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叔父さんと僕(オヤジ編)
第3部・その7

しかしだ・・・九龍から離れようとすると、しがみつかれていて離れねぇ・・・・。
か、可愛いけど、可愛いけどな!今は俺は行かねばならないんだよ・・・。
「九龍、すぐに戻ってくる」
「・・・いかないで・・・」
「あー・・・・・・。俺はどこへ行っても帰る場所はお前の元だ。約束する」
「・・・うそ・・・・・・」
「本当だって!ウソつかない!」
「・・・・・・本当・・?」
「あぁ・・・・。すぐに片付けて戻る。俺の強さは知ってるだろう?」
九龍の頬っぺたにちゅーとしてやると、くすぐったいのか逃げた。
おーおー、びっくりしたんだな?リアクションが可愛らしすぎて笑いが出そうだ。
呪われて白い世界で見たお前の、悲痛な顔ばかりが・・・頭から離れなくてな・・。
もう辛そうな顔や、悲しそうな顔をさせたくない。
あぁ・・・そうだった。
俺はとあることを思い出して、九龍を真面目な顔で見つめた。
「九龍」
「な、なぁに・・・?」
「あの鬼倒せたら・・・叔父さんが寝てるときにやったこと・・・もう一回してくれ」
今度はあんな悲壮な決意とともにじゃなくて・・。
笑いながら、あの言葉と一緒に・・俺にくれないか?
「え・・・・やったこと・・・・・・?あ・・・ぅ・・・あ・・あれは・・」
視線をそらしてもじもじとしながら、何故か腰のポーチに手をやっている・・・九龍・・・。お前、まさか・・・まさか・・・・。
「言っとくが、消毒液ドバーーッ!って振り掛けたあれじゃないからな?」
「え・・・・?違う?」
や、やっぱりかぁぁぁーーーッ!!!
お前のボケを見切ったッ!とか言いたいが・・・あぁ眼から汗が出てきそうだ・・。
「・・・叔父さんが言ってるのは、ちゅーのことだ、ちゅーちゅーちゅー」
3回も念を押してみる。コレだけ言えばわかるよな!?そうだよな!?
しかし九龍は少し後退りし、俺のことを上から下まで眺めて、心配そうな眼をしたまま・・・・涙目になった。
お、おぃ!?なんでそんな顔してるんだよ!?
「叔父さん・・・・・」
「九龍・・・・なんで泣きそうな顔するんだよ・・そんなにいやか・・?」
嫌とか言われたら、ショックで呪いに負けちゃいそうだぞ・・。
「だって・・・痛そうだし・・」
「は・・・?痛そう・・・・?」
もしもし九龍ちゃん・・・?
「でも・・薬とかで治るかなァ・・・」
「ちょ、ちょっとまてッ!」
「ん?」
「お前何を言ってるんだ・・?」
「何って・・・叔父さん・・。しっかりしてね?」
「お・・・おぅ・・・って、おいー?俺はちゅーしてくれってことを・・・・」
何を言っているかさっぱりな九龍に、もう一度ちゃんと言おうとしたらだ・・・・・。
「ほぅ?・・・・俺の目の前でか・・?」
ちゃきっと、俺のこめかみに銃口を押し付けて、大魔神が真冬の氷水すらまだ温かみがあるんじゃないかと思うくらい、冷たい冷たい声で宣言なさいました。
・・・・・・・・・・・・・・またもやすっかり忘れてたぜ・・・。
鬼の前に俺絶体絶命大ピンチ!?
「えっ!?いや・・・そのな・・・?ちょっとしたジョークでだな・・・」
「ここに鬼と一緒に眠ってもらおうか・・・・?」
「お、おぃ〜〜ッ!洒落になりませんよ!お兄様ー!」
「気持ち悪い言い方をするなッ!」
あはははは・・・こえーーーッ!グリグリと押し付けてくる銃口が痛いです。
いや〜〜っ!助けてー!九龍ちゃん!!
叔父さん大ピンチアルヨッ!?
「お父さん、それ危ないよ?」
おぉ、九龍・・・お前は本当、優しいな〜!
ぎゅっとしようと、九龍に手を伸ばそうとしたら、横合いから浚われた。兄上様に・・・。
九龍も嬉しそうに手を背中に回して抱きついている。
わぁ・・・・ホホエマシイ親子のホウヨウですねぇ・・・・。
羨ましい。ものすごく羨ましい。
「ぐぅぅぅぅうーーーーーッ!仲良し親子めッ!見せつけか!?あてつけか!?うーらーやーまーしぃーーー!」
床をダンダンと踏みしめながら唸ってみた。
九龍、俺のことも構って〜!叔父さん兎みたいな生き物だから、さびしいと大変危険でございます。
かまえ〜かまうんだ〜!お、九龍が俺を見て首を傾げてる。
「叔父さんもしたいの?」
やっと気づいてくれたんだな!?
