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叔父さんと僕(九龍編)
第3部・その5

「九龍ッッ!小五郎ッ!」


『罠が解除されました』


え・・・・・・?おとうさん・・・・?

(・・・・・これは・・・何・・・?おぼえてない・・)

身動きできなくて、姿を確認できないけど。おとうさん・・・?
「――ッ!大丈夫か!?」
おとうさんだ・・・・たすかる・・・?
(覚えてない・・・)
「・・・・おと・・・・うさん・・・」
お願い、お願いだから・・・叔父さんを助けて!
「たす・・・・け・・」
喉に何かが張り付いたような感じで声がうまく出ない。
それでもお父さんは、わかってくれた。
「あぁ・・・助けてみせる。安心しなさい、九龍」
その声に安心して、力が抜けた。
その瞬間涙が溢れ出して、止まらなくなった。
「・・・・・・っく・・」
助かる・・・?
助かるよね・・・?
「おい・・・小五郎、九龍を放せ」
お父さんがそう言って声をかけたとたん、叔父さんの腕が緩んだ。
痛いくらいに抱きしめられてたんだ・・・、離れていく暖かい腕が恋しい。
ふと視界が明るくなって、頭にかぶっていた叔父さんの上着を外されたんだと気がついて、お父さんを見上げた。
「・・・・・・・・・ッ!」
なぜか驚いているお父さんを見て、不安になる。
叔父さん・・・そんなに酷い・・・?
「お・・・・じさん・・・たすかる・・・?」

《助けてやるぞ・・・?》

「あぁ、あれは死なない。顔色もそう悪くないしな」
「ほ・・・んと?」
良かった・・・。
「あぁ・・・だから先にお前の手当てをやらせてくれ。失明してしまう」
「これはいい・・・・いいから・・・おじさんを・・」
こんなのどうでもいいから。叔父さんを助けてよ。
叔父さんが大事なんだよ・・・ッ!
首を振ってイヤだってしてみたら、お父さんは少し困ったような顔をして、頭を撫でてくれた。
・・・・・何も言えなくてうつむこうとすると、視界の隅に叔父さんの足が見えて、怖くなった。
動かない足・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・コワイ。
「九龍・・・左目、見えるか?」
「・・・・・・」
頷いたけど・・・本当は見えてない。左目が見えなくなったって・・・いいから。
叔父さんが助かるなら・・・なんでもする。

《ならば、おいで》

だめ・・・聞いちゃダメだって・・・約束した。
聞いちゃダメッ!

「・・・・少し痛むが、我慢してくれ」

《迎えをやろう・・・・さぁ・・・》

「え・・・・?」
「どうした?九龍」
むかえ・・・?

《くるんだ》

「呼ばれてる・・」
「呼ばれている・・・?」

『敵影を確認、移動してください』

「ッ!九龍!叔父さんのところに居なさい!」
お父さんの言葉に、少し驚いてから頷いて、叔父さんの傍らへ行って座りこむ。
近くにあった上着を丸めて、叔父さんの頭をその上にそっと乗せた。
大丈夫だ・・・息してる・・・。
生きてる・・・。
身体も温かい。
「九龍、救急キット持っているだろう?手当てをしてやりなさい」
お父さんの声の通りに、救急キットを腰のポーチから取り出した。
背中に救急キットを振りかけようと叔父さんの着ているシャツをめくり上げたら、カツンと床に何かが落ちた。
小さなノートパソコンみたいな・・・H.A.N.Tだ・・。
「これなら・・・・・叔父さんのこと・・わかるかな・・?」
H.A.N.Tは、ハンターと連結していて体調の変化とか、判るようになっている・・・って叔父さんに教えてもらった。
パカッと開くと、『H.A.N.Tを起動します』と聞きなれた声とともに、叔父さんの状態が表示された。
血圧も、心拍数も、異常出てない・・・良かった・・・。
でも、このマークは・・・なに?
いやな予感に、焦ってH.A.N.Tをいじる。これに確か、載ってたと思う・・・・・・あった。

『呪い』

それを見たとたん、震えた。どうしよう、どうしよう・・・・!?
慌てたら、コロンと膝の上から救急キットが落ちた。
そうだ・・・これ・・・なら!
救急キットの袋の中から、色々取り出して、叔父さんの背中に振りまいた。
そのとたん。、叔父さんがビクン!と震えてびっくりする。
・・・・・・効いた・・・?
ほとんどのは、これで治るって聞いてるし・・・・期待してH.A.N.Tを見るために開いたけど。
H.A.N.Tの『呪い』マークは消えなくて、そのまま残ってた。
「そんな・・・」
うそ・・・。
なんの・・・呪い?
どうして、消えないの・・・・?
救急キット・・・腐ってた・・・!?ううん・・・そんなはず、ないよね・・。これだけは、いつも叔父さんが新しいのを持たせてくれてるから。
・・・・だから・・・・それだと・・・。
嫌な考えが浮かぶ。頭を振って考えないようにしようとするけど・・・・でも!
呪いって・・・あの霧みたいなの・・・・?
あれを吸い込んだから・・?

