叔父さんと僕(九龍編)
第2部・その4
「わぁ・・・・・おいしそー!」 すごい!すごい!おいしそう〜!台の上に、カレーが2つ、パフェが一つ、サンドイッチも一つ、乗っかっていた。 カレーが2つってのは、どうしてなんだろ・・?おかわり、かな?それともお父さんの? ぐぅきゅるる〜〜〜〜とお腹が鳴って、手で押さえる。 うー、とりあえず、食べちゃえ! 「うっんまぁ〜〜ッ!」 おいちー!やっぱカレーおいしいなぁ・・・。ここのはちょっとカレースープって感じだけど、具が大きくてボリュームあって辛さも丁度良い感じ。 あー幸せッ!やっぱり食べてるときと寝てる時って、しみじみっ!幸せだなぁ・・・。 叔父さんとも仲直り、出来たし。 遺跡に行って良いって言われたし・・・、相棒とか頼りにしてるとか、言われちゃったし。 あーだめだぁー!嬉しくて、顔がにやけてきちゃうよ! 「九龍ーーーッ!!!!お前は今日どこで何をしてきたー!」 うわっ!?な、なに?び、びっくりしたー!お父さん急に怒鳴らないでよねッ! 一体なんだよー!えっと・・・何してたって言われたのかな・・・?うーんと・・・。 「もふふふーもふっー」 「九龍、ちゃんと食って言え」 「・・・・・んと、寝てた」 「・・・・・・・寝ねてたぁ!?どこでだ!」 「公園でー。起きたらさすらいの絵描きさんが居て絵を描いてて、あいのこくはくけいかく教えてもらった」 そう言うと、お父さんと叔父さんはがっくりとしたみたい。どうしたんだろう・・・? 「お、お前な・・・・田舎じゃないんだぞ!?わかってんのか!?」 「えー・・・それくらいちゃんと判ってるよ、叔父さん」 何を言われるのかなって思ったら・・・。もうッ!そのくらいちゃんと判ってるってば! 立ってる叔父さんをじぃ〜と睨んでみると、叔父さんはちょっとびっくりした顔になってニヤァと笑った。 むぅ〜っと来て、思わずバグバグとカレーを一気に食べてしまった・・・あ・・・・・そんなー!もっと味わいたかったのに・・。叔父さんのせいだよッ!? ・・・・・もう一つあるけど・・・、おかわり、かなぁ・・・?良いかなぁ・・・。 ちょ、ちょっとだけなら、お父さん怒らないよね? 「デレデレデレデレッ!しまりないッ!」 「うぉぉぉッ!いてーッ!」 え、なに? 「・・・・?叔父さんどうしたの?」 今の「いてぇー」って言ったのかな?「くれー」にも聞こえたけど。 あ、もしかして、叔父さんもお腹が減ってるのかな?欲しいなとか思ってたから、お父さんに怒られたのかなー? これ、お父さんのかもしれないけど・・・・まぁいいか・・な?スプーンでご飯とカレーを掬って差し出した。 「叔父さんも食べる?はい、あーん」 「食べるッッ!!!!!あ、あーんv」 あはは、叔父さん、間抜け面だー!目尻が下がっててデレ〜ンってしてる。 「おいしい?」 「おいちぃぃ〜〜〜〜v」 なんかハートマークとかついてそうな感じだよ、叔父さん。でも嬉しそうで・・・・嬉しいな。おいしいでしょ?このカレー。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・九龍?お父さんにも一口貰えないか?」 「いて、いてててててッ!」 え・・・お父さん、やっぱりお腹減ってたのかな?食べちゃって悪かったかも。 「お父さんも?お腹減ってるんなら・・・少し食べたけど・・・」 ごめんね、食べ物取っちゃうの一番悪いって判ってるんだけど、お腹が減っちゃってて・・・。 おずおずと差し出すと、お父さんはやんわりと笑いながら首を振った。 「いや、それはお前のお代わりのために頼んだものだ。お腹減ってるんだろう?食べれるだけ食べなさい」 「うん!じゃぁ・・・一口、ね?はい、あーん」 「・・・・・・・・・うまいな」 「でしょでしょ?おいしーよねッ!」 えへへ、お父さん本当においしそうに食べてくれた。すごく優しいし・・・。 