叔父さんと僕(オヤジ編)
第3部・その5(後編)
気がつけば白い世界に居た。 あん・・・・?ここどこだ?見渡す限り、一面真っ白。驚きの白さだぜッ!とか、アホなことを言ってないで・・・どうしたんだったけな・・。 あぁ、そうそう!俺はさっきまで九龍に告ってた・・・って違うッ!庇ってた・・・・んだよな?確か! 呪いにかかったんだろうな・・・きっと。 それで、ここは・・・あの世とかいう奴か?だが、肉体は死んでないはずだよな? 夢の中か・・・? まァ・・・その覚悟で呪いを受けたんだから、構わねぇけどな・・・九龍は?あの後九龍はどうしたんだ!? 泣いてた・・・。あんな状態のあの子を、あんな所に置いてきた。 クソッ・・・・! 『九龍ッッ!小五郎ッ!』 うぉぉぉッとビビった!大魔神の声に条件反射で怯えてしまいました。 後ろ暗いことなんざ、ないはずなのになぁ・・・。ない、よな・・?ないない、ない! ちゅーとか、ハグとかしまくりましたが・・・告りもしましたが・・・、ありゃセーフだよな!純粋で美しい愛です! 青少年の主張に出れるくらい、清らかです! ・・・・・・・・そのはずなんだが、何故だろうか、寒気がするぜ・・。 バレたら3枚におろされて肉屋に・・・・売り飛ばされそうだぞ・・・・。 こえーこえーッ! ・・・・ん?3枚おろしは魚屋じゃないの?ってか・・・うぉ!?どこからツッコミが!? 『――ッ!大丈夫か!?』 しかしどこから声が聞こえてきてるんだ? 『・・・・おと・・・・うさん・・・』 く、九龍ッッ!なんて声だ・・・可哀想に・・・。 『たす・・・・け・・』 ・・・・そんな声を出させてるのは、俺なんだよな・・・? 悪ぃな・・・九龍・・・。お前の心に傷をつけちまったな・・・・? こんなクソ呪い、とっとと破って、お前を抱きしめにいくからなー!! お前が嫌がってもずっとぎゅうとしてやる。 『あぁ・・・助けてみせる。安心しなさい、九龍』 さすが親父だな・・・・・・・・・・・・・・・・・・マジでその座、俺にくれ。 「叔父さんv」も良いけど、「おとうさんv」とか呼ばれたいんだよぉぉぉぉー!!! 「あなたv」でも「ダーリンv」でも、良いんだけどな・・・・・・ははははは・・・ってあぁぁぁ・・・・・泣いてるー! 『・・・・・・っく・・』 マジ泣きしてるー!!!あぁ、早く、ぎゅっとしてやれ!アホ兄貴! 『放さないつもりか・・・・・?おい・・・小五郎、九龍を放せ』 放す、放します!九龍を、慰めてやってくれ! てか、身体動かせるのか・・・?力を抜けー俺の身体ーッ! ・・・・・・お?緩んだ気がするな・・・? もしやどっかで繋がってるのか? 『お・・・・じさん・・・たすかる・・・?』 助かるぞ、ハニィー!というか、気力でぶち破るから安心しろ。 お前を置いて逝くわけがない。 お前がまだ・・・俺のことを必要としてくれてるなら、傍に行く。 こんな呪い、屁だ、屁! 《下品な贄じゃな・・・・》 誰だ・・・・?どこに居やがる!出て来い! 《我を恐れぬとは・・・・なんと強かな魂だ・・・》 はッ!伊達に修羅場を駆け巡ってきたわけじゃないんでな・・。 お前みたいな小物なんざ、怖くもねぇよ。 《下品な上に、口が悪い、しかも顔もクマだな・・・あぁ醜い》 はぁぁぁ?俺の美貌を判らないとは、お前目ついてないんじゃないか? 《自己賛美もそこまで来たら犯罪だぞ・・》 うるせーよ!それより、いいかげん出てこいや。ぎったぎったのぼっきぼきにしてやるぜ! 《誰がお前なんぞの前に出ていくものか・・・》 俺は生贄だろ?食わねーのか?うまそーだろ?ピチピチ新鮮だぜ!さぁこい! 《いらん!下品で下劣、肉体は脂ぎって老いておる。しかもお前の魂は強すぎて食らうには4年は寝かさねばとても食えぬ》 誰が老いてるだ!しかもなんだ!4年も寝かすだと・・?俺は納豆かーーッ!! 《しかし・・・・あの子供は・・・・、ここ数百年でまたとない・・・極上品だ・・》 子供・・・・だと!? やっぱりお前が・・・九龍をよんでいやがったのか! 《震えておる、震えておる・・・愛い子だ・・、魂は極上品、姿も貴様と違って愛らしい、純粋で清らかだ・・》 九龍か・・・・そうだな。 