叔父さんと僕(九龍編)
第3部・その7
「九龍ーーーーーーーッッ!!!!」 ・・・・・・・だれ? この声・・・。 (・・・・・これは・・都合の良い夢なのかな・・・) 《ぐおぉッ!?》 「俺のッッ可愛い子ちゃんに汚ねぇ手で触るんじゃねぇー!」 ぐいっと腕を捕まれて引き寄せられた。 この匂い、いつもずっと傍にいた・・・・懐かしい・・・叔父さんの匂い・・。 ウソだ・・・・・だって、叔父さんは・・・・ッ! 「は・・・ぁ・・・・・ぜぇはぁ・・・・・く・・・ろう・・しっかりしろ」 この声・・・間違いない。ううん・・・聞き間違えるはずなんて、ない・・。 夢なのかな・・・? 見上げたまま、ぼんやりと思った。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「九龍、おい、ほうけてないで何とか言え」 ペシッと軽く顔を叩かれて、急速に意識が晴れていく感じ。 ・・・・・やっぱり・・触れる・・夢じゃない・・? 「お・・・・・・おじ・・・・さん・・・?」 「あぁ、そうだ。お前の格好良いナイスガイの叔父様だぞー」 「うそ・・・・ほんと・・・?偽者?」 「く、九龍・・・・誰が偽者だ!」 ウソじゃないよね? 本当に、本当?呪い解けたんだ・・・・・。 「叔父さん・・・叔父さんッ!」 ぎゅっと抱きしめてくれる腕は温かくて、背中を撫でてくれる手はやさしい・・。 叔父さんの胸に顔を押し付けると、心臓の音が聞こえてきた・・。 「おー・・・・・悪かったな・・・・」 助かったんだ・・・。 「ばか・・・・・・・ばかーーーッ!」 すごく、すごく心配したんだからなッ! だけど、でも・・・すごく・・・嬉しい・・。 よかった・・・・。 「あー・・うー・・・あのな?九龍・・・・俺は呪いには負けないって信じてくれないか?」 ぎゅうっと抱きしめられて、幸せ。 暖かくて、優しい腕にずっとぎゅっとしていてもらいたい・・。 離れないで。行かないで。傍にいて。 もう離さないで・・・。 《き・・・・貴様・・・ッ!確かに呪いにかかったはずでは・・ッ!?》 「うるせーな!阻止するって言っただろうが・・・・俺は有言実行の男なんだよッ!」 「はた迷惑な暴走をよくするけどな・・・」 ふと、また声が・・・・聞こえてきた。 ざわざわとした、変な、たくさんのひとのこえが・・・頭にひびく。 声は普通の声じゃなくて、罅割れて反響する声・・・。 心臓に何かを突き立てられたみたいに、怖い。 《逃がさぬぞ・・・契約は絶対。さぁ・・魂を捧げよ》 『シネ』 『オマエモワレラトオナジウンメイ』 『シネ』 『コッチヘコイ』 やめて・・・。 「お・・・・・おじさん・・・・・こ・・・こえが・・・」 叔父さんにしがみ付くと、抱き返してくれた。 たすけて・・おじさん・・怖いよッ! 「・・・・・鬼に呼ばれているんだな?」 『クルシイ』 『クルシイ』 『シニタクナイシニタクナイ』 『シンデシマエ』 やめてやめて・・・ッ!聞きたくないッ! 「・・・・・・・・・う・・・うん・・・・・・。おいでって・・・・呼んでる・・・。あ・・・・・・ぁぁ・・」 『オイデ・・・・オイデ』 行きたくない・・・ッ! どんどん目の前が暗くなる。暗闇が近づいてくる。 「九龍、意識を保て」 「叔父さん・・・・叔父さんのとこにいたい・・・もう離れたくない・・・やだ・・・・」 《九龍・・・・さぁ、我が元へ・・・》 「誰が行かすか・・・・・・・・・ッッ!兄貴、九龍を頼む」 「・・・・・・・・戦えるのか?」 「あぁ・・・・・こいつは、俺がやる」 だめだよ!だめっ!いかないで! もう・・・もう見たくないよ。叔父さんのあんな姿みたくないんだ。 しがみ付くと、やんわりと叔父さんの手が、上に重なった。 「九龍、すぐに戻ってくる」 「・・・いかないで・・・」 「あー・・・・・・。俺はどこへ行っても帰る場所はお前の元だ。約束する」 「・・・うそ・・・・・・」 約束したのに・・・。 一人にしないって言ったのに・・・。 あのとき本当に怖かったんだから・・・。 「本当だって!ウソつかない!」 「・・・・・・本当・・?」 叔父さんに両肩をつかまれて、正面から向き合った。 「あぁ・・・・。すぐに片付けて戻る。俺の強さは知ってるだろう?」 パチンと片目を・・・あぁ、ウィンクってやつだよね・・?をして、そのまま叔父さんの顔が近づいてきたらびっくりした。 頬っぺたにちゅっとされて、びっくりして背後に逃げた。 も・・・もうッ!びっくりしちゃったじゃないかッ! 