「九龍ーーーーッ!!!」 俺は九龍の姿を見つけた瞬間、年甲斐もなく叫んでた。 九龍は暗い路地裏に押し込められて、その前を塞ぐように柄の悪い高校生達が立っていた。 「お、俺の九龍に何しやがるッッッ!!!どきやがれーーーっ!!!!!」 俺と可愛い可愛い可愛い甥っ子との間に立ちふさがっていたヤツを容赦なく蹴り、殴り倒し、九龍の元まで走り抜けると容赦なく抱きしめた。 勢いのまま頬擦りをしてやると、その感触がキライな九龍は嫌がって引き離そうと暴れ出した。 「もーーーっ!じょりじょりするからイヤだってばっ!」 「九龍、九龍、無事か!?怪我してないか?・・・・・・・・・1ミリでも怪我してたら、お前ら・・・・むしるぞ?」 前半は九龍へ、後半は背後で動揺している高校生に言う。 俺の殺意を受けてガキどもは、後退りした。 「怪我??してないけど・・?み、道聞いてただけだし?」 「・・・・・・・お前なぁぁ・・・・」 この子のこの鈍さは何なんだろうな。呆れて身体中の力が抜けてきたぜ。あぁ脱力・・。 「・・・・お、おいッ!そこのおっさん!てめーでいいぜ?出すもん出せよッ!」 「また言うし。出すもんってなんだよ?」 「九龍、お前はちょっと黙ってなさい」 話の通じていない九龍を強引に背後に押しやって、俺はガキどもと向き合った。 俺と向き合って逃げ出さない心意気だけは買ってやるが、俺の可愛い可愛い可愛い九龍をこんな汚ねぇところに連れ込んだ罪は重いぞ? 「・・・そうかそうか、そんなに出すものが欲しいのか?じゃぁ、くれてやるぜ・・・ッ!!!」 瞬殺、いや、殺してない殺してない。 だが、あっという間に全員叩きのめした俺は、リーダー格の男の背中を踏みながら言ってやった。 「・・・・いいか?今後、俺の九龍に手ェ出してみろ?地獄の3番街を見ることになるぞ?」 「は・・・はいぃ・・・・もーしませぇん・・・」 がくりと、気絶した不良を放置して、くるりとふり帰る。九龍は不機嫌そうな面をして俺を睨んでいた。 「・・・俺は悪くないもんッ!!おっさんが迎えに来ないから悪いんだッ!」 「確かに迎えを俺とした事がうっかり忘れてたさ・・・すまねぇな・・・」 この俺が九龍との約束を忘れるとは・・・あぁ、話に夢中だったんだよッ!もうな、俺のメモリアルフル回転全開だったようなもんだからなぁ・・・。 あぁ、俺は俺を殴りたいッッ!!! ごめんな、ごめんな、マイラブハニィー!ぷんすかしてるお前も可愛いぜ・・。 「・・・って・・・おっさん!!また話聞いてないし!!!ばかばかばかッ!」 「あいててて、ははは、やめろよ、くろう〜」 ポカスカ叩いてきた腕を捕まえて抱き寄せてやると、動きを止める。 「悪かったな・・・でもな、こんな変な団体さんについていったらダメだからな?」 「・・・・変なって言われても、わかんないよッ!」 「そうだなぁ・・・・あぁ、とりあえず、高校生でタバコの匂いがするやつはダメだ」 「そっかーわかった・・・・」 頷いた九龍の旋毛を見下ろして、ふと気づく。 「お前、泣いてた・・のか?も、ももも、もしかして・・・泣かされたのか!?」 目尻が、赤くなっている。のぞきこむと、少し潤んだ目が逸らされた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・むしる」 「ぎゃ、ぎゃぁぁ!?」 気絶したフリの不良が叫んで、逃げようと地面を這いずる。 それを捕獲して、学生服を剥ぎ取ろうとすると、不良達から悲鳴が上がるが、無視だ、無視!! 