「ちッ!濡れちまった・・・・」 ズボンの裾を濡らしてしまって気持ち悪いと眉を潜めてから、更衣室を見渡す。 葉佩は自分の着替えのある籠の前に座り込んでいた。どうやら着替えるまでしか持たなかったらしい。 「・・歩けないほど酷いのか?」 ぐったりと座り込んでいる葉佩は、目を閉じている。めまいでもするのかと、続けて尋ねると無言で首を振って答えてきた。 「貧血か?湯当たりか?」 「・・・・・・・・ううん・・・眠いだけだから・・」 「眠い?」 「うん・・・・」 頷こうとした葉佩の髪から、雫が落ちる。 「髪ちゃんと拭け・・・風邪引くぞ」 言いながら壁に寄りかかり、アロマを取りだし吸い込んだ。 「自分で拭けよ。床濡らすな」 葉佩は無言で頷くと、面倒くさそうに髪を拭いた。 「拭いたのならさっさと行くぞ」 「ま、待って・・・ぎゃっ!」 慌てて立ちあがろうとして、葉佩はそのまま盛大に滑った。 「・・・・バカ・・・だから床濡らすなって言っただろうがッ!」 「うー・・・・うぅぅ・・・痛い」 滑ったまま倒れている葉佩は、肋骨付近に手を当ててうめいた。 どうやら怪我をしていた部分、とくに肋骨に響いたらしい。 「あー・・・ったく、世話が焼ける・・・」 深々とため息をついて、葉佩の傍らに膝をつき、その肩を掴んで引き起こす。 「大丈夫か?」 「滅茶苦茶痛かった!」 「だろうな」 再びため息をついて、立ちあがる。 「立てるか?」 「手かして〜」 「どこまでも、どこまでも・・手がかかるやつだな・・・・」 アロマを持つ手とは違う方の片手で、伸ばされた手を掴んで立ちあがらせてやる。 「冷たいな・・・・」 言いながら疑問を抱く。 (出たのはついさっきだぞ・・・?なんでこいつ、こんなに冷えてるんだ・・?) 「どこまでも・・って2回もいわなくてもいいじゃんか・・」 ぶちぶちと呟きながら、落ちたタオルを葉佩は自分の肩にかけた。 「動いてたら眠くなくなると思うから行こう」 歩き出しながら、無意識なのか肋骨に手を当てている葉佩を見て、ため息を再びついた。 「・・・・荷物くらいなら持ってやる」 「・・・ありがとう」 嬉しそうに笑いながら言った葉佩から視線を逸らして、着替えやシャンプーリンスをいれた袋に葉佩の分も突っ込んだ。 「・・・ほら、さっさと行くぞ」 「うん!」 「はふーッ・・・・・ちょっと休憩」 部屋につき、中に入ったとたん葉佩は扉を背に座り込んだ。 「おい、座るならベッドにでも座れ」 「はいはい」 軽く返事をし這いずってベッドまで辿りつき、ばふっと音を立てながら横に寝転がった。 「おい・・・・濡れるだろッ」 「あー・・・ごめんごめん・・でも、ちょっと・・・」 どうやら『眠い』と言っていたのは本当だったのか、もごもごと何か言っていたが落ちるように眠りについた。 (やっぱりこうなったか・・・) 階段を上るときもふらふらしていたのを思い出しながら葉佩の濡れた頭の下にタオルを差し込んだ。 「やっぱり冷たいな・・」 触れた肌の冷たさに眉を寄せる。更衣室で振れた時よりも更に体温が下がっている。自分の手が風呂で十分温まっているからかもしれないが。 (打撲や肋骨のせいか・・?) 肋骨、と思い出して自室の扉のドアノブにかけてあった夕薙からの差し入れである湿布を思い出した。 「・・・後でで良いか」 葉佩の顔色の悪さに、起こすのがしのばれた。 (ち・・ッ・・・本当に調子が狂うッ) 髪を片手で乱暴にかき乱しながら携帯を手に取りメールを神鳳に送る。