叔父さんは・・・・・やっぱり庇ってくれたんだ・・。

ポタッと涙が溢れて落ちる。
「・・・・・いや・・・だ・・」
庇ってなんか、ほしくないのに・・。
こんなに傷ついて、こんなに血を流して・・・・目覚めない。
こんなの、望んでない・・・・ッ!
助けて助けて!!お願い・・・ッ!
叔父さんが助かるなら、なんでもするから!

《その者の呪い、解きたくないのか・・?》

解ける・・・・?

《永遠の眠りにつく、呪い・・・・我が元へ来れば、解いてやるぞ・・?》

永遠の眠り・・・そんな・・・ッ!だから・・・目が覚めない・・・?

《助けたいか・・・?助けたいのなら、こちらへおいで・・》

どこへ・・・?
どこへいけばいいの?
たすけてくれるの・・・?

《たすけてやろう》

「・・・・・・・・・・・・・叔父さん・・・」
叔父さんを、仰向けにして少し汚れてる顔を、ガーゼで拭う。
息はしてる。
暖かい、その手に自分の手を重ねた。ぎゅっと握り締める。
叔父さん・・・・・、俺ね・・・守ってほしくなかったよ。
どうして・・・・どうして、愛してるとか、言ったの?
なんで、最後の言葉みたいな風に・・・・言ってたの・・・?
俺を守るため?
心配させないため?
あれだけ、どこにも行かないって、言ったのに。
ウソつきッ!
愛してるよ、俺だって。
ずっとずっと、俺のほうが、ずっとずっと、想ってる。
「・・・・あいしてる・・」
ずっとね・・・傍にいてくれた。
振りかえるといつもそこに、居てくれたよね・・。
お父さん達に置いて行かれて・・・不安で・・・、だけど叔父さんがずっとそばに居てくれたから・・。
だから、寂しくなかった。
呼んだらいつも返事してくれた。
家に帰るといつだって・・・居てくれた。「お帰り」って言葉、すごく好きなんだ・・。

(ずっと一緒に居たかった・・・傍にいることが、望みだった)

傍にいて、って言ったのに・・・。
どこにも行かないって、ついさっき、指きりしたのに・・・・。
ウソつき・・・ッ!
怒りたいけど。
でも・・・・・・。
「・・・・・だいすきだよ・・」
聞こえてる・・・?
「ごめんなさい・・・おれのせいで・・・」
目覚めたら・・・・・、怒るかな・・・・。
でも、今度は俺がね、助ける番なんだ・・。
叔父さんを守りたかったんだ。
「まもりたかったのに・・・」
守ってなんて、ほしくなかった・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・助けてみせるから・・・叔父さん・・」

《助けてやるぞ・・・さぁ・・・はやくおいで・・・》

助けてください。
全部あげるから。
助けてください。

叔父さんの、顔を見つめた。
きっと、目が覚めたら・・・・・怒るよね・・。
嫌われるかな・・・・、もう、笑ってくれないかな・・・?
ううん・・・・見ることが出来ないかも・・・それは、判ってる。
・・・・・・ごめんなさい・・・・・、叔父さん。
大好きです。

叔父さんの顔に、近づいてちょっと笑う。泣き笑いだけど・・・。
起きてるときにしたら、叔父さんはきっと、驚いちゃうよね?
それで、ぎゅっと抱きしめてくれるはず・・。
目覚めたら、また・・・・できたら、ね?叔父さん・・。
叔父さんの頬っぺたに子供の頃からよくせがまれた親愛のキスした。
「・・・・・・・・・・あいしてます・・」
これからやることを知っても、嫌いにならないで・・・欲しいな・・・。
ずっと、ずっと、愛してます。大好きだから。

たすけてください

《さぁ・・・・こちらだ・・・・・見えるだろう?あの扉の先で待っている》

「・・・・・・・行かなきゃ」
「く、九龍ッ!?」
ごめんなさい、お父さん。叔父さんを助けたいんだ。
「九龍ッ!待ちなさいッ!行くな!」
骸骨の集団が居たけど、突っ切った。
なぜか道をあけてくれる。
「行くな!九龍!」
お父さんも、大好きだよ。
忘れないでね・・・?



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