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叔父さんと僕(九龍編)
第1部・その3

「はぁはぁ、くそガキ・・・てめぇ・・・舐めやがりやがって」
「体力ないなー、お兄さんたち」
「うるせーッ!!!おい、ガキ!」
5人の不良達は、一歩ずつゆっくり近づいてきた。
獲物は、行き止りに追い詰められて怖がってる、とでも思ってるのかな・・・・。
「ガキ・・・殴られたくなかったら、出すもん、出せよ」
「出すもんってなんだよ」
「は?とぼけんなよ、てめぇ」
じりじりと、相手が近づいてきて、目の前に立たれる。
その拳が、振り上げられるのを見て、応戦するか、しないか、迷う。
「痛い目見とけッ!このが・・・・・・」
不良達が、動きを止めた。

「九龍ーーーーーーーーーーッ!!!」

え・・・な、なんで、叔父さんが・・・?
さっき、ついさっき、メールしただけなのに・・・・。
「お、俺の九龍に何しやがるッッッ!!!どきやがれーーーっ!!!!!」
びっくりしていると、叔父さんは、俺の前に立っていた不良達を殴って、蹴り倒すと、ぎゅううっと背が痛くなるくらいに、抱きしめてきた。
そのままの勢いで、じょりじょりと頬擦りをされる。高速でされるそれは、はっきり言ってキラいだ。
「もーーーっ!じょりじょりするからイヤだってばっ!」
おもいきり腕をつっぱって、突き放そうとするけど、叔父さんの身体はびくともしない。
「九龍、九龍、無事か!?怪我してないか?・・・・・・・・・1ミリでも怪我してたら、お前ら・・・・むしるぞ?」
むしる・・・・?むしるってなに?
叔父さんのその言葉に、不良集団は後退りした。
「怪我??してないけど・・?み、道聞いてただけだし?」
とりあえず、自分からここに入り込みました、なんて言えないから、そう答えておいた。メールにも道を聞いたって書いといたし。
つまつじ・・?つつじま・・?は合うはずだし。
「・・・・・・・お前なぁぁ・・・・」
何故か叔父さんは脱力した。
どうしたんだろ・・・?走ってきたのかな・・?そういえば、身体が少し汗臭い。実際、汗も流れてるし・・・。
(心配で、捜してくれた・・?)
電話は、無視したんじゃ、ないの・・?
「・・・・お、おいッ!そこのおっさん!てめーでいいぜ?出すもん出せよッ!」
問いかけは、不良達の声で声にならなかった。むっとして、相手を睨みつけて言う。
「また言うし。出すもんってなんだよ?」
「九龍、お前はちょっと黙ってなさい」
叔父さん・・・?
珍しく厳しい声に、びっくりすると、叔父さんは頭を撫でてくれた。
そのまま優しく肩を押されて、壁に押しつけられる。
その前に立ちはだかる叔父さんの広い背中を見上げた。
「・・・そうかそうか、そんなに出すものが欲しいのか?じゃぁ、くれてやるぜ・・・ッ!!!」
叔父さんがそう言ったとたん、目の前にいた不良が空を飛んだ。
投げ飛ばしたんだ、と思って、そっちに目をやったあと、もうすでに、全員地面に倒れ込んでいた。
(・・・・叔父さんは、やっぱり・・強いなァ・・・)
叔父さんは元々は銃の名手だったらしい。
今でも時々銃を使うけど、今はもっぱら、投げナイフと素手の格闘全般で。
俺も投げナイフは教えてもらったけど、格闘技は向いてないからと護身術程度にしか教えてもらってない。
(・・・柔道とかは絶対にするな、とか・・・言われてるしなぁ・・)
どうして?と聞いたら、「叔父さんが出血多量で死んでも良いのか!」と怒られた。
意味わかんない。
叔父さんは、倒した不良のリーダーっぽいヤツを踏んで、何か言っている。
それを見ていたら、急に振り向かれて、身体が飛びあがるくらいビックリした。
(お、怒ってるんだからな!ばかばかッ!)
むすっとした顔をして、叔父さんを睨んだ。
「・・・俺は悪くないもんッ!!おっさんが迎えに来ないから悪いんだッ!」
電話もしたのに!捜したのに!
居なかった、叔父さんが全部悪いんだッ!
