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雷雨の下で(FF10)

重苦しい雨雲の空を短い間隔で稲光が走り、空を一瞬明るく染め、激しい音を立てては避雷針の塔に落ちる。
雷平原。1年中雷が鳴り響く場所。
行き来する旅人達は、隙を見て避雷針の塔から塔へ移動する。
雷に当たれば、無事で済むわけもなく。
誰もが言葉少なに、先を急ぐ。

長い街道の脇に立つ、他の避雷塔よりも大きな塔には、召喚士ユウナ一行は雨宿りをしていた。
「しっかし暇だよなぁ〜」
ティーダが先ほどから強くなった止む気配のない雨を見ながら呟いた。
応じるものは居なかった。誰もが言葉なに、空を見ていたり、風景を眺めていたり。
(ノリが悪いよなぁ〜)
ユウナの衝撃的な決意を聞かされてから、誰も口を開かない。
先に進む前に、出来る限り戦力をアップさせておこう提案した時も誰も何も言わなかった。
反論の言葉も肯定の言葉も。
あの雷嫌いのリュックすら、何も言わなかった。
険悪な雰囲気、ではないのだ。
自分も含めてだが、戸惑っている。そんな雰囲気。だから誰もが何も言わない。何も言わないで心の中の整理をしているようだ。
それはティーダもそうなので、よく判るのだが。
(俺だけか?しゃべらないから余計モヤモヤしてるのって)
子供の頃から感情を素直に出して来たから、返って心に溜め込む方が苦痛を感じる。
ワー!!!と叫んですっきりした方が心地よい。
今は叫びたいわけではなかったが。皆と会話をしたかった。
「なぁ?ワッ・・」
隣に座っているワッカに話しかけようとして、止めた。
ワッカは遠くを睨むように見ていた。何を考えているのか、普段の気さくな雰囲気もない。
ティーダは言葉を飲むと、俯いた。自分が考えなしの子供に思えて。
(・・ワッカやルールー、キマリにとっては・・ユウナは妹みたいなものなんだよな・・)
内心複雑だろう。どれだけユウナを大事に想っているかだなんて、少しの間一緒に居ただけで判った。