「あぁ・・そうだな。いっぱい食べなさい」 「はーい!」 食べていいって言われたから、バグバグっと食べるのを再開する。ん・・・?叔父さんどうかしたのかな?何か考えてるみたい。 「・・・・・・九龍・・・・、話を戻すが・・」 「え、なに?聞いてなかった」 ごめんなさい。叔父さん何か真剣に考えてるみたいだから気になって・・・。 お父さんを見ると、眉をしかめて腕組してた。あーなんか・・怖いよー! 「良いか?どこに行っても寝てしまうようなことをしていると、痛い目をみることになるぞ!?」 「えー・・・別に、今日だって絵を描いてもらっただけじゃないか・・」 痛い目なんて見てないし、人の居ないところだったから大丈夫と思うんだけどなァ・・。 いくら俺でも街中で寝たりとかしないよ? 「大丈夫だったから良いじゃないか!」 「お前は・・・ッ!」 わっ!た、叩かれそう!だけど・・。、お父さんは手を上げただけで、静かに下ろした。 うーなんか、すごく怒ってる・・・かな?どうしてー!? 「だいたい、お前には危機感というものが無いッ!」 「あ、あるよッ!罠とか見つけるの得意だしッ!」 「その危機感じゃないッ!遺跡以外での危機感だ!」 「遺跡以外で危ないことって、そんなにないっ!」 もう、わかんないよッ!なんで怒ってるのー!?一方的に言われてどんどん腹が立ってきた。 カレーを食べ終えて、お皿をどける。ふんだッ!俺だってムカッてきてるんだからね!?『どうして』だめなのかとか。『なんで』怒られなきゃならないのか、さっぱりだし! 「いいか!?今の世の中は危ないヤツだらけなんだぞ!?」 「・・・・・・・・お兄様、何故俺を指差しておられるのでしょうか?」 お父さんは叔父さんをビシッと指差して言った。 「えッ!?叔父さんって・・・ナマモノで腐っちゃうだけじゃなくて・・・危ないんだー・・・」 危ないって叔父さんみたいな人が?どうして?ねぇ、なんで? 驚いて怒ってたのがなくなって、変わりに「?」マークが見えてくるような感じ。 えっと・・・・もしかして、生ゴミをよく腐らせちゃって、変な臭い出しちゃって隣の人とかに文句言われたりとかしてたから? でもそれって別に危なくないよね・・? 『危ない』って普通どんな時に使うんだっけ・・・? えぇーと・・・、あ、体調とか具合悪いとき「危ない」って言うよね!?そういえば・・さっきも『持病の痔』がどうのこうの言ってたよね!? 「なッ!?」 すごく驚いてるけど、叔父さん・・・・恥ずかしがらないで良いよ? 「く、九龍ッ!何納得したように頷くんだ!」 「だって、叔父さん・・・・・・・・・、危ないし」 「俺のどこがー!?」 そうかぁ・・・お尻は大事だよね・・。座るのも痛いとか言うし。丸いクッションとか最近よく見かけるのは、それ防止のためとか聞いたし。 叔父さん、口をパクパクして、叫んでるけど・・・恥ずかしいんだろうなぁ・・・。 恥ずかしがらないで良いのに。それはちゃんとした病気だから・・・薬だって塗ってあげる・・・のはイヤかなぁ・・やっぱり。 「九龍・・判ってくれたか・・・。そうだ、危ないんだぞ?こんなのが、うようよしてるから、もう公園や他の場所で寝たりしたらダメだからな?」 あ、もしかして、寝てる体制が悪いと、叔父さんみたいになっちゃうよ!ってことかなー? それとも・・・痔ってもしかして・・・移るのかな・・?え、ウソー! だから新聞の広告とかで『誰にも知られないようにお薬お届けします』とか書いてあったりするのかな・・・? 「はーいッ!判りましたッ!」 うんうん。やっぱり気をつけなきゃだよねー! 叔父さんにも後で丸いクッションを買ってあげようって思ってると・・・・。 「え・・・・あぁぁああああッ!?」 叔父さんがいきなり、本当に止める暇も無いくらい、いきなり、大事に大事にだぁぁいじにッ!最後まで取っておいたパフェをガツガツと半分も食べてしまった・・・・・・。 