あの子は、素直だしまっすぐだし、相手の心を思いやれる優しい心を持っているし、殺人的に可愛いし。俺が育てたんだぞ・・・!もう本当可愛いんだぞ!笑顔がチャーミングなんだぞー! 《そんなことはどうでもいい》 おいッ!・・・・まぁ良いが、九龍は渡せねぇな! 《阻止、できるのか?お前が?呪いにかかり眠りの世界に閉じ込められた、お前が?》 あぁ・・・・阻止するぜ。こんな呪いなんざ、俺の【愛】の前じゃカスだ、カス!俺の愛の炎で燃やしてやるー!! 《面白い・・・・ならば、阻止してみせよ・・・・無理とは思うが・・・もう、お前の愛し子は我が手の内だ》 ――ッ!なんだと・・・・ッ!?九龍になにしやがった!!! 兄貴め、何やってやがる! 《絡め取られていく様でも、指をくわえて見ているがよい・・・・いかに己が無力かを噛み締めるんだな》 その瞬間、俺は九龍の正面に、立っていた。 寝ている俺が目の前にいるから呪いが解けたわけでも目覚めたわけでもないらしい。 見ていろ、ってことか? 兄貴が、銃で敵を倒している・・・・・くそ、数が多いな!だが、弱そうなのが救いか・・・。 九龍を見ると、H.A.N.Tを手に取っていた。 「これなら・・・・・叔父さんのこと・・わかるかな・・?」 九龍の顔を覗き込むために座ると、綺麗に手当てされた左目が目に入る。 可愛い顔を半分包帯で覆っているのが残念だ・・。 泣きはらした眼に、胸が痛むぞ・・・。うー!くそ!ハグできねぇー!!!! これか!?これが『無力を噛み締める』ことなのか!?もう噛み締めたぜッ!早ッ!! あぁ・・・・お前をぎゅう〜っとできねぇのは辛い・・本気で辛い。 「――ッ!」 小さく息を飲むような声に、九龍を見る。 何を見たのか、H.A.N.Tを乱暴に操作し、何かの項目を見ていた。覗き込むと・・・。 あぁ、『呪い』の表示が出てやがるのか・・・それを調べてたんだな? おーよしよし、ハンターにとって大事なのは判らないことがあったらすぐに調べる、だ。お前のその手順は、叔父さん花丸をつけてやるぞー! しかし九龍は震えていた。ぶるぶると目に見えるほど震えて、その膝から救急キットを取り落とした。 触れないと判っていても、腕を伸ばして肩を撫でてやる。 しかし、九龍は無慈悲だった・・・。 何かに気づいた九龍は、救急キットを開き、中の薬品を、俺の怪我をした背中にぶちまけた。 全部だ、全部ー!!!!ぎゃーーー!!!!! 肉体とはどこかやっぱり繋がってるんだろうなァ・・・・マジいてぇーーーー!!!!! ぎゃーぎゃーぎゃー!しみるッッッ!!!死ぬゥ!マジしぬー! 俺の身体も身悶えてるぞ・・・。 「そんな・・・」 そんな、って・・・俺の台詞! そんな・・・・おまえ・・・中身全部ぶちまけるなよなー!めっちゃ沁みたぞ!? 俺への罰か何かなんですか!?とか九龍に詰め寄ると。 隠されていない、右目から、ポロポロと涙を流し始めた。 う、うっぉぉっ!? え・・・・えええッ!?俺か!?俺のせいか!?悪かったー!ちょっと凄まじく沁みてぎゃーだったんだ!怒ってないぞー!?叔父さんへっちゃらだぞー!だから泣かないでくれー! オロオロオロオロと九龍の傍で慌てていると、涙がポタポタと九龍の膝に落ちる。 「・・・・・いや・・・だ・・・」 九龍・・・・? 《その者の呪い、解きたくないのか・・?》 ・・・・・・ッ!!!あ、あの野郎め・・・ッ! 九龍!九龍!耳を貸すなッ! 『解ける・・・・?』 九龍は喋ってないぞ・・・? ・・・・・・心の声まで聞かせてくれるとは・・・たいしたサービスぶりだな・・・。 九龍ー!耳を貸すな! 《永遠の眠りにつく、呪い・・・・我が元へ来れば、解いてやるぞ・・?》 『だから・・・目が覚めない・・・?』 《助けたいか・・・?助けたいのなら、こちらへおいで・・》 おいッッ!!!たぶらかされるなッ! 『どこへ・・・?どこへいけばいいの?たすけてくれるの・・・?』 行くなって言っただろッ!? 《たすけてやろう》 聞くな!聞かないでくれ! 「・・・・・・・・・・・・・叔父さん・・・」 小さな声にハッとしてその顔を見る・・・息が止まるかと思った。 