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叔父さんと僕(九龍編)
第3部・その9

「やめてッ!」
見ていられなくて顔をそむけた。
叔父さんが、跳ね飛ばされてた・・・・・。斬られた・・・・?
「・・・・・ぐっ・・・・・・ぐほッ!!」
床に落ちた叔父さんは、苦しそうに寝転んだまま起き上がらない。
そんな!そんな・・・そんな!
駆け寄ろうと腰を上げると、お父さんが腕を引っ張って止める。どうして?
「離して!叔父さんが・・・叔父さんが!」
「九龍・・・お前が行っても足手まといになるだけだ」
身体が一瞬跳ねた。判ってるよ・・・自分だってそう思うから。足手まといだって・・判ってる。
「けど・・・けど!それでもッ!叔父さんが大事だから、守りたいから!行く!」
「九龍!」
「お父さん、お願い・・・行かせて」
お父さんは一瞬痛そうな顔をして手を離してくれた。
びっくりしてみてると、優しく笑いかけてくれる。
「行きなさい・・・」
「お父さん・・ありがとう!」
何も言わないでも判った。お父さんは、きっと援護してくれる。
お父さんに笑いかけて、走り出した。叔父さんの元へ。
叔父さんはまだ立ちあがっていない。腕が動いて武器を掴んだから、意識はあるのかな!?
あ・・・・・ッ!鬼さんが、武器を振りかぶって振り下ろそうとしている。止めてッッ!
「叔父さん、逃げて、危ないッ!!」
お願い、間に合って!
「・・・・ッ!」
叔父さんは素早い動きで右に避けて避けた。良かった・・・本当、良かった・・。
「九龍!あぶねぇ!」
「え・・・・?」
叔父さんの声に反応して、立ち止まる。自分に迫ってくる大きな武器を見たけど、避けれない!
目を閉じて頭を庇うと、銃声が響いた。

《ぐぉぉぉぉー!》

「・・・・あ、お父さん・・・」
お父さんを見ると、俺のほうを見て安心したように笑ってくれた。
ありがとう・・・ありがとう、お父さん!良かった・・・怖かった・・。
安心してると、背後から抱きしめられてビックリした。
叔父さんがぎゅうと抱きしめてきて少し苦しい。
「・・・・・・・無茶するなよ・・・バカたれ・・」
ごめんなさい・・。
心配してくれたんだ・・・叔父さんの心臓すごく早い。息も、走ってきたから荒い・・・。
「大丈夫?・・・・あ、け、怪我してるよ!血が・・・」
ぐりんと腕の中で回転して叔父さんと向き合うと、肩に目がいった。
血が流れてた・・・凄く痛そう。
「早く、なおさ・・・・・ッ!」
ぎゅうと強く抱きしめられて苦しい。
「くるしーよーッ」
怪我、速く治さなきゃ・・ねぇ、血がいっぱいなんだよ?離してよッ!
じたばた暴れるけど、押さえ込まれてビクともしない。
うーもぅ!怒るよッ!?って言おうとしたら・・・おでこにちゅっとされてビックリする。
「九龍・・・ゆるしてくれ・・・」
「え・・・?」
どうして、そんなに・・・悲しそうな声で・・・言うの?
どうしてそんなに、辛そうなの?叔父さん・・・どうしたの・・・?
「九龍、俺は・・・・・・・・」

