叔父さんと僕(オヤジ編)
第3部・その6(後編)
『敵影を確認。移動してください』 H.A.N.Tの音声が宣言した通り、扉を開けると・・・・・・、げげげーっ!ここにも骨っ子集団がわんさかじゃねぇか。 とりあえず邪魔な骨を大剣で横薙ぎに切り、通路を作る。 あーこれだけの動作が・・・・だるい。やべぇな・・・、あんま動けねーかもしんねぇな・・。 だが、なんとしても遺跡を出るまでは倒れねぇぞ・・・気合でなッ!九龍を無事に助け出すまでは・・・俺は屈しない。 走り出しながら、九龍を探す。どこだ・・・!?どこに居る!?無事なのか? あー心配だ、ものすごく心配だ・・・・・ッ!おッ・・・・いた!!!いたいたいた!良かった!九龍は無事のようだな・・・。 九龍と兄貴は広間の中央付近の壁際に居た。 九龍に何か話しているようで、端から見ると2人の世界だった・・・うらやましい・・・・。 「・・・・・・・・なんだ?」 ふと、強烈な寒気を感じて、そちらを見ると・・・・・部屋の真中にある高台にある祭壇の前に、鬼が居やがった。 遠めにもはっきりと判る威圧感。冷気というか・・・妖気、か? あちらは俺に気づいていないようだった。 あーあちらに見えますのが悪代官でございます〜ってか。 「さて・・・どうするか・・・」 あの爬虫類を思わせる獰猛な眼は、九龍と兄貴を見つめていた。 怒気もあらわにして殺気立っている。 しかし、そのパンツはどーよ・・やっぱお前エロ悪代官だろ・・・。エロっていうか、変態? 変質者ですら、パンツ一丁で出歩かないぞ?むしろ全裸にコートの方がまだマシだろ。 まァ・・・・・どっちも全力で拒否だけどな!!! 俺の九龍の半径1キロ以内に近寄るなよ!しっしっしっ! 「・・・・・・・・・・・・・・・・・ッ・・・」 瞬間、視界がゆれた。足元に座りこみ耐える。 やべぇ、今意識が飛びそうだったぞ・・・・眠い!ひたすら眠い! 相変わらずH.A.N.Tには呪いの状態異常が出ている。この眠気は呪いのせいなんだろうな・・・・。 だが!気合だ気合ー!気合を入れろォォォォォォー!!!! あいつをあのまんまにしておけない。血祭りにあげて地獄に送っちまわないと、安心して寝ていられない。 九龍に、呪いにかけさせるわけにはいかないんだ。 遠くに見える九龍を眺めた。兄貴とまだ見つめあっている・・・・。 あーーあーーーあーーー!いいなぁ・・・。羨ましい・・・本気でうらやましー! 九龍・・・・もう、大丈夫だからな?安心してくれ。お前の親父と俺が居るんだ・・・お前には指一本触れさせない。 あんな悲痛な決意をさせてしまって・・悪かった・・・。 お前にどれだけ好かれてるか・・愛されてるか、判っちまって・・・叔父さんはもういっぱいいっぱいだ。 ホームページとか作っちゃいそうな勢いだぞ!?タイトルは「甥っ子ラブリーメモリアル」。これだな。まぁ・・勿体無くて公開しないけどなッ! 日記もつけなきゃだな!新聞投稿とかもしたいくらい、俺は嬉しいんだぞ!? ・・・なァ・・ここを無事に出たら、笑ってくれ。 泣き顔も可愛いけどな・・・笑顔のお前を見るのが叔父さんの幸せなんだ・・。 あーしかし・・・ぎゅっとしてやりてぇー!あぁ・・・俺の想いを込めて投げキスを送ってやるー! ん〜〜〜〜ちゅッッぱぁぁ〜〜〜〜ッ!!!ぜーはぁ・・・届け!俺の愛ー! しかし九龍は兄貴と親子の抱擁真っ最中だった・・・・・・・・【俺の愛・完】 ・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・ええいっ!