俺の可愛い可愛い九龍を、な、泣かせるとはッッ!!! てか、泣き顔を見た時点で有罪だ!!! 「・・九龍の前じゃなかったら、てめぇら、ドラム缶に詰めて筑後川に流してやるとこだぜッ!!!」 筑後川はさすがにローカル過ぎか? だがな、あそこは農業用水にされるから、肥料になるんだよ。 東京湾のヘドロに沈むよりは、マシだろ? 「叔父さんッ!」 「なんだ九龍〜!」 可愛い声に動きを止める。まだ声変わりしてない声は、高くて可愛らしい。 声変わりして野太くなっても、俺の愛はかわらねェけどな! 「泣いてたの・・・違うから・・・その人達のせいじゃないから」 「そうなのか・・?本当か?」 「うん・・だから、放してやって」 あぁッ!なんつー優しい子なんだ!おい!見てみろ!これが天使だぞ!? いや、やっぱ見るな、減る。 「おぉ!お前が言うならな!・・・ほれッ!さっさと消えろッ!いいか?俺の九龍に今度絡んだら、おじさん本気出しちゃうからな〜?」 「ひぃぃぃぃー!!!!」 逃げていく軍団を鼻で笑って見送って、振り向いた。 ポロポロと泣き出した九龍を見つけて、凄まじく驚いた。 「どどどどどどッッ!?どうした!?どこか痛いのか?怪我してたのか?あいつらに、何かされたのか!?」 「ひっく・・・・・」 「あぁぁッ!どうしたんだよ〜〜〜!」 「う〜〜〜う〜〜〜」 マジでマジでマジでどうしたんだ!?何かされてたのか!?だったら後であいつら見つけ出してお仕置きだッ! あぁでもその前に、こんな顔した九龍を放って置けるわけがない。 そっと腕を伸ばして、ぎゅっとしてやる。 「あぁ・・・・ヨシヨシ・・・な?大丈夫だから、落ちつけ・・」 頭を優しく撫でてやると、少し落ちついたのか、瞬きをして眼をこすっている。 泣いてると本当、可愛らしい・・・、いやいやいやいやッ・・・胸が苦しくなるぜ。 出来ればずっと見ていたい・・・いやいやいやいやいやいやッ・・・・その笑って欲しいというか。 あぁそうだよッ!俺は九龍が泣いてても笑ってても可愛くて好きなんだよ!愛だ、愛ッ!!! 「叔父さんが・・・・・」 小さな声で呟かれた、あ?俺が・・?俺が泣かした・・・のか!? 「ん?いいから言ってみろ?」 内心動揺しながら言ってみる。優しく、優しく・・・・。 「叔父さんが・・・・居なかったから・・・」 「うん・・・うん」 「こ・・・こわくて・・・・」 「すまねぇ・・」 「・・・・電話したけど、出ないし・・・・・ひっく・・」 「電話は・・・あぁ・・・・車に置きっぱなしだ・・・」 メールはH.A.N.Tに転送されるから、メールだけ届いたわけか・・・。しまった、俺とした事がッッ!!! 「なにしてんだよっ・・・・」 「悪かった・・・・ごめんな?九龍・・」 「ばか・・・・ばかばかっ・・・・・・・怖かったんだからな・・・・」 「不安になっちまったのか・・・?ごめんな・・・」 本当にすまん。悪かった。あぁ、俺は俺をぼこぼこに殴りたいッ!お前のオヤジに殴ってくれと志願するか・・?いや、本気で半殺しにされそうだからやめておこう・・・・、あいつは俺が九龍とベッタリなのが気に食わないらしいしな。H.A.N.Tに死亡を確認されかねない。 九龍の止まらない涙を、指先で拭ってやると、九龍は俺を見上げて可愛らしく微笑んだ。 「うっ・・・・・」 な、なんて可愛い顔をするんだ、泣き笑いだと!?泣き笑いだとォォォォ!? いや・・・前も見たことがあるけどよ、でもよ・・・なんだよ・・・可愛すぎるぜ・・。 