遅くなる旨を書き送信し、外へ出た。 (コーヒーでも買ってくるか・・) 他人が寝ている部屋に居るのは何となく気まずく感じる自分に軽い違和感を覚える。 (・・・なんで俺が遠慮しなきゃならないんだ・・・ッたく・・) 「お、皆守!」 (神鳳からメール着たら無理にでも起こして連れていくか・・・) さっさと厄介な子守りから解放されたい、と思い苦笑いを浮かべた。 「おーい!何にやけてんだよ?皆守ッ!」 声と共に脳天にゴスッと手刀を落されて驚く。 「ッ!!!緋勇ッ!」 慌てて振り向くと、そこに居たのは緋勇だった。武器は装備していないが、額にゴーグル、両手にグローブ、極めつけにアサルトベストを着ている。 「お前、その格好でうろついてんのか?」 「おぅ!格好良いだろ?」 「イカれた格好だな、と俺は初日に言ったはずだが」 「え?イカした格好って言ったんじゃなかったっけ?」 「言ってないッッ!それのどこをどう見ればイカしてるんだッ!」 「どこって、全部」 あっさりと言い放ち、緋勇はふんッと何故か胸を張った。 「どこから来るんだ・・・その無駄な自信は」 謙虚さの欠片も見当たらない緋勇を見て脱力しながらアロマをつけた。 「ふッ・・・大人には色々あるのだよ、青少年ッ!」 「・・・・・前々から思ってたんだが」 「なんだ?」 「お前、大和より年上ってことはないよな・・・?」 「ぎくりッ!」 「だから、口で言うなッッ!」 「いや、口で言ったのは今回初!」 「・・・・あぁ・・・そうか」 (こいつと葉佩・・・どこか似てるからな・・・・) 「俺より、皆守の方が年上なんじゃねぇの?もうボケだしてるし」 「・・・・・・・・・・・・・・・緋勇、目尻にしわ」 「うっそッ!?マジでッ!?」 「アホだな・・・」 慌てて鏡を見に走っていってしまった姿を見送って、溜め息を深々とついた。 (カレーを勝手に食ったことに文句言うの忘れてた・・・) 手に取ったコーヒーはすでに冷めてぬるくなっていた。 (戻るか・・) 自室へ歩き出したとたん、メールを受信した携帯が震えた。手早く手に取り眺める。 『会長がお待ちです。起こしてすぐに連れて来て下さい』 (やっぱり、か・・・・・・) 予測していた返答に再び溜め息をつき、部屋へと戻った。 「あ、おかえり」 「起きてたのか」 部屋の扉を開けたとたん、にこやかに出迎えられて一瞬驚く。 葉佩はベッドを背に床に座り、どこから取り出したのか緑茶を飲んでいた。 「このお茶安いヤツだろ?おいしくない」 「なら飲むなッ!それにそれはいつ貰ったかもわからないヤツだぞ」 「お茶買おうよ。おいしいよー」 「俺はコーヒーか、ミネラルウォーター派だ」 「お茶おいしいのに・・」 「知るかッ!・・・・それより、もう良いのか?」 「うん・・・慣れたって思ってたけど・・・、やっぱ身体が弱ってるとダメだなァ・・・」 独り言のように呟き、立ちあがる。貸したジャージの袖や裾が余って踏まれてるのに気付き眉を寄せる。 「裾踏むなよ・・・曲げとけッ!」 「あッ!そうか、なんか歩きにくいって思ってたら踏んでたのか・・・」 葉佩は今気付いたと慌てて裾を曲げた。袖は折り曲げないらしい。 「やっぱこのジャージいいなぁ・・・」 生地をつまんで伸ばしたりしながら、しみじみと呟いた。 「神鳳が待ってる。行くぞ」 そう言いながら、伸ばすなと葉佩の手を叩き歩き出す。 「神鳳さん・・・あぁ、あの髪が長い人か」 「名前知らなかったのか?」 