「九龍」 「な、なぁに・・・?」 叔父さんが急に真剣な顔をして、見つめてきたからどきどきして金縛りにあったみたいに、見つめ返した。 「あの鬼倒せたら・・・叔父さんが寝てるときにやったこと・・・もう一回してくれ」 「え・・・・やったこと・・・・・・?あ・・・ぅ・・・あ・・あれは・・」 叔父さんが寝てるときにやったことって・・・あれだよね・・。 う・・・え、えっと・・・あれ?なんで叔父さん知ってるんだろう・・? 「言っとくが、消毒液ドバーーッ!って振り掛けたあれじゃないからな?」 「え・・・・?違う?」 あれ?そうだったのか・・。怪我が痛むのかなって思ったのに・・・。 「・・・叔父さんが言ってるのは、ちゅーのことだ、ちゅーちゅーちゅー」 なんだかタコ口になって3回も言われると、ちょっと・・・・。 それって、なんか・・・なんか、変! もしかして、叔父さん、頭打った・・とか?呪いのせい・・あ、呪い菌が頭に!? 「叔父さん・・・・・」 そんなそんな・・・どうしよう!? どうしたら治るのかな?頭切っちゃうとか・・!? 「九龍・・・・なんで泣きそうな顔するんだよ・・そんなにいやか・・?」 「だって・・・痛そうだし・・」 「は・・・?痛そう・・・・?」 「でも・・薬とかで治るかなァ・・・」 「ちょ、ちょっとまてッ!」 「ん?」 「お前何を言ってるんだ・・?」 「何って・・・叔父さん・・。しっかりしてね?」 呪いに負けちゃダメだよ! 大丈夫・・頭があれでも・・ちゃんと面倒見るから・・。 「お・・・おぅ・・・って、おいー?俺はちゅーしてくれってことを・・・・」 「ほぅ?・・・・俺の目の前でか・・?」 ちゃきっと銃を叔父さんの頭につけて、お父さんが言った。 「えっ!?いや・・・そのな・・・?ちょっとしたジョークでだな・・・」 「ここに鬼と一緒に眠ってもらおうか・・・・?」 「お、おぃ〜〜ッ!洒落になりませんよ!お兄様ー!」 「気持ち悪い言い方をするなッ!」 「お父さん、それ危ないよ?」 ダメだよッ!喧嘩は・・・。いやだからね!? お父さんを見上げると、ふっと優しい顔をして笑ってくれた。 「お前が言うなら・・・やめておこう」 「ありがとう、お父さん」 お父さんに手招きされて、近くによるとぎゅうと抱きしめてくれた。 温かい・・・。こうしてると、ずっとざわざわ聞こえてた声が聞こえなくなるから不思議。 抱きしめられて、寒かった身体に暖かさが戻ってくる感じがして。 安心する・・。 「ぐぅぅぅぅうーーーーーッ!仲良し親子めッ!見せつけか!?あてつけか!?うーらーやーまーしぃーーー!」 叔父さんが唸りながら、叫んだ。 どうしたんだろう・・・? 羨ましいって・・・・? 「叔父さんもしたいの?」 お父さんにこうしてもらいたいのかな・・・?温かいもんね。 「・・・・ッ!く・・・九龍、そりゃぁ勿論!」 首がもげちゃいそうなくらいに、頷く叔父さんを見て、そんなにしたいのかぁ・・・と思った。 ・・・・・・・・・・・・・・なんでかな・・・・。 面白くない・・・。 「おとーさん」 「・・・?九龍どうした?」 「叔父さんにもぎゅーってしてやって」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」 なんでかなーなんでかなぁ・・・ムカムカッときちゃうというか・・。 や、やきもちじゃないよッ!!きっと・・。多分。うん。 でも・・あれ?お父さんも、叔父さんも反応がないんだけど。どうかした? 「・・・・・・・・・・・・・断固拒否する」 「俺も兄貴にぎゅっとかしてもらうくらいなら、その辺の骨にハグするぜ」 え・・・ええっ!?なんでー? ムカムカが急にしぼんで、今度は悲しくなった。 もしかして仲悪いのかな・・?そんなこと、ないよね・・? そんなのイヤ・・・。 「・・・叔父さんとお父さん・・喧嘩しちゃいやだよ・・」 俯いてぎゅっと手を握り締めた。見てると怖くなっちゃうから。 「く、九龍ッッ!違うッ!」 「くろーーーう!!!仲が悪いわけじゃないぞッ!?叔父さんとお父さんは仲良し兄弟さッ!だよな?兄貴」 「う・・・うむ。そうだな・・・・・・オトウトヨ」 「棒読みするなよ・・・」 「お前こそ気持ち悪いぞ、その顔」 「兄貴こそ引きつってるぞ!」 どうしよう?なんだか喧嘩しちゃいそうな感じだ。 「・・・やっぱり・・仲悪い・・?」 2人を見上げると、慌てたような叔父さんとお父さんが居た。 「そ、そんなことないぞー!?」 「そうだぞー!」 