「・・・・ッ!く・・・九龍、そりゃぁ勿論!」
ぶんぶんと首が痛くなるほど頷いてやる。九龍はかな〜〜〜〜〜〜りッ鈍いからな・・・、このくらいオーバーにやらねぇと伝わらないんだよなぁ・・。
しかし、どんなにオーバーにしても伝わらないものは伝わらないようだった・・・。
「おとーさん」
「・・・?九龍どうした?」
「叔父さんにもぎゅーってしてやって」
俺を見て面白くなさそうな顔に何故かなった九龍は、またもや見事な爆弾を放ってくれました・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
脳内思考停止。CPRを実施シテクダサイ・・・・・とか脳内H.A.N.Tが反応しちまったぜ・・。
固まりました。ものの見事に。俺は石化したまま、ぎぎぎぎと油をさしていないような音を立ててるんじゃなかろうかと思うほど固い首を巡らせて、兄貴を見た。
おーぉ・・・見事に固まってるな!
てかな?てかな・・・?
・・・・・・・・・・・・・・お、おぃおぃぉぃぉいー・・・・おま・・・・おまえ・・・それ本気・・・!?
「・・・・・・・・・・・・・断固拒否する」
兄貴が声を振り絞って宣言した。ものすっっっっごく、嫌そうなんだが・・・・?
俺も嫌だー!九龍ならいくらでもというか、大歓迎なんだが!
「俺も兄貴にぎゅっとかしてもらうくらいなら、その辺の骨にハグするぜ」
非常に寒い。本気で嫌だ。俺達の気持ちは同じだろう、多分な。
九龍は俺達の返答を聞いてびっくりしたような顔をした後、手を膝の上でぎゅうと握り締めて悲しそうな顔をして俯いた。
「・・・叔父さんとお父さん・・喧嘩しちゃいやだよ・・」
きゃーーーー!九龍ちゃん、泣かないでぇ〜〜〜〜!!!!
俺は慌てた。本気で慌てた。
「く、九龍ッッ!違うッ!」
兄貴もかなり慌ててるな。
だってそうだろ・・・多感な時期の子供に身内の争いとか見せたら確実に悲しむぞ?
九龍はただでさえ、小さい頃の両親に置いて行かれた時の傷が・・・多分、両親がどうのではなく、置いていかれることの辛さとかだな・・・それが、ずっと根付いているんだ。俺と親父の仲が悪いと思ったら、きっと引き裂かれそうな痛みを持つんじゃないか・・・?
そんな痛みを与えたくない。これは俺と兄貴共通のもんだろう。
「くろーーーう!!!仲が悪いわけじゃないぞッ!?叔父さんとお父さんは仲良し兄弟さッ!だよな?兄貴」
慌てて兄貴に目配せすると、嫌そうな顔をしながらだが、応じてきた。
「う・・・うむ。そうだな・・・・・・オトウトヨ」
うーむ見事なまでの・・・。
「棒読みするなよ・・・」
「お前こそ気持ち悪いぞ、その顔」
「兄貴こそ引きつってるぞ!」
あぁくそッ!あー言えば、こー言う!この大魔神めー!もーちょいにこやかに言いやがれ!
「・・・やっぱり・・仲悪い・・?」
俺達を見上げて不安そうに言う九龍に、更に慌てる。
「そ、そんなことないぞー!?」
「そうだぞー!」
肩をがしぃっと組み合って朗らかに・・出来るだけフレンドリーに笑う。
俺達兄弟仲良いんだぞぅ〜あははーうふふー・・・・・・つ、疲れる・・。
やべぇ、疲労度が上がったせいか・・・もちろん、精神的な疲労度だ・・眠い!呪いに負けそーです!
あー九龍〜俺を助けろ〜〜〜!お前の笑顔で俺は生き返る!
もうこの拷問は勘弁してくれ・・・と祈る気持ちで九龍を見ると。
妙に熱っぽい眼で俺達を見ていた。
そ、その顔は「良いなー仲良さそうで」とかいう感じのことを考えてないか!?
