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ヤマネコ騒動記 第9話
〜ダリオ編〜


先ほどからカーシュが無言だ。
蛇骨館の2階の今まで閉ざされていた部屋で見つけた宝箱、その中にソルトンとシュガールの手紙が入っていた。
見せてもらえなかったけれど、カーシュは一言
「大事なものを持ち出された。取り返しに行きたい」
ってつぶやいた。
僕らに依存はなく、僕らは亡者の島へ向かっている。

大事なものって何だろう?へそくり・・だと僕は思うんだけど。
・・判るよ。
僕もベットの下でこつこつ200Gも溜め込んだからね。人に盗られたらそりゃ無口になるよね。だけど怒りっぱなしはよくないよ。
「ね、ねぇ・・カーシュ、その蛇骨まんじゅうがあるんだけど・・」
「いらねぇ・・」
「えーとエレメントの装備確認・・」
「このままで良い」
「あの・・」
「すまねぇけど、だまっててくれ」
取りつく暇がないってこの事を言うのか。僕は大人しくボートを漕ぐ事にした。
カーシュも漕ぎながら、どこか遠くを見ている。
「・・・カーシュ、セルジュが君に気を使っているのが判らないのか?」
「い、いいよ、イシトさん」
「いや、よくない。カーシュ、君は自分の思考にどっぷり陥っているだけだ。少しは周りを見てみたらどうだ?」
「・・・うるせぇ・・犬」
「!!!犬とは何だ!失礼だぞ!」
「ぎゃんぎゃん吼えるからだろうが!」
カーシュとイシトを同じメンバーにしたのがまずかったのか、言い合いを始めた。
この2人僕が思うに仲が良いと思うんだけど・・喧嘩するほど仲が良いって言うからね。
でもこの喧嘩には参った。
カーシュは不機嫌だし、イシトもそんなカーシュが気に入らないらしい。
僕は止めようかどうか、迷っていたけれど、エスカレートする2人の口喧嘩にだんだんとイライラしてきた。
「うっるさい!!!!!」
僕が思わず怒鳴ると、2人はぴたりとしゃべるのを止めた。
「す、すまない・・」
「悪ぃ・・」
どうしてだろう?僕そんなに迫力あった??
何だか恐れられているような気がした。一体なんだというんだが。
僕ほどに温和で優しい少年はアルニ村には居なかったくらいだし。
村でも評判の美少年で、親孝行の少年って有名だったんだぞ。
「僕も言いすぎたよ」
僕は優しく微笑んで、2人に気にしないで良いよと言った。
僕ってどうしてこんなに優しいんだろう。気配り上手!僕って良いお嫁さんになると思う。
あ、お婿さんか。
「・・・・あ、暑いなぁ・・」
(セルジュはキレると怖いからな・・)
「そうだな。亡者の島は涼しいから早く着きたいな」
(・・・殺気を感じた・・)
「何か言いたいことでもあるのかな?」
僕は何か含みを感じた。なんとなく。いや根拠はあるんだけど。
2人の目が泳いでいたのだ。例えだけどね。まさか目が顔から離れて泳いでる図とか想像しないでくれよ。
宙を何もない青空を見ながら空々しく感じたんだ。
2人は同時に大きく首を振った。
まぁ、良いか。
この2人はぎりぎり「ブラックリスト」に載ってない、力がある仲間なのだ。
他にもキノコとか龍の子とか星の子とかスネフとかジャネスとか居るんだけど、あまり戦力として期待できないんだよね。
出来る仲間はブラックリストに載っていたりするしね・・。
しかし、本当に暑い。猫の毛に太陽熱を吸収する黒い服、僕は何度熱射病で倒れかけただろう。
ヤマネコって寒がりだったのかな・・。
そんな事を思いながら亡者の島へたどり着いた。

亡者の島はやはり涼しい。僕の機嫌は上々で鼻歌交じりに、別世界ではガライの墓があった岬にやってきた。
そこに居たのは、ソルトンとシュガールで、思いつめた表情でカーシュを睨んでいた。

「カーシュ・・・・・様!オレ達はダリオ様殺しの罪であんたを処刑するんだな!」

え?