俺の心臓がヤバイ。救心だ、救心!救心くれッッ!!! 「・・・・?どうしたの?叔父さん・・」 「いや・・・持病の水虫がなぁ・・・・」 俺が誤魔化すように言うと、九龍は何を思ったのか。 その瞬間大輪の花が咲き誇るように、笑った。 周囲に花が舞い散ってるぞ、おいおい。ちょ、カメラ!カメラないか!?ないのか!? あーーーッ!畜生、俺の心のメモリアルに保存だ保存!永久保存! 「――ッッッ!!!!九龍ッ!」 ぎゅっと抱きしめて、その頭にすりすりと頬擦りした。 可愛すぎる。あぁもうなんだ?嫁にも婿にも出したくねぇ・・・ッ! 「くるしいよ〜〜」 「あ、あぁ・・すまねぇ・・・でも・・・・・・くっ」 来るしくったって、悲しくったって・・・我慢してくれ。 俺はもう離したくないぞぉぉぉぉぉー!俺から離れるな、本当に。まだ、どこにも行かないでくれ。 そのうちマジで、鬼でも攫いに来るんじゃないだろうな・・?なんか、心配でたまらない。 どんどん大きくなる九龍に、内心焦りを感じている。 あれかなー将来「叔父さんうざい」とか言われちゃったりするのかなー。 言われたら、俺はきっと泣くな。マジ泣きするぞ?泣いちゃうぞ? 俺から手放すことはないだろうな・・、この子が離れていくときが、俺の最後の日かもしれない。 優しく撫でてやると、ふと九龍の様子がまたおかしいことに気づく。 俺は九龍の顔を見なくても、どんな様子かわかるくらい、九龍マニアだ! ちなみにどこかに行ってしまっても、探り出せる自信がある。 それにしても九龍の様子はこの所ずっと変だと思っていたが・・。 「・・・・ッ!」 九龍がしがみ付いてきた。ぎゅっと抱きつかれて、その顔は隠される。 「・・・・あのね・・・叔父さん・・・」 何て暗い声だ。きっと見えない可愛い顔も、同じくらい曇ってそうだ。 さっきまでのお花はどこ消えたんだ!!! いかん、いかんです。これはいかんです。 叔父さんは、お前のお花が舞い散る笑顔をもう一度どころか何度も見たい! お前のあれは秘宝だ秘宝!国宝だ!てか、俺の宝だ! 俺はトレジャーハンターの意地にかけて、お前の笑顔を取り戻すぞッッ! わずか0.1秒で俺の決意は固まった。 何気ない様子で、九龍の言葉を促してやる。 「・・ん?どうした?」 「なんでさ・・・聞かないの・・・?知ってるから・・?」 何をだ・・?もしかして、好きなやつでも出来たとか・・・じゃないだろうな!?「叔父さんウザイ」に近づいたのか!? と錯乱しかけて気づく。 あぁ、そういえば、試験だったな・・・ハンターの。 「あ?何の事だ・・・・・・・あぁ、試験のことか・・・?」 「うん・・知ってる・・の?」 やたらと顔色のドス黒い試験管の事か?ヤツがヅラなだということなら、15年前から知ってるぞ? 「何をだ?」 「・・・・・・・・・・・・・・試験の結果・・」 「知らねぇよ。お前が言わなかったから聞かなかっただけだ」 本当に知らなかったんだが・・・というか、悪いな九龍・・・お前がハンターにならない方が俺としては良いんだよ・・・。 ハンターになって、俺の知らねぇバディとどこかの遺跡に行っちまうお前を、俺は想像したくないんだよ。 ハンターになっても俺と組んで行けるが、それより離れ離れになる可能性のほうが高いんだぞ・・。 それに知らねぇバディと二人きりで、どこかの遺跡とか行かせたくない。 もしそうなったら、行くのを邪魔してしまうだろうな・・・俺は・・。 んでもって「叔父さんウザイ〜!」