兄貴が慌てて、腕を解きながら九龍に声をかける。
「く、九龍・・・?」
「お父さん・・」
俺のことも呼んでくれないか・・・?と呼んでみる。
「九龍?」
「叔父さん・・・」
瞬間、柔らかな春の陽射しみたいな笑顔を九龍は浮かべた。
「大好きだよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・衝撃。
「・・・・・・・ッ!」
「・・・・・ぐふっ!」
や、やべぇーーー!か、かかかかか・・・・・・可愛い!ホント可愛い!かーーーわぁーーーいぃぃーーーーー!!!!(叫)
思わず鼻を押さえて仰け反った。クリティカルヒットですよ、九龍ちゃん・・・。
あぁ、兄貴も正面から食らったせいか、お顔真っ赤ですぜ、旦那!
九龍は本当心からそう思って言ったんだろうな・・・。
九龍の優しい気持ちがこもった笑顔だった・・・愛しい、何よりも守ってやりたい・・・笑顔。
・・・・あぁ、幸せで今なら何でもやれそうだ・・・。
「く・・・」
ろう・・・と呼びかけて止める。九龍が急に顔を強張らせて全身を硬くしている。
痛みを我慢するように目を閉じたまま、俺達の方へ倒れてきた。
「九龍ッッ!!!」
慌てて抱きとめると、返事も出来ないのか辛そうに息をしている。
「九龍!」
「・・・・声が聞こえてるんだろうな・・」
「鬼か」
「・・・・秘宝についてまわる死者どもの怨恨の念もあるのかもな・・・」
九龍は、感受性が高い。人一倍純粋だし、素直だ・・・・だから、余計なものまで受け入れちまう。
この子をバディにして、何度か引きずられかけたことがあった。
・・・だいぶ、俺の影響でタフになったんだが・・・。
九龍、そんなものに引きずられるな!
「おいッ!九龍!」
「おじさ・・・ん・・」
全身震えてる身体を抱きしめてやりながら、怒りが胸の底から滲んで来る。
「おい!九龍!大丈夫だ・・・あいつは叔父さんが今からぶちのめすからな!」
俺を見て、何を言われているのか・・・・どんどん青ざめていく。
何を言われているか予想がつく。
九龍を・・・・、それ以上惑わすな・・・鬼!亡霊ども!
「いかないで、おじさん!」
腕にしがみ付いてきた九龍を、やんわりと外させる。
どうして、と言いたげな眼を見ながら、言い聞かせるために、口を開いた。
「暫く我慢してくれ・・・・・・・・。兄貴、九龍を頼んだぞ・・・・」
「まかせろ」
どうやら俺や兄貴が傍に居たり九龍を抱きしめていると、声が遠ざかるのか・・・震えが収まるようだしな。
あれだな、俺と兄貴は無駄に生命力だけはあるからな・・・寄って来れないんだろう。
エジプトあたりじゃオーラが強いとか、地元の奴に言われたこともあるしな・・。人間蚊取り線香ってことか・・。
兄貴も同じ考えなのか、九龍を座らせて背後からその肩に手を置いた。
「九龍・・・帰ったらちゅーしてくれな?」
なぁ・・・頼む。さっきみたいに笑って言ってくれ・・・、悲痛な顔ばかり思い返せて、辛いんだ。
「まだそれか!お前はさっさといけ!時間がないんだろ!」
お、おぃぃぃー!言うな!バカ兄貴!
しかし・・・気づかれていたのか・・・・さすがだな・・。
時間はないだろう・・・実際どんどん意識は遠ざかりそうになっている。
けどな!いいかげん怒頭に来てんだよッッ!!!
九龍を、この遺跡から無事に外に出すまでは、絶対俺は負けねぇ・・・。
「九龍、叔父さんの応援頼んだぞー?」
余裕ありそうに、九龍に声をかけた。声はまだ聞こえてるんだろうな・・・どこか辛そうだ。
俺は大丈夫だ・・・心配しないでくれ、な?
「叔父さん・・・・頑張って・・・」
九龍、それじゃダメだろ?
負けるな・・・負けないでくれ。俺もお前の親父も居るんだ・・。大丈夫だから、安心してくれ。
「九龍?もうすこし情感たっぷりいってくれ?負けるな・・声なんかに」
俺を見て悲しそうな顔をしている。
あぁ・・・・・くそッッ!!!鬼が邪魔してるんだなッ!?
待ってろよ・・パンツ一丁の悪代官め・・今すぐ引導を渡してやる・・・・・ッ!
だが・・・その前に。やることがある。
俺は怒りを一時的に静めるために深呼吸をして九龍を見つめた。
「九龍・・・いいか、命を差し出す意味はないんだ。あの悪代官にペロンと食べられるだけなんだ」
俺が言うと目を見開いた。
お・・・・お前な・・・「命を捧げる」とか「食らう」とか言われておいて、食べられることを想像してなかったのか!?