こ、殺し!?

「カーシュ・・・?」
僕は驚いてカーシュに声をかけた。彼はソルトン達から目をそらしたまま、うつむいた。
どうしたって言うんだ?
カーシュはやがて、ぽつりぽつりとこの場所で合ったことを話し出した。
けれど戦うのは回避できなかった。カーシュは一撃一撃、よっぽど自分のほうが痛そうにしながら、武器を振るっている。
僕もイシトも無言。
けれど僕は気がついた。
「し、しまったぁー!!!!!!!!」
どうしよう。逃げても逃げられないよね?
「ど、どうしたんだ?セルジュ」
イシトが思わずと言った感じで僕に聞いてきた。無言のままのカーシュも驚いたと見えて、僕を見ていた。
僕は「うん」とうなずく。
「・・・ファルガ入れておくべきだったよ・・」
そうなのだ。
盗めないのだ!!
「シュガールは覚えるツボだし、ソルトンはレジストベルトか中級者の証だよ!?こんなに良いもの持ってるのに」
大きくため息をつく
「盗めないなんて!!!!!!!忘れていた僕ってバカ!」
「な、なんでオレが覚えるツボを持っているって知ってるんだな!?」
「た、隊長!どうして覚えるツボ持ってるんでありますか!」
「極秘なんだな。それよりどうして中級者の証持ってるんだな!いつ中級者になったんだな!?」
内輪争いを始めるデコボココンビの隙をついて僕らは遠慮なく攻撃を再開する。
仕方が無い・・諦めるしかないか・・。
倒した後、カーシュは僕とイシトを先に行かせた。先といっても、すぐそこで待っているけど。

「待たせたな」
「カーシュ・・あの人達は?」
「あぁ・・判ってくれた。大事なものも返してもらったしな・・」
カーシュは憂いを帯びた表情で手に持ったペンダントを見た。
綺麗なペンダントで、形見のペンダントらしい。
元龍騎士四天王のダリオさんの。
(なぁ〜んだ、へそくりじゃないんだーがっかりー)
内心そんなことを思いながら、じっくりと検分する。売ったら結構な額になりそうだ・・。

真実はわからないけど、僕は何も言わなかった。
イシトも何も言わない。
僕らは亡者の島を出た。
・・・・・・・・・・・覚えるツボか中級者の証・・勿体無いなぁ・・・。
それだけが心残りだった。

数日後、僕は僕自身の世界にある離れ小島に来ていた。
「なんだかとっても不思議な島ですね」
偶然降り立った小さな島だけど、気持ちの落ち着く静かな所で、リデルさんの言葉に僕はうなずいく。
「そうですね。あ、小屋がありますよ」
見ると前方に煙突から煙を出す小さな小屋が合った。
「行ってみるか!」
メンバーはリデルさんとカーシュと僕の3人。リデルさんは不思議な人で、ブラックリストに載せていないけど、どうも・・何か・・不思議としか言えないけどよく掴めない人だった。
エレメントを使わせると、強いのでメンバーに入ってもらったけれど、いまいち判らない人だと思う。時々、時々だけど・・・うすら笑いをしていたりするし。
ゾ・・ヤツとも仲が良い見たいだし・・。
「邪魔するぜ」
カーシュがそう言ってドアを開けた。せめてノックくらいすれば良いのに。
「!!!?」
「どうなさったの?カーシュ?」
カーシュが小屋に1歩踏み込んで動かなくなった。
ガタイのでかいカーシュにふさがれて僕らはカーシュの背後から首を出して覗き見た。
邪魔だなぁ。
「!!!」
部屋の中には2人の家の人が居た。一人は流し台で怯えたように僕らを見ている女の人。そりゃぁ・・怯えるよね。
勝手に入り込んでくるんだから。
しかもデカイ野郎に強面の猫の亜人だもの・・・僕の家にもし入ってきたら、僕の母さん辺りはすごい反応しそうだよ。
ママチャもすごいけど、世の中母親って存在は強いと思う。
僕の母さんは父さんが行方不明になってから女手一つで僕を育て上げた・・のは良いんだけど。すごいのはこの先で。実に「漢らしい」母さんだった。
潔さもさることながら、腕っ節、肝っ玉、ど根性、精神力。
母さんというよりも師匠。
そんな母さんだから、無断で家に入られれば・・・・。
僕は回想していて気がつかなかった。カーシュとリデルさんの様子に。
妙な気配・・・邪悪な気配とでも言うのだろうか。を、感じて僕ははっとカーシュ達を見た。
カーシュとリデルさんの前に座る人物はゆっくり立ちあがったところで、僕らは圧倒されて1歩下がった。
「いかん!外へ出るのじゃ!」
え?
声に振り向くと、ラディウス村長が出入り口から顔を出して叫んでいた。
どうしてここへ?と思う暇もなく、背後にせまる圧倒的なプレッシャーに押し出されるように、
僕らは外へ飛び出した。
「ダリオ・・生きてたのか・・」
「セルジュ!ダリオはグランドリオンの闇に取りつかれておる!!気をつけるのじゃ!」
「ダリオっ!!!」
僕は一端逃げようと島の出口まで走ったけれど、出られない!
ラディウス村長はちゃっかりと、ダリオさんの背後に移動していた。
そう言えば・・前も・・そんな事があったっけ・・と僕は思い出す。
その隙を狙うかのようにダリオさんは斬りかかってきた。