「・・・・暇、だな」

「え?」
近くで声がして、顔を上げ声の方を向くとアーロンがすぐ傍らに立っていた。
「暇だ」
繰り返すと、その場に腰を下ろした。持っていた大剣を地に刺して。
「・・・」
「どうした。いつも無駄にうるさい奴が」
「嫌味っすか」
「真実を言ったまでだ」
「それが嫌味って言うんだって」
「ふっ」
「まぁ〜た鼻で笑う・・・それすんげ、腹立つんだけど」
隣に座ったアーロンを下から覗き込むように睨む。
「嫌味か」
「真実を言ったまでっす」
「真似するな」
「ふっ」
「・・・・・・」
「あ、嘘嘘。冗談だってば」
「・・・・」
「怒るなよ〜大人気ない」
「どうせ俺は”おっさん”だからな・・」
「あんたって、実は根に持つタイプ?」
「今更か」
「勿論知ってたッス!」
そう言うと。お決まりのガッツポーズ。
口でアーロンに勝つことはそんなにない。いつも返り討ちに合う。
だから、こんな風に軽口が成功して嬉しくて、してやったりと笑みが漏れた。
「・・・やっと・・・な」
アーロンはその顔を見ると、サングラスの影でわずかに目を細めた。
「え?」
「・・・」
ティーダは目を丸くした。小さく聞こえた言葉に驚いて。
周りには聞こえなかっただろう、それ程小さな声だった。
『やっと、笑ったな』
確かにそう聞こえた。
確かにアーロンの言うとおり、話すことが楽しくてついつい笑っていたけれど。
不意打ちのように言われると、妙に照れる。
この養い親の気遣いは、いつもさりげなくてとても優しい。
10年間一緒に暮らしていたときもそうだった。
初めて会った時からずっと。さりげない思い遣りに何度も助けられてきた。
スピラに来てからずっと距離を感じていた。突き放されている、そう感じていた。
(だけど判っていた)
それがワザとだと言う事を。
ザナルカンドと違い、魔物は頻繁に現れ、命の危険と隣り合わせ。
『守られていた』ティーダには、立ち向かう力はないに等しかった。
だから突き放した。ティーダ自身が、立ち向かう力を覚悟を持たせるために。
甘えさせれば、ティーダの為にはならない。
他のガードの手前、というものもあるのだろうけれど。
(あんたって・・不器用だよな)
今だって。自分が自己嫌悪と不安の溝に落ちそうになっていたのを感じて来てくれたように思う。
突き放している癖に、一番危うい時に近くに居てくれる。
さりげない不器用な優しさに、ティーダは笑い出した。嬉しくて。
「あぁぁもー!!雷鳴ってるのに何がそんなに楽しんだよー!」
「うげっ」
背後から首をしめられた。手加減のない絞めに息が詰まる。
絞めているのは雷嫌いのリュックだった。
「死ぬぞ?」
(おっさん、状況説明してないで助けろよ〜!!)
「大丈夫だいじょーぶ!!フェニックスの尾もレイズもあるし!」
(そんな問題じゃなーい!!)
「ぐ、ぐるじ・・」
じたばた暴れても、無駄に苦しくなるだけで外れる気配はなかった。
(死ぬって!!)
何故だか恨みの篭った絞めに、気が遠くなる・・寸前、雨宿りをしている避雷塔に轟音とともに雷が落ちた。
「ぎゃぁぁー!!!」
瞬間開放されてるが、耳元で絶叫されてキーンと耳鳴りがした。
「・・・っー・・・リュック・・耳元で叫ばないで欲しいっす・・」