雑念はとりあえず置いとくとしてだ! な、泣いてないぞッ!目から出てるやつは汗だ! えーでだ・・・、『呪い』は俺が考えるに2種類だ。 一つは眠り、一つは秘文。 石碑には『生贄が2人』とあった・・・つまりは・・・・、一人は供物として生贄になり、もう1人は秘文を刻み、生贄になる。 ・・・・・・・・・・・・・あれだろう・・。時々あるんだよな・・・。 命を鍵としたえげつない遺跡がな・・・。 秘文は秘宝の在り処を指し示し、鍵は『入れ物』に宿る。 秘文は鍵の役割を持っている・・・つまり秘宝が欲しければ鍵を刻まなければならないってことだな・・。 秘宝の在り処を探し出し、鍵を開ける際、捧げられる運命だ。 古代人の考えることは、大抵えげつないやり方が多いが・・・。 なんとしても。九龍に秘文を刻ませてはダメだ。 どうやら兄貴が、邪魔をしたらしいが・・・・・油断できないな・・・。 鬼は、見たところ・・・・秘文と鍵の番人か・・・? 供物はこの部屋じゃなく、一つ前の祭壇で捧げられたんだろうな・・。あの通路で呪いにかかり眠った後、祭壇の上で。 あの骨はこいつが食った奴らの骨か・・。 「どうりで・・・子供が多かったわけだ・・」 九龍は絶対に渡さねぇ・・・・・。 装備を確認し、ワイヤーフックで欠けて天井まで届いていない柱の上に登る。 本当は九龍についててやりたいんだが・・・。あの鬼は俺がやる。 九龍を散々惑わせた、あいつを許せねぇ・・・。 手早く兄貴のH.A.N.Tに俺のH.A.N.Tの情報を送る。呪いだのなんだの、全部。 ・・・俺は多分、もったとしても遺跡を出るまでだろうな・・・。 なんとしてもそれまでは、俺は眠らないが・・・。 いつ、呪いに負けて寝てしまうか判らないからな。・・・後のことは頼んだぜ。 九龍の方へ向かわないように骸骨を倒しながら鬼へと進む兄貴が、一瞬立ち止まる。 周囲を見渡しているので、俺を探しているんだろうな・・・。 おーい俺はここですよ〜と、ライフルで兄貴の傍の骸骨を狙撃する。 俺に気がついた兄貴は、俺に手を振ってくれるわけではなく・・・・・銃を撃って来ました。危ないです・・・・って・・。 「うぉっとっ!!お、落ちるッッ!」 あぶねーよ!!!何するんだ、ボケ! あー・・・・・あー・・・・大魔神モードじゃねぇかー!しかもかなり怒ってるぞ、あれは。 俺を見た目は殺気がありました。怖いです、お兄ちゃん・・・。 兄貴はそのまま突っ走り、鬼と対峙した。 階段を降りた鬼はかなりでかい。3メートルはあるな、あの身長。でかい矛を振り回し、兄貴を攻撃し出した。 俺はとりあえずここからライフルで骨っ子を狙い援護する。 時々めまいのように、眠気がくるのが厄介だ。 あーーー気合ーーー!くそ、九龍でも眺めて鋭気を養うか・・・・? 「・・・・・・・・・・・・・・・・・おぃ・・・」 九龍は居た。それも、兄貴達に向かって・・・・いや、鬼に向かって歩いている。 ふらふらとした足取りは、通路で見た九龍と同じだ! 眼は空ろに開かれている。完全に操られてる・・・・ようだな・・・。 「九龍ーーー!!行くなッッ!」 大声で叫ぶが聞こえてないのか、足取りは止まらない。兄貴も気づき、九龍を止めるために駆け寄ろうとした瞬間! 「あぶねぇッ!兄貴!」 「ぐッッ!!!!」 矛になぎ払われ、吹っ飛ばされる・・・・くそッッ!!! 《我が愛しき贄よ・・・・さぁ、食らってやろう・・・お前を大事に思う者の目の前でな・・・》 九龍が一歩一歩進み、鬼の手前で立ち止まる。 