肩を組み合って笑顔を浮かべた。 背が高いから肩も組めるんだー。いいなぁ・・・。 叔父さんと肩組んでみたいなーとか思っても、叔父さんが座ってないと無理だし。椅子に座ってても、無理だし・・。 だから憧れだったりするんだけど・・・良いなぁ。良いなァ・・。 でも仲が良いお父さんと叔父さんを見てるのは、好きかなぁ・・。 ・・・・・・ちょっともやもや〜っときちゃうけどね。 「く、九龍・・・?」 「お父さん・・」 「九龍?」 「叔父さん・・・」 2人を見上げて、笑いかけた。笑えてるかな?どうだろう? 待っててね、2人の間で肩を組めるくらいに身長も伸ばす予定だから! 「大好きだよ」 「・・・・・・・ッ!」 「・・・・・ぐふっ!」 あ、あれ?どうかした・・・? 赤い顔をして呆然としてるお父さんと、鼻を押さえて顔を赤くしてる叔父さん。 2人ともどうしたんだろう? 《別れはすんだか・・・?》 2人に声をかけようとしたら、急に耳鳴がしてぐらっと視界がゆれた。 倒れる寸前叔父さんが抱きとめてくれたけど、頭が痛い。すごく痛い。 声がまた近づいてきた。叔父さんとお父さんが居るから、それ以上大きくならないけど、何か言ってる・・・。 「おいッ!九龍!」 「おじさ・・・ん・・」 秘宝を求めるならば、命を差し出せ・・・・って聞こえる。 呪いはまだ解けてないって・・・。 たしかに、きこえた。 「おい!九龍!大丈夫だ・・・あいつは叔父さんが今からぶちのめすからな!」 眼を開いて、叔父さんを見上げた。 こんなに元気そうなのに・・・・とけてない・・? 『トケテイナイ』 そんな・・・・うそ・・・。 『オマエノセイダ』 うそだ・・うそだ・・うそだーッ!! 『オマエノセイダ』 「いかないで、おじさん!」 腕にしがみ付いたけど、やんわりとはずされた。 「暫く我慢してくれ」 また・・・・・・・・・・置いていかれる!? 「兄貴、九龍を頼んだぞ・・・・」 「まかせろ」 お父さんに、引き寄せられて座れさせられた。 叔父さんは、こっちを見て、笑った。あのすごく優しい眼差しで。 「九龍・・・帰ったらちゅーしてくれな?」 「まだそれか!お前はさっさといけ!時間がないんだろ!」 時間がない・・・?どういうこと・・? もしかして、お父さんは気がついてた・・・? 「九龍、叔父さんの応援頼んだぞー?」 「叔父さん・・・・頑張って・・・」 「応援」は俺のアクティブスキルって言うバディのスキルなんだけど・・・。 効果は叔父さんの全ステータスUPとか・・・だけど、行って欲しくないから・・うまく言えない。 「九龍?もうすこし情感たっぷりいってくれ?負けるな・・声なんかに」 心配そうな顔をした叔父さんに、胸が熱くなった。 本当に優しい、優しい・・・俺の叔父さん・・・。また・・・眠ってしまうって・・・。そんなのイヤだ。 《ならば、こい》 助けたい・・・・・と、鬼さんのとこへ行く決意をしようとしたら。 「九龍・・・いいか、命を差し出す意味はないんだ。あの悪代官にペロンと食べられるだけなんだ」 え・・・・?捧げるって、食べられること・・・だった・・の!? 「骨の集団を見ただろ?あんな風になるんだよ」 「たべ・・・」 「られたくないだろ!?」 「うん・・・」 イヤだ・・・ぞっとする。うぅ、暫くお肉食べれないかも。 「声はお前をおびき寄せようとするが、全部ウソばっかりだ!信じるな!」 のろいも・・・・うそ・・・? ほんとう・・? 「鬼を倒して秘文をゲットレする!九龍、判ったなら、応援、してくれるよな?」 本当に、解けてるのかな・・・。 判らないけど。でもちょっと・・希望出てきたかも。 心配だけど・・・・。 今は・・・叔父さんを応援しよう。大丈夫、大丈夫・・・叔父さんは強いから。 信じよう・・。きっと大丈夫・・。 「叔父さんの格好良いとこ見たいな〜!いつもみたいに!」 「おうッ!」 「・・・・・・・・怪我しないでね・・・?鬼さん倒せたら・・・」 視線を逸らした。だって顔を見ながらなんて、言えない。 「・・・寝てたときにしたこと・・ちゃんとするから・・・」 ゴトゴトゴトリッと背後で何かを落とす音がしたけど、気にしない。 「頑張って、叔父さん」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・九龍、俺は今猛烈に燃えちゃってるかもしれません!」 妙な宣言を力強くして、叔父さんは走り出した。 両手に銃を持って、急所を確実に狙ってるのが凄いなぁ・・・。 頑張って、叔父さん! |