してなかったんだろうな・・・そうだろうな・・・九龍だしなぁ・・・。
俺を助ける、ことしか考えてなくて。どうなるかをまで考える余裕がなかったんだろうな・・。
本当に暴走したら一直線の暴走イノシシだな、お前は。
「骨の集団を見ただろ?あんな風になるんだよ」
「たべ・・・」
「られたくないだろ!?」
「うん・・・」
言い含めまくる。さすがに食べられるのは嫌なんだろう。
「声はお前をおびき寄せようとするが、全部ウソばっかりだ!信じるな!」
俺に関しては・・・ウソじゃないんだろうけどな・・。
もしかしたら、初めてお前につくウソなのかもしれねぇ・・・・・。
だが、信じてくれ・・・これだけは。
俺は負けねぇ。呪いにも鬼にも全部に。
お前が居る限り負ける気がしない・・・。
「鬼を倒して秘文をゲットする!九龍、判ったなら、応援、してくれ」
勝つから頼む。笑って応援してくれ〜!
九龍は少し迷っていたが、やがて顔を上げると・・・・笑った。
まだ弱々しいが、それでも笑った。
「叔父さんの格好良いとこ見たいな〜!いつもみたいに!」
「・・・おうッ!」
その可愛い眼でじっくり見てくれ!!!
「・・・・・・・・怪我しないでね・・・?鬼さん倒せたら・・・」
へ・・・?倒せたら・・・なんだ・・?
九龍は顔を赤くしたかと思うと急に俺から眼をそらして俯いた。
「・・・寝てたときにしたこと・・ちゃんとするから・・・」
ゴトゴトゴトリッと盛大に銃やらH.A.N.Tやら取り落とす兄貴を、俺は茫然としながら、視界の片隅で見た・・・が、んなのどうでもいい!!!!
九龍・・・?本当にホントなんだな?ホントにホント???マジマジマジ!?
「頑張って、叔父さん」
九龍は、俺を見て、またもやクリティカルヒットする笑顔を向けた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・九龍、俺は今猛烈に燃えちゃってるかもしれません!」
昔見たどっかのヒーローアニメの主人公みたいなことを言いつつ俺は走り出した。
あぁ・・・今ものすごく幸せかもしれねぇ・・・・。

よぉ、悪代官・・・俺は今無敵だぜ?

九龍の、バディ専用アクティブスキル『応援』は俺、限定のスキルなんだよなぁ〜〜〜〜〜〜!限定が重要ポイントだ!
効果は俺の全ステータスUPと加護効果なんだが、今の俺は本気で強いぞー!
2丁銃で的確に急所を狙う。
「体力だけは無駄に多そうだな、悪代官」
《貴様・・・・おのれぇ〜〜〜〜ッ!》
でかい矛を振り回して迫ってくるのを、背後に飛んでかわすと、狙ったかのように着地位置目掛けて冷気の塊のようなものが襲い掛かってくる。
「当たるかよ!ノーコン!」
着地後素早く飛び退いて、攻撃後の隙に銃弾をお見舞いした。
《ぐぉ〜〜ッ!》
「おいおい、弱点多いなぁ・・お前実はめちゃ弱いだろ」
《おのれおのれッ!下品、下劣な贄の分際でッ!》
鬼の怒声に反応した骨っ子どもが俺の周囲を囲んできた。
おーお、今更マジになられてもやりがいないんですけどね〜!?
大丈夫だろうが、一応安全確認をしておくかと九龍の方を見た・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おいおぃおい・・・。
九龍ーーーーー!!!なんでこっち見てないんだぁぁぁぁーーーーッ!!!!!
俺のカッコイイとこ見ろよ・・なぁなぁなぁぁーッ!
今の俺はサイコーに輝いてるんだぞ!?見なきゃ損だって!
九龍は兄貴の方を向いて座っていた。・・・つまり俺に背を向けていらっしゃるのでございますよ・・・泣くぞ?本気で泣くぞ?号泣するぞ!?
「――うぉッ!?」
茫然としていた俺の背後から、矛が迫り慌てて避ける。
「あ、あぶねぇ・・・」
続けて矛を横薙ぎに振られ、俺は避けながらその腕に攻撃し動きを止めた。
背後にいた骨が切りかかってくるのをまわし蹴りで倒し、敵のいない安全な場所で銃をリロードする。
《こしゃくな・・・》
「けっ!雑魚がどれだけ集まっても所詮は雑魚だ」
《おのれ・・・》
「・・・・・・ん?」
視界の隅で九龍が俺を指差した。お?なんだ?『見てー叔父さん格好いいんだよ!』とかか??期待して耳を済ませば・・・。


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 【7】 【8】 【9】 【10】 
【11】 【12】



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