《ころしてやるーーーッ!》

叔父さんは言いかけて止めた。
何を言おうとしたのかな・・・?
どうしてか、胸が痛くて泣きたくなった。
「わ・・ッ!」
「邪魔すんなッッ!!」
急に叔父さんに片腕で抱き上げられて、慌てて首に捕まる。
走りながら、銃を撃ってる。鬼さんを見ると、とても怖そうな顔をしてこっちに歩いてきていた。
どうしよう・・俺、お荷物だよね・・・?
自分で頑張って走るから、おろしてって言おうとしたら床に何か落ちてるのが見えた。
あ、あれって・・・お父さんに使って良いよって貰った武器だよね?
すっかり忘れてたけど、操られたとき武器そのままにしてきたんだった・・。
そうだ・・!あれを使えば・・お荷物じゃないよね?足手まといになりたくない!
俺だって、銃撃てるから。援護くらいは出来るんだから!
・・・・叔父さんを守って見せるんだから・・・。
「あ、叔父さん、あれ・・・・」
床を指差して、叔父さんをそっちに誘導する。
「なんでこんなとこに置いてんだ・・」
「んと・・・使って良いって言われたけど・・・置きっぱなしに・・」
操られた時のことを言うのは・・・イヤだ。うー情けない!
叔父さんは少し笑って頭を撫でてくれた。気にするなって言ってくれてるみたい・・・。
優しくそっと下ろされて、叔父さんは武器を手に取った。
「なるほどな・・」
うーん・・・ライフル、使えるかなァ・・。
ハンドガンは使えるんだけど、ライフルは大きすぎて持てなくて使ったことがないんだよね・・。
でも叔父さんの援護したいしなぁ・・。攻撃力はライフルの方があるし、しゃげきはんいが広いって言うし・・。
「黄金銃まで・・・・持ってるのか。すげーな・・・大魔神・・」
叔父さんは金色のピカピカ光る銃を手にとって感心してた。
それそんなにスゴイ銃だったの?
「ラッキー!一発のこってるぞ!」
そんなにスゴイのかァ・・お父さん、貰っちゃって良かったの?
それって、どんな性能?って聞こうとしたら背後から足音が近づいてきた。
振りかえると、かなり近くまで来ている鬼さんと目が合った。
ニヤァと笑うのを見てゾクッと鳥肌が立つ。ヤダ!ヤダヤダ!食べられたくないよッ!
俺なんか食べたってきっとおいしくないよ!お肉そんなにないし!おいしくないって、絶対!
「お、叔父さん来るよー!」
叔父さんに慌てて呼びかけると、余裕のあるどっしりとした態度で立ちあがった。
「九龍、俺の前に来い」
「はい」
前?なんで前?いつも後ろなのに・・・?
背後から叔父さんの腕が伸びてきて、ぎゅっとされるのかな・・?とか思っていると。
「えッ・・お、叔父さん・・・・・?」
金色の銃を持たされたから、ビックリした。
ええ?何するの?俺が撃つの??いいの??
銃を両手で持たされて、構えさせられる。その手の上に、叔父さんの大きな手が重なった。
「2人で・・鬼をぶった倒すぞ、九龍」
叔父さんの言葉が一瞬わからなくて、瞬きした。
鬼さんはニタニタわらって俺を見ながら近づいてきてる・・それも全然気にならないのは、叔父さんが居るからだよね・・。
暖かい叔父さんの体温と、背中にあたる胸から伝わってくる心臓の音。
言われた言葉が心に広がっていく。すごく、すごく・・・嬉しい・・。
「・・・・・・・・・・・・はい!」
嬉しい!頑張るね!頑張るよッ!
認めてもらえた、そんな喜びが広がっていく。

《しねぇーーーッ!!!》

気を引き締める。うん・・・集中集中!
大丈夫。叔父さんが一緒にやってくれてるから・・・絶対大丈夫。
深呼吸して、狙いを定める。
「いまだ!」

バアァァァァンッ!

叔父さんの声と一緒に銃を撃って、弾き飛ばされた。
叔父さんの腕の中にやんわりと抱きとめられて、どきどきとうるさい心臓の上に手を置いた。

《おのれぇ・・・おのれぇぇッ!に、人間ごときに・・・・やられるとは・・・・ッ!だが、覚えておけ!我は消えようとも呪いは消えぬ!永劫の眠りに尽き干からびて死ぬといい・・・・ッ!》