「セルジュ!!!油断するなよ!」
カーシュがぼんやりしている僕を一喝する。見るとリデルさんも、カーシュもそれぞれ構えていた。
「判ったよ」
僕も構える。
「・・・こいつ・・ダリオはオレ達四天王を束ねれいたほどの男だ・・俺はこいつに勝った事は無い」
カーシュの言うと居り、すさまじい強さで。僕らは数回体制を整えるために逃げ出した。
「っ・・強い・・」
「・・・・」
先ほどから無言のリデルさんの様子がおかしい。どうしたんだろう?
「・・・セルジュさん」
「はい?」
「今日は何日かしら」
「え・・ええっと・・」
次元を行き来する毎日で何日とか忘れてしまっていた。
「・・・まぁ良いわ・・。私今日は特別ディに致します」
「は?」
「・・・いくら次元が違うからといって、あんまりです・・」
「はぁ・・」
「未来の妻に向かって、何度も何度もしつこいくらいに・・」
「・・避雷針ですか・・?」
何故かリデルさんとカーシュによく使ってくる避雷針。剣を頭に突き刺して上空から雷を落とす技なんだけど。
リデルさんはそれで何度も臨死体験を味わっていた。
彼女はごうごうと目に見えるほどドス黒いオーラを撒き散らすダリオを睨みつけながら、ぶちぶちと足もとの草をちぎっていた。
何だか・・・怖い・・。
彼女の頭の飾りのヘビすらも目を輝かせているようだ・・って
「・・・あれ?そのヘビ・・」
「よ、よし!!もう一度行くぞ!おら、小僧!!」
カーシュが僕の襟首を掴んで立たせる。痛いなぁ・・。
「ねぇ、カーシュ・・リデルさんのあのヘビ・・」
「行くぞ!!」
何だか必死でごまかしてるみたいだ。
もう一度リデルさんの髪飾りであるヘビを見るけど、生きているようには見えなかった。
気のせいか。
気を取りなおして僕はスワローを構えた。
体力を増幅させるアクセサリーや回復エレメントを万全に整えた。
今度こそやれる!