うそぉー!? そんなぁー! そんな、そんな、酷いよッ!カレーの後すぐ食べるとカレー味だから後で飲み物飲んでゆっくり食べよって楽しみにしてたのにッ!!! 「・・・・・・・・・・・・・・キライ」 キライだッ! 叔父さんなんて、キライッ! 「おっさんキライッ!あっち行ってしっし!」 パフェ・・・・楽しみにしてたのに・・・。 もう、怒ったよー!本気で怒ったよぉー!? 一口ならわかるけど、半分以上だよ!?上のほうがクリームとかおいしくて好きなのに! 下のほうしか残ってない・・・。 怒った!すごく怒ったー! 「く、九龍・・・」 「知らないッ!」 「ごめ・・・」 「キライ」 「新しいやつ頼んでやるから・・・なッ!?」 「あっち行って!」 いくら叔父さんでも許してやんないッ!もー!腹が立つー! 慌ててる叔父さんの背中を強引に押してドアの外に押し出した。ふーんだ!謝ったって、遅いんだから! 「くろ・・・・ッ!」 何か言いかけてたけど、知らないッ!聞こえないーッ! 急いで鍵を閉める。 「追い出されちまった・・・・はは・・・」 ドア越しに聞こえて、ちょっと、胸が痛い。 ・・・・・好きだけど・・・許せないことってあるんだよ!?うん、あるんだから! 俺は怒ってるの!! パフェはせっかくお父さんが、注文してくれたのに・・・・。 酷いよ!酷過ぎるよ! 背中のドアの向こうに叔父さんが居る気配がする。 ・・・・・あ、開けないよッ!? 開けないもん、絶対、許さないもん! 「今日は一緒に寝るか?九龍・・」 いつのまにかに、お父さんが目の前に居た。腕を掴まれてドアから離されながら見上げると、どこか嬉しそうな感じだった。 ・・・・・・・・・えっと、お父さん・・・照れてない・・・?気のせい、かなぁ・・・? 「うん・・・」 眼が合うと、お父さんはすごく安心したみたいに笑ってくれた。 あ・・・うー・・・、照れちゃうかも・・・・・・・。 そういえば、お父さんと一緒に寝るのって・・・そんなにないよね・・? う〜〜〜んと小さい頃、一緒に寝てくれたけど。ここ3年くらいは記憶に無い。 ・・・・・お父さん、いつも俺のこと気にしてくれてるんだよなぁ・・・。電話とか手紙とかメールとか・・・まめにくれるし。 本当はもっと一緒に居たいんだよ・・?お父さん・・。 寝る前に歯を磨きなさいって言われてお父さんは歩いていった。 えへへ、嬉しいな・・。 俯いて、手を胸元でぎゅうと握り締めてにやけてると・・・。 「ごめんよー?九龍ちゃーん?」 はっと、振り向くと、ドアから物音がしていた。カリカリとドアを引っかく音とかドンドンって叩く音がしている。 「・・・・・・」 お、怒ってるんだよ!まだ! ・・・・お父さんの言葉が嬉しくて、すっかり忘れちゃってたけど・・・怒ってるのーッ!! 「開けてくれぇ〜」 情けない声。 ・・・・そんな大声で言ってたら、また人を呼ばれちゃうかも・・・。どうしよう・・・・。 でも・・・・・・・・でもね、あのパフェ。本当に楽しみにしてたのに。 食べ物を取っちゃうようなの一番キライだし。 楽しみにしてたんだよー?すっごく! ・・・・やっぱ、ダメッ!今日、明日は許さないもんね! 「あーけーろぉ〜」 でも気になるから、暫く叔父さんがドンドンと叩く音とか聞いてたら、ピタリとそれが止まった。 どうしたんだろう・・・?耳をすませてみると、隣部屋・・多分叔父さんの部屋の方から音がした。 ・・・・あ・・・・・・・扉が閉まる音。 お・・・・・こっちゃった・・・かなぁ・・・? 呆れちゃった、の・・・かな・・・? 「叔父さん・・・」 急に寂しくなって、苦しくなった。 また胸に何かせりあがってくる感じがして、耐える・・・。 「・・・・・きらいにならないで・・・」 どうしよう?酷いこと、しちゃった・・・? でも・・・怒ったんだから・・・。 楽しみにしてたんだから・・・。 