悲嘆にくれた顔、をしていた。心臓が締め付けられるような痛みがする。 九龍が優しい手つきで、仰向けにした俺の顔を拭って、俺の手を握り締めた。 暖かさが伝わってくると同時に、切ないほどの嘆きが聞こえてくる。 すまない、すまない・・・九龍・・・。 だが、俺は後悔はしてないんだ。 「・・・・あいしてる・・」 あぁ・・・傍に行くから。必ずいく。頼むから待っていてくれ。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ちなみに俺のほうが愛は深く重いぞ・・・、宇宙規模で愛してるぞ! お前はそう言うけど、実父と実母と俺だったら、お前あっち取りそうだしな・・・。 世界一俺を愛してると言ってくれ。宇宙一でもいいぞ! 「・・・・・だいすきだよ・・」 聞こえてるさ・・・。悪代官のお陰でな? お前が俺をそんなに想っていてくれたんだな・・・と不謹慎にも叔父さんのハートはときめいてるぞ!大好きとかは、ここ数日は聞いたけどよーお前、普通のときなかなか言ってくれないよな?照れちゃう〜とか言ってよ!叔父さんもっと聞きたいぃー!聞きたい!聞きたいッ! 「ごめんなさい・・・おれのせいで・・・」 いや俺こそ、取り乱しました。・・・ってか、お前のせいじゃないっての!なぁ、なぁ・・・?お前は俺の大事で愛しい甥っ子・・・・いや、俺の息子みたいなものなんだぜ・・? いや、もうそんな枠にすらはめられないほど、お前のことが大切だ・・。 『目覚めたら怒るかな・・・・・でも今度は俺がね、助ける番なんだ・・叔父さんを守りたかったんだ』 「まもりたかったのに・・・」 『守ってなんて、ほしくなかった・・・・』 「・・・・・・・・・・・・・・・・・助けてみせるから・・・叔父さん・・」 九龍・・・・九龍・・・。 悪いが、お前を守る。それは俺の信念なんだ・・・。 お前が嫌がっても、俺は、お前を守り通す・・・・。 だけど、なんだ?守りたいとか思うあたり、お前も立派に男だな? 叔父さん嬉しいぞ?きっと数年後には守りたいとかいう女の子とかも出来ちゃうんだろうなー。 叔父さんは自分で守れるでしょ!とか言われるんかなぁ・・・・。今だけか?今だけなのか?うぉーさびしいッッ! あーしかし、なんで俺の腕は動かないんだ!?今ぎゅ〜!としてやるべき時だろ!? あ・・・お・・・?足が動いたぞ・・・? 動け〜〜〜動けぇぇ〜〜〜〜九龍をぎゅうーーーーーっとしてちゅーーーっとするんだー! 大魔神がいても怯むな俺ー!!! 《助けてやるぞ・・・さぁ・・・はやくおいで・・・》 黙ってろ、エロ悪代官! お前のその言い方は時代劇で親の借金を片手に迫る悪代官そのものだぞ! 『助けてください。全部あげるから。助けてください。』 くろーーーーーーーッッ!!!! ななななな・・・・・・なんつーことを・・・何て事を言いやがりますか!そこ、座りなさい!!!! ぜんぶあげる・・・・だとぉ!? おいおいおいおいおーーーーーーいッッ! ダメッ!メッ!!!そんなことを言うな!お父さんは許しませぇんッ!ちなみに俺のことだ! 良いか!?家に帰ったら説教だぞ!いや、帰らなくても今すぐ説教だ! もう・・・なんつーおバカなことを言いやがりますかッ!危険!危険だぞッ!?お前はもう危険物指定だ!歩く爆弾めーッ! まぁ・・そこがかわいいんだけどな!本当にもぅ・・この子どうしましょう!? あーやっぱ常識ってやつをしっかり教えてやんねぇとなぁ・・・危険すぎるッ!だが・・・、そうなったらどうなったで、寂しいというか・・・悲しいっていうか・・微妙なところなんだよなぁ・・。 九龍の可愛いところ(もちろん一部だけどな!)でもあるし。 ・・・・・そうか、九龍に寄り付く虫どもは俺が排除すればいいか!全力でな!まぁ、勿論今までもそうだったが、これからはより一層付かず離れずぴったりとべったりと引っ付いてまわるぜ!覚悟しろよ! ふと九龍が俺の顔を見つめたことに気づいて意識を戻す。 『きっと、目が覚めたら・・・・・怒るよね・・。嫌われるかな・・・・、もう、笑ってくれないかな・・・?』 