横目で養い親を見ると、同じように顔をしかめていた。
「う〜〜だってー」
「だって、じゃない。死ぬかと思ったっす!」
「う〜〜だってー」
「うるさくて適わんな」
アーロンはそう言うと、立ちあがり様に地面に突き刺してあった剣を引きぬくと、見まわりに行って来る、と言い捨てて行ってしまった。
「あーほら、リュックのせいでおっさん逃げちまったじゃないっすか」
「う〜〜」
ティーダの言葉に頭を抱えると、肩を落とした。近くで雷がなるたびに怯えたように身をすくめている。
「まぁ・・おっさんと話すより女の子と話してた方が華やかで好きだけどさ」
言いすぎたかな?とその様子を見ながら思い、慌ててフォローを入れる。
「そう?チイ、おっさんと話してる時何か楽しそうだよ?」
「チイ?あ、君、か・・・・って、そんなことないって」
「そうかなぁ〜〜」
「そうっす!」
「うーん。おっさんと君って、何時から知り合いなの?」
「え?あぁ。リュックはまだ知らなかったっけ・・。あのおっさん俺の育ての親っていうか・・養い親みたいなもん」
(みたいじゃなくて、そのまんまなんだけどな)
「ハギッヌワー!?」
「え?あぁ・・・?」
いきなりアルベド語で驚かれて、ティーダは慌てて荷物から辞書を取り出した。判らないことがあれば即辞書で調べる癖は別世界に来ても健全らしい。
「ま・・まじ・っ・・すか・・?ハギッヌ!!!」
わざわざ調べてアルベド語で答えるところが律儀である。
「って・・・あ・・言っちゃだめだったっけ・・」
そういえば、ガードになる時に言われたような気がする。秘密にしておけ、と。
ユウナ達にもはっきりとは言ってなかったっけー・・と思い出す。
(まぁ・・言っちまったし。そのうちばれるし。ばれても死なないし、いっか)
リュックを見ると、呆然とこちらを見ていた。
(・・この様子だと、今日中に皆に広まっちゃいますねー)
広まっても自分は全然困らない。変わらない。だから構わないだろう、とティーダはほんの少し笑みを浮かべた。
「え、えーっと・・・何時から?」
「10年前から」
「どこで?」
「ザナルカンド・・・ぁ・・」
笑みが顔から消えた。変わりに陰りが浮かぶ。
(何となく意味が判ったかも・・)
秘密にしておけ、といわれた理由が。
辻褄が合わないのだ。ティーダが言うザナルカンドは1000年前に滅んでいる。そこから来たと言う自分・・。
アーロンは『伝説のガード』で、10年前ナギ節が訪れたと共に行方不明。
行方不明になっていた10年間、親父の頼みで俺を育ててたことになると・・俺の言うザナルカンドの方は・・
俺の勘違いかシンの毒気のせいで混乱しているせいになる。
スピラには時を越えるという概念はない。
ザナルカンドには、そう言った物語はあったけれど。そんな事が現実に起こる筈もない、と思っていた。
自分がシンに乗って1000年後に飛ばされて来るまでは。
(おっさんが、言うわけないしな・・)
育て親云々は疑われないだろうけど。
「・・・・」
「・・ぇっと・・・おっさん遅いよな。俺ちょっと探してくるよ」
リュックも何も言わなかった。言う言葉が、みつからなかったのだろう。
居た堪れなくて、走ってその場を離れた。追ってくるものは居ない。