カチンと軽い音を立てて鍵をかけ、葉佩を見る。葉佩はわずかに首を傾げてから頷いた。 「名前は聞かれたけど、教えてくれなかった」 「あれは《生徒会》会計の神鳳充。あとはまぁ・・・この学園の生徒じゃないお前に言う必要はないか・・」 「えぇッ!そこまで言ったなら良いじゃん教えてくれたって、ケチだケチーッ!」 「ますます言いたくなくなった」 「ゴメンナサイ」 「詳しくは本人にでも聞け」 「判った。そうする」 意外にもすんなり引いたことに驚きを覚えつつ、辺りを見渡す。1階の男子寮入り口付近には誰も居ないようだった。 「この時間だと風呂に行ってるヤツが多いのか・・」 今ごろ風呂場はイモ洗いさながらの状態だろう。 (早めに入ってて正解だったな) 「これから行くとこって、どこなんだっけ?」 「生徒会室だ」 歩き出し、バー『九龍』へ向かう。道にも人影は見当たらなかった。 (時間が時間だしな・・・) この時間なら風呂かマミーズが混んでいるだけで他の者は皆、自室や寮のリビングにいることだろう。 「あぁ・・・そういえば、そんなこと言われてたかぁ・・・」 「覚えとけよ」 「あ、でも・・・なんで生徒会なんだ?先生じゃないのか?」 「この学園は教師よりも《生徒会》が主導権を持ってるんだよ」 「しゅどーけん・・・・?」 「・・・・・・・・・お前、今平仮名で言わなかったか?意味わかってるか?」 「えっと・・・・わかんない・・・」 「はぁ・・・つまり、この学園で一番力を持っているってことだ」 「うぅぅ・・・そんなに大げさに溜め息つくなよー」 ぐちぐちと言い募る葉佩を無視してバー『九龍』の前から礼拝堂の裏手の芝が敷き詰められた場所へ進む。この辺りは道ではないので明かりも乏しく、暗い。 「あッ!置いてかないで〜ッ」 立ち止まっていた葉佩は、いつの間にかに引き離されていたことに気付き慌てて走ってくるが、再び立ち止まった。 「・・・・?おい、どうした?」 「ね・・・なんか、聞こえる」 「はぁ?」 「俺、眼は悪いんだけど耳は良い方なんだ。・・・あ、ほら、やっぱ聞こえる」 「・・・・・・聞こえないぞ?」 「ううん。聞こえるって!ぶつぶつ何か言ってる・・人の声。えっとね・・・・・うんと・・・・・」 葉佩は目を閉じ耳をすませた。 聞こえる、といわれてみても聞こえるのは秋の虫の声くらいだ。周辺に人気はないと思うんだが。 「気のせいじゃないか?」 「あ・・判った!石ッッ!って言ってるって・・・わッ!」 「石ッ!?どこかなッ?僕の石ッ!!!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・黒塚・・・」 葉佩の声に敏感に反応したらしい黒塚が道の脇に植えられている街路樹の間からガサッと大きな音を立てて飛び出していた。 「僕の石はここかいッ!?」 「び、びっくりした・・・ッ」 石を探し足元を這いずりまわる黒塚と、驚いて尻餅をついている葉佩を見て、再び溜め息をついた。 「ん・・・?おや?君は・・・・・・『皆守甲太郎』?」 「え?」 驚く葉佩を見て、眼鏡の縁を触り興味深そうに見た黒塚は、視線をこちらへと向けてきた。 「そこに居るのも皆守君。変だね・・皆守君が2人居る。ねぇ僕の可愛い石(ひと)・・・、これはどういうことかな」 「みなかみこうたろう?・・・え?丘紫さんじゃなかったんだ!」 「ッッ!!!!アホかッッ!!!誰が2人だ!誰が丘紫だ!それはラベンダーのことだッッ!!」 はぁはぁと息を吐く。