「確かに迎えを俺とした事がうっかり忘れてたさ・・・すまねぇな・・・」
叔父さんは、悪かったと言って、俺の頭を撫でてくれたけど・・・・・、けど。
(うっかり・・・忘れてた・・・!?)
いつも絶対忘れない、叔父さんが!?
・・・・俺ことなんかどうでもよくなるくらい、楽しいコトでも、やってたの・・?
「・・・・・・ずっと、捜してたのに」
「・・・・・・」
「そりゃ遅刻した俺も悪いけど、でも、叔父さん、居なかったし」
「・・・・・・・・」
あれ・・?反応がない?
見上げると、どこか、ぽわんとした顔をして意識をどこかに飛ばしてる叔父さんがいた。
「・・・って・・・おっさん!!また話聞いてないし!!!ばかばかばかッ!」
ムカムカムカッ!っときて、叔父さんの胸板をバシバシ叩く。
「あいててて、ははは、やめろよ、くろう〜」
ばしっと、簡単に両腕を捕まえられて、更に腹が立つ。そのまま、またぎゅうと、抱き寄せられて動きを止めた。
俺がどんなに暴れたって、叔父さんには適わない。
(・・・横に並ぶことなんて・・・・ムリかな・・・やっぱり)
頭を掠める、暗い思考が嫌になる。
「悪かったな・・・でもな、こんな変な団体さんについていったらダメだからな?」
「・・・・変なって言われても、わかんないよッ!」
「そうだなぁ・・・・あぁ、とりあえず、高校生でタバコの匂いがするやつはダメだ」
「そっかーわかった・・・・」
そういえば、夢で見た、小さい頃俺をどこかに連れて行こうとした嫌な男も、タバコの濃い匂いがしたなぁ・・。
叔父さんは、タバコは俺の前では吸わないから、そんなに濃く匂いはしない。
そんなことを思っていると、叔父さんが急に真顔になった。
「お前、泣いてた・・のか?も、ももも、もしかして・・・泣かされたのか!?」
「・・・・・」
慌てて顔をそむけた。泣いてたの、気づかれたくなかったのに・・。
ぎゅっと、目を閉じると、叔父さんが唸り出した。
「・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・むしる」
「ぎゃ、ぎゃぁぁ!?」
叔父さんは俺から離れると、背後で気絶したフリをしてた不良を捕まえて、その服を剥ぎ取ろうとした。
な、なにやってるの・・?叔父さん・・。
学ラン、着るの?着たいの?叔父さん。
もう年なんだから、やめようよ・・・。
「・・九龍の前じゃなかったら、てめぇら、ドラム缶に詰めて筑後川に流してやるとこだぜッ!!!」
ちくごがわ・・・・???
あぁ、地元の近くにある大きなあの川かぁ・・・。
なんであそこが出てくるんだろう??俺の前じゃなかったら、川に行って遊ぶとか言う・・話かなァ・・・。
・・・・ムカッ
「叔父さんッ!」
「なんだ九龍〜!」
呼びかけると叔父さんは妙にでれ〜んとした顔をして振り向いた。
あれ・・?俺をのけ者にするとかいう話じゃ、なかったのかな・・・・?
叔父さんのこの顔は、俺を「可愛い可愛い可愛い」とか言うときの顔なんだよなぁ・・。
「泣いてたの・・・違うから・・・その人達のせいじゃないから」
本当に違うし。むしろ、叔父さんのせいだしッ!
