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叔父さんと僕(九龍編)
第3部・その11

「・・・・・・九龍は俺が連れていこう」
落ち着いてきた頃、お父さんが静かにそう言って手を掴まれたけど、イヤだったから振り払った。
ごめんなさい、離れたくないんだ。
「いや、俺がここを出るまで九龍を連れていく」
「顔色が悪いぞ・・・いけるのか?」
「あぁ・・・・大丈夫だ」
「・・・・装備をよこせ。俺が持っていこう」
「・・・・すまねぇ、頼んだ」
装備を全部持って、お父さんが水の通路を渡って先に行くのを何となく見送ってたら、視線を感じてすぐ傍に居る叔父さんを見上げると、すごく優しい眼をして、じぃっと見てた。
「・・・・・・・・また、その・・・眼・・・」
照れくさくなって、眼をそらす。
「あ?どの眼だ?」
「えっと・・・なんでもない・・」
「ほほー?」
どんな眼だ?と興味深々で聞いてくるから、逃げようとしたらぎゅうぅぅぅと抱きしめられて身動きが出来なくなる。
「九龍、言いたいことは今、全部言え。溜め込むな」
「でも・・」
「言ってくれ・・・我侭でも何でも、叔父さんは何でも受け止めてやるからな?」
何でも良いの・・・?ホント?じゃぁ・・・うんと・・・。
「・・・・叔父さん、大好きだよ」
「ごふぉっげふぉっぐほっ!」
どうしたの?なんで急にむせてるんだろう・・・・?
「叔父さんに頼られる風になりたいんだ、俺」
「・・・・」
今度は幸せそうな顔してるし。
「本当は・・・、約束したけど・・・、叔父さんを助けられるなら・・なんだってする」
「九龍・・・」
「約束したけど・・・そのためなら・・・」
「九龍、それは・・・ダメだ・・・お前が犠牲になって助かっても、俺はお前を追っていく」
「・・・・叔父さん・・」
「お前のそれは俺のためじゃない。自分のためじゃないか?お前はそれで満足するだろうが、俺は辛い」
自分のため・・・?
「俺のために、犠牲になった、それで満足・・・それはお前の自己満足だ」
自己満足・・・。
「俺は嬉しくないって言っただろう?お前が居ない世界はいらない・・・お前の成長を見守ることが、俺の生きている楽しみなんだ・・・」
「だって・・・助けたい・・」
「諦めるな、九龍。自分を守って守りたい奴も守って生還することこそ、一番大事なんだ」
諦めるな・・・。
もしかして、諦めてた・・・・のかな・・俺・・。
「どんな状況でも、諦めるな。生きることに貪欲になるんだ・・・」
どんよく・・・・?
「・・・・貪欲ってのは、凄まじく飢えてて、メシ食うだろ?その勢い並に生きろってこと・・・か?」
なんで、意味がわからなかったの、わかったんだろう・・?やっぱり超能力?
「お前のことなら、わかるんだよ」
「叔父さん・・・・」
「ん?」
「・・・・嬉しい」
見てくれてるんだって思うから・・・。すごく嬉しい。
「お、おぉぉぉぉ・・・・おう・・・・」
「・・・・もう見てもらえなくなるって思うとね・・・・・こわい・・」
「寝ててもお前を見つめる!見守る!背後霊になってやる!」
「え、でも・・・・霊って・・・お化け?」
幽霊って・・・別に怖くないけど、でも、なんか・・・。
「いやかも」
「おいおいおいー!」
叔父さん・・もう、顔色が凄く悪くなってる。
眠いんだろうな・・・時々瞼が重くなって閉じてしまったりしてる。
――時間が、もう、ない・・・。
「眠い・・・?」
「・・・・ここを出るまでは、気合だ」
「もう、良いから・・・行こう、叔父さん」
「九龍、ちょっとお待ちなさい」
「え?」
背後からぎゅっとされて、また動けなくなる。
「今度は俺の言いたいことを聞いてくれないか?」
「叔父さんの・・・?でも・・・大丈夫・・?」
「あぁ・・・聞いてくれ」
「うん」
大丈夫なのかな・・・・言葉も、どんどん短くなっていってる・・。
「九龍・・・愛してる」
うん、俺もだよ、って言おうとしたら、止められた。
「もがっ」
「あー・・・・・悪い。お前のその言葉は心臓に悪いからな・・・すまねぇな?」
大きな手で口を押さえられて、何も言えなくなった。
心臓に悪いってどうして?