「悪くないよね・・・?」 「お前が気に止む必要は無い」 「お父さん・・・」 いつのまにかに、お父さんが居た。ぎゅうと正面から抱きしめられて、洗面所まで連れて行かれた。 「寝る準備を済ませてきなさい。お前は疲れてるだろう・・?食べたばかりだが、もう寝なさい」 「うん・・・わかった・・」 使い捨ての歯ブラシを取り出して、歯を磨く。 うー・・・・、なんか怒ってるのと悲しいのがごちゃまぜになってて、すごく苦しい。 叔父さんを怒らすと・・・どうしてかな・・?どこか遠くに行ってしまうようで怖いんだ。 嫌われたら、どうしよう・・・って思う・・。 でも・・・パフェ・・・うー! 怒ってるの!怒ってるんだからッ! ・・・・・だけど・・・あぁもう、わかんない・・。 ぼーっとしたまま、歯を磨き終えて、お茶を注ぐ。 「・・・・おいし・・」 パフェはどうやら冷蔵庫になおされちゃったみたいで、台の上には無かった。 「狭くないか?」 「大丈夫」 お父さんは先に寝転がってて、布団の片側を持ち上げて入りやすくしてくれていた。 それを潜るようにして入り込むと、ばふっとお布団ごと抱きしめられる。 「もう寝なさい?今日は疲れただろう・・?」 「うん・・・・・・」 服にしがみついて、目を閉じると引き寄せられて顔にお父さんの胸があたる。 心臓の音が小さく聞こえて安心する。 「・・・あの甥バカがお前を嫌いになるなんてありえないから、安心しなさい」 「え・・・?」 「怒ってキライとか言うから嫌われる・・・などと思わなくていいぞ?」 どうして・・・?お父さんに何も言ってないのに。 わかって、くれるんだ・・・。 「おとうさん・・・」 「ん?どうした・・?」 優しく肩を撫でてくれる大きな手を感じる。 大丈夫だって、言ってくれてる。 すごく優しくて、労わってくれてて。 お父さんは、俺の味方なんだなーって思って・・・嬉しくなった。 「・・・・・・だいすき」 「・・・・・あぁ、お父さんも、お前のこと大好きだぞ」 えへへ、嬉しいな。 「おやすみ、おとうさん」 「あぁ・・・おやすみ、九龍」 明日になったら・・・、叔父さんと仲直りしようっと・・・。 パフェかアイスかケーキ奢ってもらって、許してあげようっと・・・・。 真夜中にトイレに行きたくなって起きた。 うー・・・・・眠い・・・。ダメだぁ・・・半分以上寝てる感じ・・・。 おトイレどこだっけ・・・?階段の近くで見たような・・・? よく寝ているお父さんを起こさないように、そっ〜っとそ〜っと・・・・外へ出た。 階段の横トイレは電気はついてるけど、少し怖い。 手を洗うところの鏡とか見られない、何か居たら怖いし・・。怖がりじゃないけど、やっぱり・・見たいものじゃないし。 夏休みとか暑い時は見るけどね、涼しくなるかもしれないし。 「うー・・・ねむい・・・・」 ダメだ。眠過ぎるー! ふらふらしながら、トイレをすませて廊下に出て部屋に戻る。 ガチャン! 「あれー・・・?」 カギ開けて出てきたのに・・・・なんで閉まってるんだろう・・・? そういえば、叔父さんに追いかけられてたときも閉まってたし。ドア閉めちゃうと自動的に鍵がかかるとかいうヤツなのかな? 「・・・・どうしよう?」 ドンドンって叩いてお父さんを起こそうかな?でもお父さんよく寝てたし・・・。 「うーん・・・・」 鍵開けちゃおうかな?ピンはたしか・・・ポケットに・・・、あった。 このくらいの鍵なら多分寝ぼけてても・・・・・ガチャガチャガチャ・・・カチャ、えへ、やったー!開いた。 「うー・・・・・・寝るー・・・ッ」 ピンをポケットに直してドアを開ける。 あれ・・?何か違う、かも・・・?まぁ良いかな・・・。 眠い。ねむいねむいねむいーッ! もうだめ、立ったまま寝ちゃいそう・・・・ふぁぁ・・・・・眠いぃ〜ッ・・・。 「へ・・・?く、九龍・・・?」 お父さん起きてたの・・・?