でも、なんか、叔父さんがその人達が居るとこっちを見てくれないので、さっさと放してやって、と言おう。
「そうなのか・・?本当か?」
「うん・・だから、放してやって」
だってさ・・・なんか楽しそうなんだもんな・・。
「おぉ!お前が言うならな!・・・ほれッ!さっさと消えろッ!いいか?俺の九龍に今度絡んだら、おじさん本気出しちゃうからな〜?」
「ひぃぃぃぃー!!!!」
逃げていく不良達を見送る叔父さんの背中を見て、どうしようかと考える。
なんで、電話に出なかったんだよ?とか。
なんで、ここが判ったの?とか
なんで、迎えに来なかったんだよ、とか。
口にしようとして、思わずボロッと涙が・・・・・・。
「どどどどどどッッ!?どうした!?どこか痛いのか?怪我してたのか?あいつらに、何かされたのか!?」
「ひっく・・・・・」
ダメだ。止まらないや・・。
「あぁぁッ!どうしたんだよ〜〜〜!」
「う〜〜〜う〜〜〜」
叔父さんは俺の前を熊のようにウロウロして、やがてそっとと腕を伸ばしてきた。
「あぁ・・・・ヨシヨシ・・・な?大丈夫だから、落ちつけ・・」
ぎゅっとされて、頭を撫でられた。
「叔父さんが・・・・・」
「ん?いいから言ってみろ?」
「叔父さんが・・・・居なかったから・・・」
「うん・・・うん」
「こ・・・こわくて・・・・」
「すまねぇ・・」
「・・・・電話したけど、出ないし・・・・・ひっく・・」
「電話は・・・あぁ・・・・車に置きっぱなしだ・・・」
「なにしてんだよっ・・・・」
「悪かった・・・・ごめんな?九龍・・」
「ばか・・・・ばかばかっ・・・・・・・怖かったんだからな・・・・」
「不安になっちまったのか・・・?ごめんな・・・」
叔父さんがふいに、目元の涙を指で拭ってくれた。
「・・・・・・」
優しい叔父さんに、安心して見上げると、目が合ったとたん叔父さんは動揺した。
「うっ・・・・」
「・・・・?どうしたの?叔父さん・・」
「いや・・・持病の水虫がなぁ・・・・」
どこかで聞いたようなフレーズだと思って、ふと考える。
あ、卒業式のときと、同じ事言ってる!
(・・・叔父さん、あの頃から変わってないんだ・・・・)
そう思うと、嬉しくて笑った。
「――ッッッ!!!!九龍ッ!」
何故か俺の顔を見て赤面した叔父さんは、更にぎゅうっと抱きしめてくる。
「くるしいよ〜〜」
「あ、あぁ・・すまねぇ・・・でも・・・・・・くっ」
ぎゅむっと再度抱きしめられて、嬉しくなった。
優しい手で撫でられながら、思う。
(ここにまだ居たいよ・・・こうしていたいよ・・)

『いつまで一緒に、居られるのかな』とそればかりが心の中にある。

叔父さんは優秀なハンターだ。
若い頃はランキングに必ず名前を載せていた程の常連だったとか、試験所のあのコンニャク男に聞いた。
今だってそう。バディとして叔父さんにくっついて来て、傍で見てきた。
危険度の少ない遺跡だからかもしれないけど、さくさくと秘宝まで辿りつく。
俺はただ、ついて行くだけで精一杯なのに。
12歳の頃からだから・・・2年間で自分でも驚くくらい体力も力もついたのに、叔父さんが息も乱さずにひょいひょいと進む道を、俺は全力で進む。
俺が居なかったら、きっともっと効率良く進んでるだろうし、難易度の高い遺跡に行って、ランキングにだって乗るだろう。
一緒に居たいから、それだけで、ついてきたけど。
叔父さんの足を引っ張ってばかりで、『お荷物』にしかなってない・・・と思う。
叔父さんに頼ってもらえるくらいの強さが、欲しい。
叔父さんは、『相棒』って呼んでくれる。遺跡の中だけだけど。

俺はそれが嬉しくて、とても誇りに思ってて。
だから、その座を誰かに取られたくないって思うんだ・・。

ぎゅっと、目の前の叔父さんにしがみ付いた。
顔を隠したまま、重い話題を口にした。
「・・・・あのね・・・叔父さん・・・」
「・・ん?どうした?」
「なんでさ・・・聞かないの・・・?知ってるから・・?」
「あ?何の事だ・・・・・・・あぁ、試験のことか・・・?」
「うん・・知ってる・・の?」
「何をだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・試験の結果・・」
「知らねぇよ。お前が言わなかったから聞かなかっただけだ」
「ごめん・・・・なさい・・」
呆れられてるのかな、と思ったとたん、一旦納まっていた涙がまた出てきた。
どうしよう。怖い・・・・、3度目だもん、呆れられるのが・・普通だよね・・・。
「お、おいっ!?」
慌てた声がして、顔を強引に上げさせられた。