とか言われるんだろうか・・・。 泣く、泣くッ!泣くぞッ!? 「ごめん・・・・なさい・・」 ――ッ!?お、お前が泣いてどうするんだ! ここは俺が泣く場面だろ!? 「お、おいっ!?」 慌てて九龍の顔を上げさせる。 「――ッ!!」 泣いてる顔もまた可愛い・・・・とかじゃなくッ!違うだろ、俺ッ! さっきの泣き顔とまた違った表情で、心配になりながら心のメモリーに保存した。 何て言うか、切な系? さっきのが可愛いらしい泣き顔だとすると、こっちのこれは・・、胸に来るというか・・・切ねェんだよ!! いつの間にこんな表情できるようになったんだ・・・。 ますます、危ない。なんだか知らないが『鬼』に注意したほうがいい気がしてならない。 鬼対策は後日やるとしてだ、九龍・・・何を思い悩んでるんだ? 試験か!?試験なのか!? ヅラの野郎がなんかしたのか!? 俺の勘が「した」と感じる。後で乗り込むか・・・。 「ごめん・・・俺本当にダメだよね・・・また落ちちゃっ・・・・・た」 ボロボロと涙をこぼす九龍は、俯いてしゃっくりを上げた。 「・・・・うっうぅ・・・」 まるで、行かないで、と言うようにしがみ付かれて俺は盛大に困った。 何となく、判ってきた。 九龍は、不安に思ってる・・・のかもしれない。 俺が不安に思ってるのと同じように。 そうであって欲しいと思う俺の欲かもしれねぇが・・・。 「九龍・・・・・良いから、抑えなくて良いから。泣いて良いぞ?立ってるとキツイだろ?」 素早く片腕で上着を脱いで九龍の下に敷く。 言われたままに、座り込もうとして九龍は上着に気づいた。 「よっ・・・よごれ・・・る」 「あー良いんだよッ!お前が汚れるよりは何千倍もマシだ!」 ぐいっと、抑えつけて座らせる。 秋口の夜は寒いから、本当は着せてやりたいところだが・・。 九龍の肩を抱き寄せて暖めてやる。 そしてゆっくり口を開いた。 出来るだけ判りやすい言葉を選んで、ゆっくりと、言い聞かせる。 「九龍、俺もな?・・・試験には3度落ちたぞ」 そう言うと九龍は、ポヤンとした眼を、驚きに見開いた。 あ、その顔も可愛い・・・メモリーメモリィーッ! 「・・・・・そうなんだ・・・・?」 「あぁ・・・車の免許もな、そっちは4回は落ちたな。バイクの試験なんか、5回だ」 お?よしよし、涙が止まったな? 完璧だった叔父さんの赤裸々な過去に驚いたか? お前のためなら、叔父さんは恥かしくもなんともないぞ!? 「試験ってもんはな・・・車もバイクもそうだったが、ハンター試験もだ、試験管次第で落とされたりもする・・・まぁ、審査するヤツが人間だから仕方がないことなんだけどな」 あぁ・・・覚えてるぜぇ・・。俺のバイクの試験の時の試験管は女好きでな、男には辛い点しかつけなかったんだぞ!? まぁ今は試験方法がどうかはしらねェけどな。 「うん」 「不合格になると、誰だってな、悔しいんだよ」 「うん・・・・」 そうなんだよな・・世間の風は冷たいし、自分自身が情けなくて溜まらねぇし。 「辛いし、悲しいし、落ち込むしな?」 「・・・・叔父さんも・・・?」 「あぁ、凹んだな!3日くらいふて寝したこともあるぞ」 お前のオヤジに「邪魔だ粗大ゴミ」とか言われるくらい、落ち込んだぞ!? 「・・・・ウソみたい・・・」 「おいおい、俺はお前にはウソはつかないぞー?他のやつにはウソつくけどな!」 あ、でもいくつかウソついたことあるかもしれねぇな・・。 九龍に、男の子の着る服だとウソついて女の子の服を着せてみたり。