むなら、俺で良いから。
叔父さんとお父さん・・・とても大事な・・大好きな家族に嫌われたら・・・と思うと、胸が痛くて堪らないけど・・。
ごめんなさい。きっと何かしちゃったから・・・お父さん、怒ったんだ。
叔父さんをぎゅって抱きしめて、心の中で・・・何度も謝った。


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