叔父さんと目が合う。びっくりした顔をしていた。
「ごめん・・・俺本当にダメだよね・・・また落ちちゃっ・・・・・た」
ボロボロと涙が溢れて止まらなくなる。
「・・・・うっうぅ・・・」
行かないで、呆れないで、見捨てないで、傍に居て。
みっともない願いが、ぐるぐると渦を巻いてるような気がした。
叔父さんのお荷物になるしかないのに、そんな我侭や甘えを言いたくなる。
「九龍・・・・・良いから、抑えなくて良いから。泣いて良いぞ?立ってるとキツイだろ?」
叔父さんが、そっと身体を支えてくれてそのままその場所に並んで座り込む。
身体の下に、いつ敷かれたのか叔父さんのジャケットがあった。
それに気がついて慌ててどこうとすると、身体を抑えられて、座らせられる。
「よっ・・・よごれ・・・る」
「あー良いんだよッ!お前が汚れるよりは何千倍もマシだ!」
叔父さんは大げさに言うと、肩を引き寄せてくれた。
「九龍、俺もな?・・・試験には3度落ちたぞ」
え?ええええぇ?びっくりした。
「・・・・・そうなんだ・・・・?」
「あぁ・・・車の免許もな、そっちは4回は落ちたな。バイクの試験なんか、5回だ」
びっくりして、涙が止まった。
なんでも出来る叔父さんと思ってたけど・・・そうなんだ・・。
「試験ってもんはな・・・車もバイクもそうだったが、ハンター試験もだ、試験管次第で落とされたりもする」
まぁ、審査するヤツが人間だから仕方がないことなんだけどな、と、続けて、笑った。
「試験ってのはだな、合格か不合格のどちらかしかない。どっちかにしかなれないもんだ」
「うん」
「不合格になると、誰だってな、悔しいんだよ」
「うん・・・・」
すごく、悔しい。とても・・・・辛い。
「辛いし、悲しいし、落ち込むしな?」
「・・・・叔父さんも・・・?」
叔父さんも、落ちたとき、そうだったの・・・?
「あぁ、凹んだな!3日くらいふて寝したこともあるぞ」
「・・・・ウソみたい・・・」
「おいおい、俺はお前にはウソはつかないぞー?他のやつにはウソつくけどな!」
背中を撫でてくれる手が、そっと肩に回された。
ポンポンと叩かれて、顔をのぞき込まれる。目が合うと・・・あ、目尻が下がった。
「だからな、落ちても悲観することはないぞ?落ちたら這い上がれば良いんだ」
「はいあがる・・・」
「悔しいとか、そんな気持ちは大事にしろ、それがな?お前の原動力になる」
「げんどうりょく?」
「そうだなぁ・・・『力』とか『強さ』だな。悔しい、とか、そーゆーのをだ、見ていやがれこの野郎ー!と、立ちあがる強さだ」
「強さ・・・」
「自分を惨めに思ったり、ダメな人間だとか思って落ち込むより、それをバネに這いあがったほうが、時間も得だ」
叔父さんって・・・・スゴイ・・。
どうしてかな。さっきまでの重石が、大事なものになったような、気になった。。
「九龍・・・これだけは忘れるなよ。何事も、無駄なものなんてないんだからな」
「無駄なもの・・・」
「あぁ、すべての経験は・・・・どんなちいせぇ事でもな、それから成り立ってるんだよ。それの繰り返して、人間は猿から進化したんだぜ?」
「叔父さんは・・・」
「なんだ?」
「凄い人なんだ・・・」
本当に、そう思う。
俺は落ちた時、世界が全部暗く感じたのに。
叔父さんは逆に、えっと・・・そうそう車で言うとオイルじゃなかった・・えーと・・・、ガソリン!にしちゃったんだ。
「あ?すごくないぞ??それに俺は「凄い人」より、「格好いい叔父さん」って呼ばれたいなぁ・・・?」
「うん、とっても格好いいよ!」
本当にそう思ったから、笑いながら言うと、叔父さんは猛烈な勢いで抱き着いてきた。
「くッ・・・・・・・・・可愛い可愛いかーわーいぃぃぃー!!!」
「わわわわッ!」
抱きつかれて、背後に倒れ掛かったけど、力強い腕に抱きかかえられるようにされて
「・・・九龍・・・・頼むから、一人で思い悩むなよな・・・?叔父さんは呼べばすぐ来るからな!?」
「・・・本当に・・?本当に、良いの・・?」
「何を今更ッ!お前なぁ・・・・、俺がお前のことを迷惑とか、重荷とか、思うことがあると思うかッッ!?」
「・・・・・・・・うん・・・・」
そんなことなって思いたいけど、実際、そうなってる自分がいるから・・・悔しいよ。
でも叔父さんの言葉で、判ったから。
まだ、頑張れる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「お、叔父さ・・・・・叔父さん!?」
急に叔父さんが脱力したので、慌ててその身体を支える。
どうしたのかな?具合悪いのかな・・・?