九龍が嫌がって消してッ!とか言ってた演劇会とかのビデオテープは消したフリして保存版まで増やして持ってるし。 写真とかも残らず持ってるしなぁ・・。 背中を撫でてやっていた手を、肩に滑らせる。 ポンポンと軽く叩いてやって、顔を覗き込んだ。 俺と目が合うと、安心した無防備な顔して、笑った。 ・・・・・・・・・・・かわいいぃぃぃぃぃー!!! ヤバイ、今にやけたぞ!?可愛さをダイレクトに見ちゃったぞ!? 「だ・・・っからな、落ちても悲観することはないぞ?落ちたら這い上がれば良いんだ」 思わず台詞を噛んだ。いかん。可愛すぎだ。 動揺していると、九龍は、呟く様に繰り返した。 真剣な表情を見て、俺も気を引き締める。とりあえずさっきのは、なしだ、なし! 「はいあがる・・・」 「悔しいとか、そんな気持ちは大事にしろ、それがな?お前の原動力になる」 「げんどうりょく?」 「そうだなぁ・・・『力』とか『強さ』だな。悔しい、とか、そーゆーのをだ、見ていやがれこの野郎ー!と、立ちあがる強さだ」 「強さ・・・」 「自分を惨めに思ったり、ダメな人間だとか思って落ち込むより、それをバネに這いあがったほうが、時間も得だ」 しょげてふね寝して粗大ゴミ扱いされてるよりは、失敗したことで見えたものを考えて、自分に物にして、どうすれば上に行けるかを考えたほうがお得だ。 自分をダメだと、貶して自分で自分に見切りをつけてしまうのは、容易い。 それから元に戻るのは非常に難しい。 俺は、お前に救われたけどな・・・九龍。お前の小さな手に俺は救われた。 「九龍・・・これだけは忘れるなよ。何事も、無駄なものなんてないんだからな」 「無駄なもの・・・」 「あぁ、すべての経験は・・・・どんなちいせぇ事でもな、それから成り立ってるんだよ。それの繰り返して、人間は猿から進化したんだぜ?」 「叔父さんは・・・」 「なんだ?」 「凄い人なんだ・・・」 バカだな、九龍。凄いのはお前なんだぞ? お前が小さい頃から普通に持っている人への労わりの心は、と〜〜〜っても貴重なんだぞ!? 俺はお前の、その優しさだけはなくしちゃいけねぇと、大事に大事に育ててきた。 俺はお前が居なかったらなぁ・・・ きっと今も暗い道を荒んで走ってただろうな・・・。 「あ?すごくないぞ??それに俺は「凄い人」より、「格好いい叔父さん」って呼ばれたいなぁ・・・?」 とりあえず茶目っ気を出して言うと、九龍は素直に頷いた。 「うん、とっても格好いいよ!」 「くッ・・・・・・・・・可愛い可愛いかーわーいぃぃぃー!!!」 「わわわわッ!」 マジ、可愛いッッ! あぁしかし、少し元気でたみたいだな?良かったぜ・・。 ぎゅっと抱きかかえる。お、少し重くなったか? 絶賛成長中かぁ・・・あぁ、いつまでも子供で居てくれと思っちまう。 そう思いながら、これだけは言っておかないとと、九龍に言い含めるように言う。 「・・・九龍・・・・頼むから、一人で思い悩むなよな・・・?叔父さんは呼べばすぐ来るからな!?」 「・・・本当に・・?本当に、良いの・・?」 「何を今更ッ!お前なぁ・・・・、俺がお前のことを迷惑とか、重荷とか、思うことがあると思うかッッ!?」 「・・・・・・・・うん・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 お、おいおいおいおいおいおいおいおーーーーーーーい!? ちょ、ちょっと待てィィィィッ!ちょっと、待て? 