「・・・は・・ぁぁ・・」
皆が休む塔から少し離れたところまで来て、ティーダは立ち止まった。走って乱れた息を整えるために大きく深呼吸をして空を見上げた。
冷たい雨が顔に降り注ぐ。
(何で言っちゃったかなー・・俺)
何度も何度もザナルカンドから来た、というたびに、変わる視線。
『何を言っているんだ?正気か?』
そんな風に思われるたびに、「シンの毒気」を理由にした。
もう何度言っただろう。アーロンと再会してからは言わないで済むようになったのに。
(あ)
自分が今思ったことに引っかかって、動きを止めた。
『アーロンに再会してから・・言わなくなった』
言い訳をしないで済むようになった。
判らないことがあっても、そう思っただけで説明をしてもらえるようになった。
ユウナやルールーが受け入れてくれたこともあるんだと思う。
だけど、一番の原因は。
自分と同じ時を過ぎしてきた彼の存在があったからだろう。
いきなり別世界に放り出した奴なのに、再会してから『支え』を感じる。
自分は一人じゃないと、自分はここに確かに存在すると。
アーロンはザナルカンドの事をおぼえてる。
出会ってから10年間の記憶がある。
どこかで故郷と繋がっている人が居るだけで、こんなに安定する。
(だけど。アーロンは・・・)
「寂しくなかったのかな」
自分はザナルカンドからスピラに飛ばされて、とても不安だった。
自分のことを知る人も居ない世界。
自分の居た世界ではない場所。
アーロンはスピラ人だ。スピラから1人ザナルカンドに渡ってきた・・・。
不安だったんじゃないだろうか。
「何をしている」
ふいに声をかけられて、振り向くとさっきと同じようにアーロンが立っていた。
(あんたって・・・何でこんなに良いタイミングで出てくるんだ?)
ルカの時も。そしてさっきも。
自分が一人だと、そう思った時に傍らに居る。
(このおっさんにそんな細かい気遣いが出きるのか、疑問だけどな)
「あんたを探しに来たんだよ。見回りに行くって行ってから帰って来ないしさ。どこかで雷に打たれてへばってんじゃないか、って思って」
「雷には打たれていたな」
どうせ『そんなへまはしない』とか言うんだろうな、という予想に反して返答意外なものだった。
「は・・・ぁぁ!?」
よく見ると、アーロンの身体から焦げ臭い匂いがしていた。
「なっ!!何やってんだよ!!バッッカ!!!」
慌ててティーダは近寄ると怪我の具合を見始めた。
「バカとは心外だな」
「あ・・れぇ?」
(怪我ない・・)
「雷無効の防具をつけてるからな」
「あ、そう・・だったっけ・・。でもさーびっくりするじゃん?それに、衝撃は受けるわけだしさ」
「ほとんど避けていたからな」
何度か避けきれないで受けたが・・と、眉根をしかめて言うアーロンを見てティーダは大きなため息をついた。
「何やってんだよ」
「・・・」
(心配して損した)
ティーダはむくれたように、俯いた。雨の雫が髪の先から地面にたまった水溜りに落ちる。
しばらく無言で雨に打たれていたが、激しい轟音に我に返ったようにアーロンは歩き出した。
その後をティーダはゆっくりと付いていく。
「あんたさ・・」
「何だ?」
「10年前、スピラからザナルカンドに来た時・・・」
「・・・・・」
「寂しくなかったのか?還りたい・・とか思わなかったのかよ?」
「還りたいのか?」
アーロンは立ち止まって振り向いた。4歩ほど離れた場所に立ちつくす姿を認めて、気が付かれない程小さなため息をついた。
「そりゃ・・還れるなら・・還りたい」
還れない理由があるからこそ、還りたい。
還れないから、還りたい。
「ユウナのガードを止めて、か?ジェクトからも逃げるのか?」
「・・・・」
「・・・還りたい、と思ったさ」
低い声で言う。周囲の雨音に紛れて聞こえなくなるほど、小さな声で。聞こえなければそれでも構わない。けれど聞こえていたらしい。
ティーダは目を見開いてこちらを見た。
「が・・。家もなく、寺院へも帰れない・・・還る場所など俺にはなかった」
「・・どうして。あんたは有名人じゃんか」
アーロンは無言で首を振った。まだ言うべきではない、と。
「・・・それでも、還りたいと思うのは・・・場所ではなく人や時間にだな」