ほぼ同時にボケられるとツッコミするのも大変だ。 (わざとボケてんのかッ!?) 「ふむ。皆守甲太郎、生粋のツッコミ体質である、と・・・」 「おいッ!メモ取るなッッ!」 どこからともなくメモを取り出して書き込む黒塚に怒鳴るが、メモの厚みも気になった。 (・・・・前より増えてないか・・・・?) 何を書かれているか、考えるだけで頭が痛くなるようだ。 「あージャージのここに名前がついてるのかァ・・」 「お前な・・・・」 (今更気付くなよ・・・・) 「そうか、そういえば最初『皆守君』って呼ばれてたような気がしてたもんなぁ・・・」 「なんで丘紫なんだよ・・・」 「うーんラベンダーの別名って丘紫って言うんだ〜凄いなァ・・って思ってたら、何故か・・・なんでだろう?」 「お前の脳みそがどれだけ小さいかは判った」 「うぅぅ・・・」 葉佩は酷い〜いじめだ〜とか言いながら、地面に『の』の字を書き出した。 それを見て鼻で笑うと、黒塚が何やら妙な笑みでこちらを見ていることに気づく。 「なんだ?」 「フフフフ・・・・皆守君もそんな顔をするんだと思っただけさ」 「はぁ?」 「ねぇ、そこのジャージの君。石は好きかい?」 「え?俺?」 「そう、君」 「うん、好きッ!なんかコケとか生えてる石とか好きだなァ・・」 「フフフフフフフフフ・・・・素晴らしいッ!素晴らしいよッ!あぁ、なんてことだ・・・君みたいな優秀な人材を今まで知らなかったなんてッ!」 「・・・や、やだなぁ・・・て、照れるじゃん」 「フフ・・・。照れることはないよ・・ねぇ、君の名前教えて欲しいよ。ついでにこれに記入してくれれば良いから」 黒塚はそう言いながら、どこからともなく1枚の紙とペンを差し出した。 「・・・・・おい。どさくさに紛れて入部届を出すなッ!」 「おや、バレてしまったか・・・」 「えっと、書いちゃダメなの?」 「お前も律儀に書くなッ!!」 葉佩は素直に名前を書いたらしい。入部届の紙を持って戸惑っている。 「葉佩九龍君、か・・・・。聞いたことのない名前だね、どこのクラスなんだい?」 「ええーっと・・・うーんっと・・・」 ウソがつけない性格なのか、言い詰まって困っている。 助けて〜ッ!とでも言うかのような視線に、皆守は再び溜め息をついた。 (・・・・・・ちッ!仕方ない・・・) そっと足元を見、近場にあった石を見つけ素早く蹴った。石は墓守の小屋のほうへと勢いよく飛んでいく。 「――ッッ!!!い、今の音は僕に助けを求める愛しい石(ひと)の声ッッ!!!」 「・・・・・そうだな、呼んでるな。さっさと行かないと誰かに蹴られたりするんじゃないか?」 「待ってて〜愛しの石(ひと)〜♪い〜まぁ行くよ〜♪愛しのキミよぉ〜ぉぉぉ〜♪」 ダッと勢いよくスキップしながら走り去った黒塚を見送って、呆然としている葉佩の腕を掴み立ちあがらせる。 「い、今蹴ったのって・・・・」 「さっさと行くぞ」 「う、うん・・・・・・・・・石ホント好きなんだなァ・・さっきの人」 「あれにも構うな」 「でも、何か好きな物に夢中になれるって良いことだよね」 「・・・そうだな」 「・・・・夢中になれることかぁ・・・」 「お前もあるんじゃないのか?好きなんだろ、石」 「コケの生えた石?うん。ずっと見ていても飽きないけど・・・・好きだけど、でも」 「でも?」 「――心の中も頭の中も全部、考えてることは一つだけだから・・・・・」 「・・・・・?」 声の真剣さに振り向くと、立ち止まって右腕を片手で握りしめる葉佩が居た。 