俺は無我夢中でワイヤーを天井の岩に引っ掛け、反動をつけ飛んだ。 間に合え!!!!! 「九龍ーーーーーーーッッ!!!!」 空中から九龍の手を取ろうとする鬼をハンドガンで打つ。 《ぐおぉッ!?》 「俺のッッ可愛い子ちゃんに汚ねぇ手で触るんじゃねぇー!」 着地をし、ナイフを投げつけると、突き刺さり怯るむ。その隙に九龍を抱き寄せた。 そのまま抱きかかえ、兄貴の傍まで走っていく・・・・あぁ・・・・・これだけの動作で息が切れる・・・。 「は・・・ぁ・・・・・ぜぇはぁ・・・・・く・・・ろう・・しっかりしろ」 下ろして俺を茫然と見ている九龍の頬っぺたを軽く叩く。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「九龍、おい、ほうけてないで何とか言え」 俺を見ている右眼の焦点は合っているが、操られていたのを考えると色々と心配になる。 「お・・・・・・おじ・・・・さん・・・?」 「あぁ、そうだ。お前の格好良いナイスガイの叔父様だぞー」 「うそ・・・・ほんと・・・?偽者?」 「く、九龍・・・・誰が偽者だ!」 九龍は俺を見つめたまま、信じられないという顔をしていた。 あーその顔も可愛いな・・・・・・九龍をぎゅうっと抱きしめてやる。 あぁ・・・もうハグできないと、一瞬覚悟したからなぁ・・・・まだこうしてハグできる喜びを噛み締める。 「叔父さん・・・叔父さんッ!」 ぎゅうと俺に抱きつき、泣き出した。 泣く寸前のふにゃっとした顔を至近距離で見ちゃって叔父さんどっきどきーだぞッッ! 「おー・・・・・悪かったな・・・・」 まだ呪い解けてないんだが、お前が居る限り耐久不眠マラソンも出来そうだ! 「ばか・・・ばかーーーッ!」 「あー・・うー・・・あのな?九龍・・・・俺は呪いには負けないって信じてくれないか?」 色々言いたいことは山済みなんだが、泣いている九龍に何も言えなくなった。 《き・・・・貴様・・・ッ!確かに呪いにかかったはずでは・・ッ!?》 あー・・・・お前のことすっかり忘れてたぜ・・・。 「うるせーな!阻止するって言っただろうが・・・・俺は有言実行の男なんだよッ!」 「はた迷惑な暴走をよくするけどな・・・」 ついでに大魔神も忘れてた・・・。 泣いている九龍の頭を撫でてやりながら、見渡すと、こちらを腕を組んで見ている兄貴がいた。 怪我は・・・・対したことないようだな・・・。 「お・・・・・おじさん・・・・・こ・・・こえが・・・」 九龍は何かに怯えたように震えだした。 「声?」 「・・・・・・・・いやッ!・・・いきたくないッッ!」 イヤイヤと首を振り青ざめる九龍を抱いたまま、鬼を睨んだ。 「・・・・・鬼に呼ばれているんだな?」 「・・・・・・・・・う・・・うん・・・・・・。おいでって・・・・呼んでる・・・。あ・・・・・・ぁぁ・・」 「九龍、意識を保て」 「叔父さん・・・・叔父さんのとこにいたい・・・もう離れたくない・・・やだ・・・・」 《九龍・・・・さぁ、我が元へ・・・》 「誰が行かすか・・・・・・・・・ッッ!」 兄貴が武器を構え退治するのを止める。 「兄貴、九龍を頼む」 「・・・・・・・・戦えるのか?」 「あぁ・・・・・こいつは、俺がやる」 悪いがかなり本気だ。久々に激怒だ。 九龍の繊細な心に付け入って、散々惑わせて。 その上、この子の魂を食らうと・・・・俺の前で言いやがった。 ・・・・覚悟しろよ・・・鬼め! |