だ・・・誰が怒るか!いや、怒るが!『全部あげる』発言について5時間の説教だ! 嫌うことなんか、世界の終わりが来てもありえねぇーッ! 『ううん・・・・見ることが出来ないかも・・・それは、判ってる。』 ・・・・っておい・・・見ることが出来ない?だと・・・? お前、早まるなよ!?待てーーーー!待ちなさい!叔父さん今から踏ん張ってみるので、華麗に目覚めて見せるからな?なッ!?5分待て!ちょい待て!待ってー! 早まるな、頼む。 『・・・・ありがとう・・・叔父さん・・・大好きです』 九龍はそう心の中で言うと・・・・、俺の頬っぺたに、キスをした。 うぉうぇあぁああああぁぁぁぁぁーーーー!? 九龍・・・・。 お・・・おぉぉぉおおお・・・・お・・お前からしてくれたことって・・・小さい頃のとき・・以来だよな!? やべぇ、凄まじく嬉しい!!! かかかか・・・カメラ!デジカメ!ないかー!?動画でとれー!!!! ちょ、記念碑!記念碑を設立してくれ!!石碑でも良いぞ! おいッ!!!見たか?見たか!?聞いてるか!?悪代官! 今のシーン取っとけよ!テストに出るぞ! あぁぁん、もぅ〜!ヒャッホーーーーーーイィ! 《・・・・・・・・・・・・・・・・・・うるさいッ!》 やっぱ、聞いてたか。どうよ?どうよ?良いだろ!?可愛いだろ!? 記念碑頼むからな! 《アホかッ!!!》 誰がアホだ!てか・・・羨ましいんだな!? だよなー・・・可愛過ぎるもんなー!ちゅっだぞ!?うひー!かわええー!! 「・・・・・・・・・・あいしてます・・」 九龍ッッ!!! ・・・・・・・・・・あぁ、俺も愛してるぞッ!!! 『嫌いにならないで・・・。ずっと、ずっと、愛してます。大好きだから』 九龍・・・。嫌いになるはずがないだろ・・・?ありえねぇよ。 ・・・・・・お前のそれは嬉しいんだがな・・・九龍、俺が起きているときに言ってくれ。 笑顔で、言ってくれ。 そんな悲痛な顔をして言うな・・・。 『たすけてください』 《さぁ・・・・こちらだ・・・・・見えるだろう?あの扉の先で待っている》 悪代官め・・・。聞こえてるんだろ? 九龍は渡さねぇ。お前は九龍を捕まえた気だろうが・・・・阻止してみせる。 聞いてるかッッ! 《・・・阻止してみるとな?無理だ、お前の呪いはそんな軽いものではないぞ》 はッ!んなもの蹴散らすまでだ! 《ならば、阻止して見せろ・・・出来るものなら、な・・・まこと、清い魂だ・・・くくくーーあーはははは!》 笑い声まで悪代官だな・・・まぁ、首を洗って待ってろよ! 九龍は走っていったか・・・。 九龍、お前を守る。絶対だ! まってろよ・・・・・・? って・・・・・あの・・・・・あのーそこの実のお兄様? 敵を放置して九龍を・・・追い掛けましたか・・・さようですか・・。 あー俺も九龍を取るな。うん。判るぞー!判るんだがなー! 俺の足やら手やらに噛みついてきてる骨っ子達・・・・・・。 うわー俺モテモテで困っちゃうーーー!いやーんって・・・おいッ! 痛い。痛い。マジで痛いッッー!食うなーーーー!!!! 「いてぇよー!!!!食うな!こんにゃろー!理科室の教本にすんぞッッ!!!」 全力で暴れて骨を叩き潰して立ちあがる。 「・・・お?」 おぉぉぉぉぉぉー!戻ったぞ!さすが俺! 「これが俺の愛の力だー!」 とか叫んでみるが、骨っ子集団しかいねーーーーーーッ!さびしいー!! 「・・・・・ってこんなアホなことをしてる場合じゃねぇー!九龍!!!」 どこからか、まだ骨ッ子達が沸いてきやがるが、無視だ無視! アサルトベストを拾い上げ、装備を手に取ると、走り出す。 気を抜くと寝てしまいそうになる・・・H.A.N.Tを走りながら確認すれば、まだしっかり『呪い』の表示は出ていた。 ・・・・・どういうことだ・・? いや、今はどうだって良い。九龍だ、九龍! あのお馬鹿で超突猛進な考え出したら暴走一直線の、まぁ・・・そんなところも可愛いんだが・・・九龍に、説教しねぇとなッ! 九龍、早まるなよ!?全部あげちゃうなよ〜?いらねぇなら俺にくれ!一生大事にする! 「待ってろ!今行くぞッッ!!!」 |