「はば・・・」 き、と呼ぶ声は途中で消える。 「・・・・・・・・・・・・・怖い・・よ」 苦しそうな声にずきん、と自分の中の何かを揺さぶられるような感じがして、無意識にアロマを深く吸い込んだ。 「・・・・・・・・・・葉佩・・」 「・・・・・ごめん。意味わかんないよね・・・。でも、全部そればっかりでさ」 「葉佩・・・・」 (お前は何者なんだ?何故この学園に来たんだ?) 今更ながらの問いを、口にしかけて止める。 (・・・俺には、こいつが何であろうと・・・関係ないはずだ・・。初対面の相手だ。名前しか知らない。そんな相手に踏み込んでいって聞くのか?俺が?) ためらう皆守が何かを言う前に、葉佩は前を向いた。 「負けないよ。絶対に」 深く、強い声と、視線を上げた眼にぶつかる。 揺るぎない意思の強さがそこにあった。 「――よしッ!気合ッ!んでもってダッシュッッッ!!!」 「お、おい?」 急に走り出した葉佩に、反応が遅れる。 「待てッッ!」 「生徒会室ってここー?」 建物の塀にある裏口の前で、葉佩は暢気に声をかけてきた。 「はぁ・・・はぁ・・・お前なぁ・・・」 全速力で急に走ったせいで息を乱している自分に対して、葉佩は息を乱していない。 (・・・・こいつ見た目より体力あるのか?) 「ん?どしたの?」 不思議そうにこちらを見てくる葉佩に、先ほど感じた悲壮なものはなかった。 それに内心ほっとした自分に気付き、誤魔化すようにアロマを再び深く吸い込んだ。 「鍵かかってるよ?」 「あぁ・・中から開けて・・・」 「開けーゴマぁーッ!」 「聞けッッ!ッてか、なんだその古風な掛け声はッ!」 思わずずるっと滑りそうになりながら突っ込むと同時に、扉はゆっくり開かれた。 「あ、開いたッ!」 わーい、と手を上げて喜ぶ葉佩と、顔に手をあてて溜め息をついた皆守を交互に見て、扉を開いた《生徒会》書記の双樹咲重は面白そうにクスリと笑った。 「皆守、あなたが振りまわされるなんて・・・・面白い子ね」 「・・・・・・良いから中に入れてくれ」 「そうね、ここじゃ誰に見られるかわかったものじゃないものね」 そう言うと、葉佩を見て微笑んだ。 「フフッ。どうぞいらっしゃい・・・可愛いボウヤ」 「・・・・・」 葉佩は妖艶に笑う双樹を見たまま、動きを止めた。 (こいつも骨抜きにされるようなヤツだったか・・・) 子供だと思っていた葉佩の意外な反応に、内心どこか面白くないものを感じて眉を寄せた。 「髪の毛、すごく綺麗な色だなぁ・・・・」 「え?」 「は?」 「え、俺おかしいこと言った?」 「・・・・・・フフ。そんなことないわ、自慢の髪だもの・・・誉めてくれて嬉しいわ」 「初めてそんな色みたから・・・驚いちゃった」 (双樹を目にして、髪の色にしか眼が行かなかったのか・・・・) 双樹は髪を誉められて嬉しかったのだろう、軽やかに先導し部屋の奥へと導いた。 (双樹は男でも女でも初対面の時は必ず顔か胸しか見られないとうんざりしていたからな・・・・) 髪を大切にしていることから自慢の一つなのだろうが・・・。 (こいつ、子供かと思ってたが・・・女の扱いに慣れてるとか・・・?) 計算ずくか?天然のタラシか?と疑惑の眼差しで葉佩を見つめる。 「おまえ・・・」 「なに?」 「・・・・・いや、別に」 「ん、なんだよ?なんか・・・妙な顔してさ・・・何?」 「なにもない」 「・・・?」 首を傾げる葉佩を追い越して、中に入った。 |