『敵影消滅。安全領域に入りました』

「やった・・・やったよ、おじさーーーん!」
どうしよう、凄く嬉しい!!!
叔父さんの首に腕を回して抱きついた。嬉しい!凄く嬉しい!
俺が倒したんだよね?一人じゃない、叔父さんと一緒に。
嬉しい。すごく・・・・嬉しい。
ぎゅうと抱きしめ返してくれる叔父さんの温もりが気持ち良い。
良かった・・・。鬼さんはもう居ない。
これで叔父さんはもう・・・大丈夫だよね?
呪いはもう解けたんだよね!?
「九龍、なぁ・・・・お前はやれただろ?」
「初めて、あんなの・・倒しちゃった・・すごいすごい!」
「あぁ、お前は大丈夫だ。狙いも完璧だったしな・・・・自信持っていいぞ?」
頭を撫でてくれる叔父さんを見上げると、あのすごく優しい眼をして笑ってた。
「ホント!?・・・・・嬉しい!」
叔父さんに言われると・・・・・すごくすごく・・・ものすごーく嬉しいんだよ?
叔父さんの相棒だからさ・・ね?頼ってね?もっと・・。これからも・・。
ずっと、頑張るからね・・・。
「九龍・・・・小指出せ」
「こゆび?」
どうしたのかな・・?言われた通り小指を出すと、叔父さんも小指を出して小指同士からませた。

「約束する。俺は呪いには負けねぇ・・・・必ず自力でお前の元へ帰る・・・」

「・・・・・・・・・え・・・・」
いま・・・なんて・・いった・・?

「だから、お前も約束してくれ・・・俺に」
「お、おじさん・・・のろいって・・・」
呪いって・・・呪いって・・・も・・・しかして・・・?うそ!どうして!?
震えが出てきた・・息も出来ない。

「あぁ、俺の呪いは完全に解けてない・・・かかりが弱かったんだろうが・・、もう時間らしい」

「・・・・・うそ・・・」
「悪いな・・ウソじゃない。九龍、良いか?よく聞くんだ」
イヤだよ・・・・イヤだ、いや・・・・いやだ・・・・。
呪い解けてなかったなんて・・・。
「そんな・・・鬼さん倒しちゃったのに・・」
鬼さんに解いてもらわなきゃ解けないんだよね?
どうしよう・・・どうしよう!?
目の前が真っ暗になってくる。怖い、すごく・・・・怖い。
「九龍!!」
叔父さんが急に大きな声を出して、抱きしめてきた。
背中を優しく撫でられる・・・。
「例えどんな方法があっても、お前が犠牲になるやり方で助けられても・・・」
どんな方法があるっていうんだよ?鬼さんはもう、居ないのに。
俺なんて良いから・・・犠牲になったって・・・。
「俺は嬉しくない。迷惑だ」
「・・・・・ッ!」
息が止まる。だって・・・だって・・・そんな・・・。
「俺が目覚めたとき、お前が居ないんじゃ・・・・意味がないんだ」
「・・・・・・?」
「お前が居ない世界なんざ、いらねぇよ。」
おじさん・・・・。
「・・・・・おじさん・・そんな・・・・」
そんな・・・。
じゃぁ・・・どうすればいい?どうすれば叔父さんは助かる?
「約束してくれ・・・。絶対に自分を犠牲にするような真似をするな」
「お・・・・じさん・・・」
「約束してくれ、俺に・・・・・自分の命を大事にすると・・」
こんなに真剣な叔父さんは、はじめてみた。
叔父さんは、こんなにも・・・想ってくれてるんだ・・。
愛して、くれてるんだ・・。
俺もだよ?俺だって、叔父さんが居ない、世界なんて・・いらない!
ずっと一緒に居たいんだ。
傍に居て欲しいんだ。
いつまで一緒に居られるかなって考えて怖かった。
・・・・傍に居てくれるって、言ったよね・・・?
「・・・・約束する・・・だから・・だから・・叔父さん・・」
「言うんだ。ちゃんと・・・言ってくれ」
「や、約束する・・・犠牲になったりしな・・い・・、命だって大事にする、約束する!だから・・・だから・・・」
行かないで、って言えたかどうかも判らない。
泣いちゃって止まらない。
行かないで、行かないで・・・お願い・・。

「約束する。必ずだ・・・呪いなんぞに負けない、お前に元へ必ず戻る・・・帰ってくる・・・絶対だ」

本当?ウソじゃない?信じてるよ・・?
約束したからね?
絶対・・すぐ、戻ってきてね・・?

(・・・・・・・・思い出した・・・)

後少しで、叔父さんは・・・また寝てしまう。
また・・・。
寝てしまう。
行かないで・・・。
涙を拭ってくれてるけど、後から後から出てきて止まらない。
約束を信じるよ。
約束を守るから。
「・・・・・・・・・おじさん・・・」
小さく呼びかけると、ぎゅっと抱きしめてくれた。



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