首を傾げたけど、頭を撫でられるだけで答えてくれそうになかった。
「俺は・・・お前の成長をずっと見て来た、大きくなったな・・」
うん・・・、そうだったね、ずっと一緒だったよね・・・。
「俺もな・・・お前といつまで一緒に居られるか、不安でたまらねぇんだよ・・」
え・・・叔父さんも・・・?
「お前は大きくなって一人前になるだろうな・・俺の庇護・・・守りを、必要としなくなるときがくるだろう・・」
そんなことないよ・・・。
「鬱陶しいとか言われたりしないかってビクビクしてる叔父さんであった」
鬱陶しい?・・・・・・ごめんね、少し思ってた・・・かも?だっていつもぎゅうってしてくるし・・・。
「鬱陶しいとか思ってないか?」
え!そんなことないよ!?ぶんぶんと首を振って否定する。あーびっくりした・・。
「傍に居られなくなっても・・・いや、違うな、傍に居たい・・・だが、いられなくなっても・・」
傍に居て欲しいって、思ってくれてる・・・?
「お前の『帰る場所』でありたい・・・お帰りって、お前に言ってやりたい」
ただいまって言うの、好きだよ。すごく安心するから・・。
「お前は覚えていないだろうが、俺が人生挫折した時、俺は投げやりになってて」
叔父さん・・・・?
「死んでも良いと無茶ばかりやってた・・・、トラウマってのは・・・あぁ、つまり、心の傷だ・・・は怖いんだ・・」
歪んだ顔をした叔父さんの頭に腕を伸ばして、撫でてみた。
「・・・・・・・今は大丈夫だぞ?お前が居るからな?」
ありがとな、と笑ってくれて、嬉しくなる。
「お前は変わらないな?5歳のとき、お前は今みたいに撫でてくれたんだぞ」
え、そう・・・なの・・?5歳・・?覚えてないよーッ!
「覚えてないってか?俺は覚えてる・・お前のそれで、俺の心は癒されたんだ」
叔父さん・・・。
「良いか・・・?九龍、お前のその優しさはとても大事なものなんだ・・・誰かを自然に思いやれる優しさを大事にしろ」
「・・・・うん・・・」
口から手を離されたから、頷いた。
「・・・・・・あぁ、最後にもう一つ、言いたいことが合った」
「・・なに?」
「遺跡出たら、ご褒美の頬っぺにちゅーしてくれよ?」
真剣に言うから、何かと思ったら・・・。もう!
「・・・・・・・叔父さん、そればっかりだ・・・」
「仕方がないだろうが!こうでもしないと、ちゅーしてくれないだろ!?」
だって、もう14なんだよ!?さすがに恥ずかしいんだよー!女の子じゃないんだしさ!
「してくれないと、ここで寝ます。おやす・・・・」
「するからー!骨さんの仲間になっちゃうよ!?」
「約束、だな?」
「う・・・・・」
頷いて俯いた。あぁ・・・ダメだよ、見てられないよ!だってすごく、嬉しそうに微笑むから・・・。
また行かないでって言いたくなって、胸が痛くなった。
「笑ってくれ」
「え・・・・?」
「お前の笑顔が、力になるんだ・・・笑ってくれないか?」
「叔父さん・・」
それってとっても難しいよ・・。
でも、頑張って笑ってみたら、叔父さんも笑い返してくれた。


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