なんか声が違う・・・ような・・・・まぁ良いか・・眠いし。 「うにゃ〜・・・ねむー・・・」 ベットに飛び乗ってお布団に潜りこむ。あ、暖かい・・・。 なんでかな・・・? さっきより、すごく安心する・・・。優しく抱きしめられて頭を撫でてくれる・・・。 暖かい大きなものに抱きつくと、ぎゅうと抱きしめ返される。 「九龍・・・・九龍・・さっきはごめんな・・・?」 遠くでそんな声が聞こえた。 ・・・・叔父さん・・・・・? うん・・・、判ってるよ、叔父さん・・・。 暖かな温もりに包まれて、意識が沈んでいく・・・。 キライなんて、ウソだよ・・・?本当はね、誰よりも、だいすき・・・。 朝。目を開けると、真っ暗だった。 あれ・・・?これ何・・・?あ、人の身体だ・・お父さん・・・・・・・あれ・・・? 「あれ〜?あれ・・・・?あれれ・・・?」 身動きして動きにくい頭を上に向けると、お父さんじゃなくて叔父さんが居た。 丁度起きたみたいで、目が合う。 「おはよう・・九龍」 「何で叔父さんがここにいるの?」 まだ夢の続きかな?とか思って辺りを見渡す。うーん・・・荷物とかないし、ここ叔父さんの部屋だよね・・? それにしても変な夢見た。 叔父さんが真っ赤な字で【愛】って書かれたパンツ履いて追いかけてくる夢。 怖かった・・・というか、気持ちが悪かった・・・?かな・・・・だって笑いながらどこまでも追いかけて来るんだもん・・・。 うーんやっぱり少し怖かったかも。昨日の追いかけっこが多分印象に残ってたんだろうな・・・あれ怖かったし。 「おはよう・・?九龍」 ん・・・?ダメだ、まだ寝ぼけてる感じ。 えーっと・・・・おはよう?あ、挨拶は大事だよね。 「・・・おはよう・・・・叔父さ・・・・じゃない・・えーと・・・知らないおっさん」 そうだった。忘れてた!怒ってたんだった。 もう・・・怒ってないけど・・、でも素直に言えない・・・恥ずかしいし。 顔を見られたくなくて、眼をそらすと・・・。 「ぐっ・・・・お、おい・・・なんだとー!?」 大声で怒鳴られてびっくりする。慌てて叔父さんを見ると、どうしよう、すごく怒ってるよ! 謝った方が良いかな・・?でも叔父さんが悪いんだし・・。 「おっさんとか言う子にはおしおきだー!」 「えッ・・・!うぎゃぁ・・・・・・あはははッ・・・や、やめてッ!」 迷ってたら、急にくすぐられ出して・・・、ぎゃーーーーーもーやめてー!!! 「おしおきですー!」 「やぁっ!あは・・・あははは・・・ッ!ごめんなさい〜!もッいやー!」 「ダメですー!うりゃうりゃぁ〜」 ホントやめてー!死んじゃうー!息ができないよー! 「あは・・あはははははッ・・・や、やめてー!」 ズッバタァァァァァァーーーーン!!!!!!!! 「――ッ!?」 「ハァハァ・・・・・・へ?」 息が乱れてて、あぁ酸欠だよー。深呼吸をして息を整えて・・・気がついた。 ギィィィィィィ・・・・・・・・・・ すごい音はともかく、今の音は扉が開いた音で。 そこに立ってたのは、お父さんだった。 「・・・・・す、清々しい朝でございますね〜お兄ちゃん・・・」 叔父さんの手が止まった今だ!早く助けて、お父さん! 「おとうさぁ〜ん・・・・・たすけてー」 「ちょ、ちょい待てッ!九龍ちゃん、俺なんもしてへんやろ!?」 「お父さん・・・叔父さんが苛めるーッ!」 手を頑張って伸ばすと、手の先にいるお父さんが頷いてくれた。 「・・・そこのバカ」 「うぉうっ!?」 「九龍を離せ?」 「へ、へいっ!」 お父さんの言葉に叔父さんは何度も頷くと、上に乗ってて重かった身体をどかしてくれた。 もうくすぐられたくないから、急いでベッドから降りると、お父さんの背中に隠れる。 ようやくホッと息をつけて安心する。だって・・・大声出されたとき、怒ってるって思って・・・びっくりしたんだもん・・。 くすぐられるのキライだって知ってるくせにするし! 