『あの頃へ還りたい』

幸せな時を思い出して、そう願う。
還れないと知っていながら。

「・・・・」
「・・・お前の母親が亡くなった後、俺が・・なんと言ったか覚えているか?」
「え?」
「・・・・・・いや・・・気にするな」
アーロンはそう言うと踵を返した。
ティーダはその後姿を見送っていた。必死に思い出そうとしながら。何故か判らない、焦燥感が浮かぶ。今言わなくては。そう思った。
きっと自分にとってもアーロンにとっても、大事な会話だと思うから。
(なんで思い出せないんだろう)
そう思い、アーロンから視線をはずそうとした時。
稲光が走り視界を白く染め上げる。
持ち前の反射神経で咄嗟に何も考えないで走り出した。落ちる場所は予想がついた。
相手を背後から突き飛ばした瞬間、身体中に衝撃が走った。
「っ!!」
その場に倒れこんだ。視界が揺れる。
「おい!バカ!!!この、バカが!!」
(2度も言うなよ〜おっさん・・)
いつもは上手に避けるか、身をかばうので、それほど衝撃はないのだが。
もろにぶつかると、無防備な分ダメージが大きい。
感電してしまい、暫く身体が動けそうにない。
アーロンは、ティーダの身体を起すと、肩を廻して引きずって行く。
「・・・そういや・・・あんた・・雷無効だった・・っけ・・」
「しゃべるな」
「バカだよな・・忘れてた・・」
「バカだな」
とりあえず近場の小さな避雷塔まで来ると、塔周囲の岩壁に背を凭れ掛けさせた。
雷のショックが抜けるまでは、そっとしておくしかない。
「手間をかけさせるな」
眉根に皺を寄せて言うアーロンを、苦笑いを浮かべてティーダは見上げた。
小言が続きそうな気配に首をすくめる。
「あ、あのさ・・」
「なんだ」
「そ、その・・ごめん」
「・・・・」
(怒ってる・・・すんげー怒ってる・・これは・・)
「えっと・・電気ショックって言うのか?お陰で思い出したん・・」
「バカか」
「・・はい、スイマセン」
身も蓋もなく言われ、いささかムッと来たが口では適わないことを知っているので大人しく謝った。
反論すれば、100倍返しの上にいつまでもいつまでも、こちらが謝るまで怒りつづけるのだ。
子供の頃からそれを身をもって体験していたので、怒らせたら素直に謝る習性がついている。
「で、何をだ」
「・・あんたが何て言ったか・・」
「・・・」
「”家族ごっこをやらないか”だったよな・・」
「あぁ・・」
「考えたら笑えるよな。あんたみたいな奴が『ごっこ』って」
ティーダは笑いながら話す。思い出すのは10年前。
「悪かったな」
「・・・母さんは、親父が居なくなってから。ずっと探し歩いてた」
夜遅くまでパートと行方捜しで毎日帰りが遅かった。
学校から帰る家は、誰も居ない家。
ザナルカンドは夜でも街の明かりで明るいけど、その明かりに照らされた部屋は余計寂しくて暗かった。
ブリッツボールの練習が終わった帰り、迎えに来る親たち。
帰る途中に見る家々の明かり。
そこはきっと温かくて、「お帰りなさい」と言ってもらえる家があって。
(羨ましい、なんて思いたくなかった。・・・欲しくなるから)
アーロンがやってきて・・少しして母さんが死んで、一人になった。
「あの時あんたのこと初めて正面から見たんだと思う」
それまでは怖くて目をそらしていた。
けど。母さんが死んで、親戚や周りの奴らは財産目当てで油断できなくて、泣いていた俺に、アーロンは言った。
『家族ごっこを・・・やらないか・・・?』
真剣な顔で、でもどこか不器用な感じで。
『養ってやる』とか『引き取ってやる』とか・・恩着せがましいわけではなく。
俺がうなずく事で初めて成立つものだった。
「・・・それでもお前は、暫く押し入れの中に閉じこもって出てこようとしなかったぞ?」
「え・・そうだっけ」
「まぁ・・判るがな。俺は子供を相手にしたことがなかった」
「あぁ。あんたそういうの苦手そうだしな」
「ふっ」
「・・・・俺が・・」
「?」
「俺が還りたい・・って思うとこは・・あんたが・・待っててくれた家だと・・思う」
「・・」
『家族ごっこ』を初めて一緒に暮らすようになって。
学校から帰ると、暖かな家がそこにはあった。
『お帰り』と言ってもらえる家があった。
「俺知ってたんだ。あんた昼間の仕事はしてても、俺が帰る時間までには家にいるようにしてただろ?」
何の仕事を仕事をしていたかは、知らないけど。
誰も居ない家には帰りたくなかった。アーロンが仕事始めた時、きっと帰りが遅くなるんだって思って遅くまで家に帰らないでいたことがあった。
探しに来たアーロンにこってりと怒られたのを今でも覚えている。
「・・ずっと。ずっと思ってた」
もし俺にそんな家があったら・・・・と。
「そう思ったらさ・・・心が温かいんだ。大丈夫だって・・・思えるんだ」
アーロンは何も言わない。いつものように、微動だにせず立っている。
ティーダからは見えない表情が、わずかに動揺の色を見せていた。
「・・・今もそうなんだ。もうザナルカンドへは帰れないかもしれないけど・・」
顔を上げて目の前に立つアーロンを見上げた。
「それでも、帰りたい家があって。だから・・」
ポン、と頭に手を置かれた。そのまま2度程軽く叩かれる。
子供の頃よくしてくれた仕草だった。顔を見ると、あの頃と同じようにしかめっ面で。
アーロンが照れ隠しにする仕草と表情だと、自分は知っていた。
「俺も・・そうだな・・」
「え?」
「・・・家族、というものを持ったことがなかったが。あの家は俺にとっても、そうだと思う」
「・・・還りたい・・場所?」
「・・・・さぁな」
「あっ!何だよ。ズルイな〜」
「そろそろ動けるだろ?行くぞ」
アーロンはそう言い放つと、さっさと歩き出した。
「肝心な言葉は言わないんだからな」
ぶつぶつと文句を言うティーダは、数歩先で立ち止まったアーロンから「早くしろ」と言う言葉に立ちあがり走って追いかけて行った。
仲間が待つ場所へ帰るために。

<END>


【感想切望!(拍手)

【後書き】
この話は、白泉社文庫遠藤淑子著「スイートホーム」の影響をばりばりに受けてます。かなーり影響されてます。「家族ごっこ」もですね。
(引用はありませんよ。勿論)
本当にすごく良い話ですので、オススメです!


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