九龍・・・お前・・・・俺がいつどこで何時何分何秒地球が何回回ったときに、そんなことを言ったんだ!?言ってみろッッ!! これは怒れば良いのか?それとも、泣くか?俺泣くぞ?泣いちゃうぞ? いや、待て。怒るとまた九龍が泣く。 ここは俺が泣いとくか・・・?いや、それをすると九龍が気にして泣く。 あぁ・・・どうすりゃいいんだ・・!? 思わず脱力して、九龍にもたれ掛った。 「お、叔父さ・・・・・叔父さん!?」 九龍が慌てて支えてくれる。 けどな・・・九龍、叔父さん、ショック死するぞ・・・?なんで、俺の溢れてこぼれそうな愛情が伝わってないんだ!? ちょ、ちょっと待て!なんでお前逃げようとするんだ! 俺は立ちあがりかけ、どこかに行こうとする九龍を強引に引き寄せた。 勢いのまま九龍は俺の膝の上に落ちてきた。 その顔を両手で掴んで、目を見ながら少し大声で言ってやる! 「九龍・・・お前は・・・お前はッッ!!!あーもう、九龍、良いか、よぉぉぉぉぉく聞けよ?」 「うん・・・」 「俺はお前を全身全力全魂で、愛してる」 そう力強く言うと、九龍は眼を少し見開いて、瞬間頬を染めて、爆弾を投下してきた。 「うん、俺も・・叔父さんのこと、愛してます」 「ぎょひぇあーーーーーー!?」 ぎゃうひゃひよぅあー!? ちょ・・・・・・・ちょっ、ちょいとッ!今この子何て言いました!? あいしてる!?あいしてるといいましたかしら!? え・・・・・・?えぇぇえええ!?もももももも・・・・・もしや両思いか!? ヤバイ、俺の耳がどこかで鳴り響くリーンゴーンとかいう、教会の鐘の音をキャッチしたぜ! 幻聴か!?てか、どうする・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式はやっぱ洋式だろ!?お前が嫌なら俺がドレス着てやるぞ。 お前のほうが絶対似合うと思うんだけどな、家はやっぱ、白い家だろ!?新築しような? 料理も洗濯も任せとけ!お前に苦労はかけさせねぇ。 でもって、お手繋いでチャーミーグリー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん? って、ちょっと待て、俺。 待て待て待て、俺。 そこで暴走してる俺ー!とまりなさーーーい! 何をナチュラルに結婚生活を夢見てんだ、俺!俺にもそんな願望があったのか・・・とか遠い眼をしている場合じゃなくてな!? 「叔父さん・・・・?」 いやまて、九龍。叔父さん今、いっぱいいっぱいいっぱいなの! 声もでねぇよ! い、いい・・・・・いいかいいかいいか・・・・落ちつけ落ちつくんだ、葉佩小五郎。 目の前に居るのは誰よりも何よりも、俺にとっては最も大事な甥っ子だ。 愛して止まない子だ。 決して変な妙なアレはないはず、だよな!?俺! ないよな、ないない。そんなことしたら俺は・・・・・・・・俺を許せないな。 俺の愛はそんな邪な欲望は一切ない、混じりっ気なしの純度100%の愛だぞ!!! 「九龍・・・・・」 「叔父さん・・・?」 九龍ちゃん?なんでそんなに、切なそうな顔をしてるのかな・・・・? そして俺の手はなんで、九龍の手を握り締めてるのかな・・・・? なんか、このポーズはあれだ、「結婚しよう」とか言い出しかねないアレだ。この手の甲に口付けしたら、完璧だな!ってどこのハーレクインだ!!! 「――ッ!!」 ビュッと風を切る鋭い音に、俺は反射的に九龍を抱き込んで右に避けた。 ビシッ!!!と音がして、壁に何かがめり込んだ。 人の、足だった。 |