肩を揉まれるだけで鳥肌立ってくすぐったくって仕方が無いのに! 引っ掻けば良かったー! 噛みつくとかすればよかったー! 叔父さん、全然反省してない!ふん!お父さんに叱られちゃえば良いんだー! 「べぇーーー!」 「ッ・・・・く、九龍・・・」 アッカンベーってすると、叔父さんが大きく瞬きした。 ふーんだ!怒ってるんだからね! 「九龍、お父さんがちゃんとお仕置きしておくから、朝ご飯を食べてなさい」 「はーい」 じぃーとにらみ合ってたら、お父さんにそんな風に言われた。 朝ご飯!?下のレストランでも良いのかな?あのね、健康的な朝ご飯!とかいうメニューが凄く好きなんだ。 お味噌汁に、生卵、ノリ、ご飯、卵焼きとかあると嬉しいな♪ よっし!食べてこよ〜っと! どうしてか壊れてるドアを苦労して開けて、出るとき叔父さんを振り返ってみた。 目が合ったんで、ふふんって笑ってやった。 俺は朝ご飯を食べて来るんだよー!良いでしょ?叔父さんは、お父さんにお説教されちゃいなさいー!ということで、バイバイ! スキップするような感じで階段を駆け下りて、レストランを目指した。 「あーおいしかった〜!もうお腹いっぱい!」 「もっと食わんと大きくなれんぞー坊や」 「そうそう、九龍ちゃんってちょっと痩せすぎかも?おねーさん、お菓子買ってあげようか?」 「おばさんがお土産に何か買ってあげるよ!」 「じいちゃんも買ってあげるぞぃ」 あはは、凄いなぁ・・・。 丁度同じ時間に朝ご飯を食べに来てた、お風呂で一緒になったおじいちゃん達と昨日の騒ぎのときに居たおばさん達と、おねーさん達に何故か名前を聞かれたり話しかけられたりして楽しくご飯を食べ終えて、今から戻るところなんだけど。 何人居るんだろう?おじいちゃん集団が・・わー・・・多過ぎて数えるのも大変そう!20人は居るし、おばさんも5、6人居るし、おねーさんは3人だけど・・、人いっぱい!皆一斉に声かけてくるから頷くだけで大変。 子供が珍しいのかなー?そういえば、ここに泊まってる人って年のいった人しか居なかったような・・? 「ほれ、じーちゃんが小遣いをあげよう・・お菓子でも食べなさい」 「えっ、そんな、貰えない・・・です」 知らない人からお金とか貰ったら怒られちゃうよ! 「坊主、わし等は孤独な爺集団じゃて、孫を可愛がる気分を味わせてくれんかね?」 「え・・・・でも・・・お金とか、貰うと・・怒られちゃう・・」 本当は怒られないんだけど、叔父さんが・・・・、後で張り合ってお小遣いをもういらないッ!てくらいに持ってくるようになるから、ダメー!受け取れないよ〜!それにお金あっても、そんなに欲しいものとかないしなぁ・・・。叔父さんに隠れてジャージを買うくらいかな・・・? 困って、ぶんぶんと頭を振るけど、おじいちゃん達が強引にポケットとか手にお金を押しつけてきた。 あーうー!困るよぉ〜! 「あら、それならおばさんも・・・坊や、子供は遠慮するものじゃないですよ、貰っておきなさい」 「ほ、ホントに貰えないんです〜!」 「最近の子供なのに、遠慮深いのね・・おばさんの息子にも見習わせたいわー」 うぅ、どうしよう?結構大金だよぉ・・・。困るよー!どうしよう・・・? 貰ってしまったのを強引に返しちゃうと、気持ちまで突っ返したみたいになっちゃうと思うし・・・。 「坊や、何か欲しいものがあったら買ってあげるわよ?」 声をかけられて、見渡すといつのまにかにお土産売り場だった。 あ・・・・・・、そうだ! 「あ、あの・・・」 「なぁに?九龍ちゃん」 「ちょっと待っててくださいッ!」 「え、あ・・・九龍ちゃん?」 おばさんに声をかけられたけど、ごめんなさい、今ちょっと取り込み中なの! 走ってお土産売り場のお姉さんに声をかける。 「おはようございますー!あ、あのっ!」 「いらっしゃいませー!何かご用でしょうか?」 