そう思って、慌てて誰かを呼ぼうと立ちあがろうとすると、力強い腕に引き戻された。
「九龍・・・お前は・・・お前はッッ!!!あーもう、九龍、良いか、よぉぉぉぉぉく聞けよ?」
「うん・・・」
「俺はお前を全身全力全魂で、愛してる」
「うん、俺も・・・・・叔父さんのこと、愛して・・ます」
あ、これさすらいの絵描きのお姉さんが言ってた「あいのこくはくけいかく」のやつっぽいなぁ。
えへ、偶然だけど、言えて良かった。
この言葉って照れちゃうなぁ・・。あうぅ、顔が赤くなってしまう。
そう思いながら、叔父さんを見てみると。
かぽーんと口を開けて、眼を丸くした叔父さんが居た。
どうしたの・・?といおうとしたら、叔父さんは叫び出した。
「ぎょひぇあーーーーーー!?」
わ!び、びっくりした!
どうしたんだろう、叔父さん、物凄く驚いてる感じだけど。
「叔父さん・・・・?」
もしかして、嫌だった・・・・とか?
ちくんと胸が痛んだ。そんなはずない、叔父さんから愛してるって言ってくれたんだから。
何か言ってよ、叔父さん・・・。
「九龍・・・・・」
「叔父さん・・・?」
叔父さんはどこか遠くを見る感じで、俺を見ていた。
嫌だったのかなァ・・・・・・・・。でもなんか、顔がにやけてるしなぁ・・・。どうなんだろう・・・。
心配になってきて悲しくなってきたら、叔父さんがそっと俺の手を掴んで、握り締めてくれた。
そっと大きな手に包まれる。
良かった、嫌じゃなかったんだよね?
叔父さんに何か言おうとしたら、背後で足音がした。
誰だろう?と振り向く前に、叔父さんがぎゅっと抱き込んできて右に避けた。
ビシッ!!と音がして、叔父さんの頭が直前まであったところ・・・その背後の壁に、誰かの足先がのめり込んでるのが見えた。
危ないなァ・・誰だよ、叔父さん怪我しちゃうだろ!と思って振り向いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よ、よォ・・・」
叔父さんの固い声を聞きながら、その人物を見上げた。
「・・・・覚悟は出来ているな?小五郎」
あ、ああッ!
「あ、お父さん!」
背の高いスーツの男の人・・・お父さんは、俺を見ると優しい笑顔を浮かべてくれた。
なんで?なんでこんなとこにいるの??
お母さんも居るのかな・・・?会いたいなァ。
それよりも、とても久しぶりで、えへへ、照れてしまう。
「九龍、久しぶりだな・・・?お父さんは今から、叔父さんとお話があるから、先に車に乗ってなさい・・・この道を右に曲がったところの駐車場にあるからな?」
あ、もしかして叔父さんが会ってた人ってお父さんだったのかな?そうか・・・もしかして、話の途中で伯父さんが迎えにきちゃったのかな?
そうかぁ・・・、じゃぁ、言われた通りにしないとなぁ。
「叔父さんの車?お父さんの車?どっちー?」
「勿論お父さんの方だ」
「うん!わかったー」
「夜道は危ないから気をつけて行くんだよ?何かあったら叫びなさい」
「はーい」
叔父さんの膝からよいしょと、降りて、振り向くと。
何故か叔父さんは青ざめていた。やっぱり、具合良くなかったのかな・・・?
お酒の飲みすぎ・・・・?
そうだ、飲み物を買ってこようっと。お酒を薄めるには、たしかお味噌汁とかお茶とか良いんだったよな?
うん。そうしよう!
二人に向かって笑いかけて、俺は駆け出した。
背後で叔父さんの悲鳴が聞こえた気がしたけど、きっと気のせいだよね。

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