「あの人達にお土産を渡したいんだけど、何が良いか判らないから・・・お願い、一緒に考えてー!」 一生懸命というか、もうあわあわして大変!本当にお願いしますー!助けてー! 売り場のおねーさんは、俺の後ろに居る団体さんたちを見て驚いた後、優しく笑って頷いてくれた。良い人だ、ありがとう〜! 「・・・・えっと、あのぉ・・・・これ、どうぞ・・」 貰ったお金で、お土産を買って配ると、皆一斉にポカンとした顔になった。 うぅ、やっぱりまずかったかなぁ・・・・? 「あの・・・、せっかく会えたんだし・・その思い出に・・・」 ちゃんと1人1人、顔を見て選んだんだけどなァ・・ダメだったかな? おじいちゃん達には、この地方の特産物とかいう木で作られた可愛い感じの置物をプレゼントした。 おばさん達は、ここの名前と絵がプリントされたタオルと綺麗なしおりをセットにしてプレゼント。おねーさんたちのが一番困った・・、ネックレスとか考えたけど・・・水に入ったビーズの入れ物がついてる綺麗でなんか可愛い置物と、絵葉書を一緒にしてみた。 包装するのが大変で、他のお店の人達に悪いコトしたかも・・。 一緒に選んでくれたおねーさんにも、後で御礼しなきゃ・・。 「・・・えっと、すごく嬉しかったから・・・ご飯おいしく食べれたから・・」 だから貰ってね!って笑うと・・・・あれ・・・?なんで皆顔赤くしてるんだろう・・・? 「わっ!」 急におばさんにぎゅうとされて、おねーさんに頭を撫でられた。はいぃ・・?あの・・・?ポケーと見てたら、おじいちゃん集団に揉みくちゃにされてしまった。あうー。なんかいっぱい叔父さんがいるみたいに、ぎゅうーとされて苦しい。 「あぁもう、可愛い子だー!」 叔父さん大量発生みたいな感じになってきたよ・・可愛い可愛い可愛い可愛い言われて、複雑。 髪の毛とかくしゃくしゃになった後、皆がジュースやお菓子を押しつけられて、名残惜しそうに皆帰っていった。そろそろ帰りのバスが出るとか言う話だった。同じツアーの人達らしい・・。 台風みたいだったけど、皆優しい人達で、本当に嬉しかったんだ・・・。えへへ、楽しかった。 「あら?もういいの?キミは自分のお土産は選ばないの?」 「え・・・?」 「この辺りは観光の名所としては割と有名だから、記念に何かどうかしら?」 「えっと、じゃぁ選んでみます」 うん、このおねーさんにもお世話になったし、他の人達にも朝っぱらから大変なお仕事させちゃったし。 何が良いかな?お礼・・。お金はさっき貰ったお小遣いとお父さんから貰ってるのがあるから大丈夫だし・・・。 おねーさん達には、このお土産のお饅頭とかで良いかな?休んでるときに摘めて良いかもだし。 叔父さんとお父さんにも買って行きたいなァ・・・・。 何が良いかなァ?うーんうーんうーん・・・悩む! あ・・・・・なんか地名のはいったお腹に巻くやつ、あったよね?おじいちゃん達にどうかなーって言ったら数がないからといわれて止めたやつ。 えっと・・・・・あ、あったー!これこれ。色は2種類しかないんだよね・・。薄いオレンジ色と紺色。 「これをお父さんに、こっちお母さんに上げようかな?」 うん。お母さんの居るエジプトは夜すごく寒いって言うし。長いこと会ってないんだよな・・・会いたいなァ・・・。 『アツアツ腹巻』とか書かれてるのを手にとって、叔父さんに渡すのを考える。 叔父さんは何でも喜ぶんだよね・・・。修学旅行とかで渡した物とか綺麗に保存されてたりするし。 うーん・・・・・あ、これどうかな?手に取るとチリンって涼しい音がする・・・小さくて可愛い鈴のついたキーホルダー。可愛いような可愛くないような狸がついてる・・・あ、ふわふわしてるー!手触りがいい感じ!これにしよっと! それにこれ持ってると、鈴の音がするから、叔父さんが急に近づいてきても驚かないですみそうだし! 「すいません、これお願いしますー!」 「はい、ありがとうございます!」 |