何もしゃべらない相手に僕らは無言で戦うのはなれていない。
どちらかというといわなくても出せるエレメントの技名とか叫びながら戦ったりと、賑やかに戦う。けれど今回はいつもと違っていた。

「うぉりゃ!とりゃ!ぞうりゃぁー!」
「・・・か、カーシュ・・リデルさんが・・」
「・・小僧、見なかったことにしろ」
「で、でもっ・・」
彼女は杖で殴りかかるとき、いつもは「えい、えい」とかおとしやかな掛け声なのだが、先ほどからすごい怒声で殴り方も「ぶん殴る」かのようだ。
今日は特別ディ・・一体何の日なのか・・。
「おぉりゃぁぁぁー!!!」
彼女は渾身の力をこめて大攻撃を放った、ばしゅ、と杖から魔法のエネルギーが放たれて命中する。彼女は下がると、スタミナが減らないうちに防御した。
「セルジュさん!次どうぞ!」
どうぞ、と言われても・・何時の間にかに主導権を取られている。
けれど、今の状態の彼女に何を言っても無駄か、倍返しされそうで怖い。僕は黙ってダリオさんの前に飛び出すとスワローで斬りつける。
「セルジュさん!スタミナ残して防御して!」
「は、はい・・」
とりあえず触らぬ神に・・何とかだ。言うとおりにしておこう。
「カーシュもよ!」
「はい!」
カーシュが防御したとたん、ダリオさんはエレメントを使う大勢を取った。避雷針だ。
エレメント攻撃だから避けられない。剣はカーシュの脳天に突き刺さった。
「うごっ」
雷が落ちる、カーシュは痛みを堪えるように歯を食いしばっていた。
痛いだろうなぁ・・・。
「ふふふ・・・」
「え?」
僕は奇妙な笑い声を聞いてその声の方向を見た。
リデルさんが、くすくすと笑っていた。その頭の髪飾りも揺れる。
白いヘビの目が、光に反射して光って見えた。
「!?」
「セルジュさん、どうかなさったの?」
「あ、い、いいえ」
「ぼやぼやしてやがると・・」
「はぁ!?」
「あ、いいえ。今何か聞こえました?」
今気のせいかキッドみたいな口調じゃなかったかな?『ぼやぼやしてやがると・・』って聞こえた。
ま、まさかね・・。
「セルジュさん、次のターンはフィールドが緑になるように、戦っていただける?」
「エレメント集中攻撃ですか?」
「ええ、そうよ」
「出来るだけみみっちい・・ごほん、レベル1か2にグリットに置いてある緑のエレメントをお願いします」
「は・・はぁ・・」
ダリオさんは相変わらず、曇った瞳で僕らを見ていた。
「ふふふ・・見ていやがれ・・ダリオ!」
「えっ?」
今はっきりと聞こえたけど・・今のは・・一体・・。
僕はカーシュを見た。カーシュは僕と目が合うと諦めたように首を振った。
「さぁ!セルジュさん!!」
「は、はい・・とりあえず・・ヒール!」
カーシュに向かって回復エレメントを使う。先ほどの避雷針でダメージを受けていたから。
「次は私ですね。グリーンアース!!」
って、おいおい!!みみっちく行くんじゃなかったのか?
僕が思わず驚いたような声を漏らすと、リデルさんはニヤリと笑うと、
「ちまちま・・やってらんないわよ」と、言った。
・・・この人は誰ですか・・。
何やら底冷えのするような笑みを浮かべられて僕は黙って彼女のすることを見ていることにした。
・・彼女は・・リデルさんはゾアの協力者らしい。
逆らわないほうが、良いだろう・・。
「カーシュ!今よ!」
「はい、お嬢様!」
「ジニー!!!!!!!!」
カーシュは召喚エレメントを使った。フィールド全体に突如として竜巻が起こる。そこに召喚された風の魔人が更に強い竜巻を出現させる。すさまじい威力を放ちながら、ダリオさんに襲いかかった!!

すべてが収まったとき、ダリオさんは倒れていた。
「殺ったか!」
「・・・・・・」
今のは聞かなかったことにしよう。視界のすみでリデルさんが力拳を振りかざして何か言ってるけど。・・・きっと気のせいに違いない。
「いかん!グランドリオンがっ・・・!!」
見ると宿主が倒れたのに、、剣だけが勝手に浮き上がってどす黒いオーラを放っていた。その時声がした。どこから聞こえてくるんだろう?
僕はぼんやりと見入っていたら、やがて精霊みたいな声は3人に増えた。
どうやら兄弟みたいだ。
「すごい、僕達が3人が一緒になるなんて何世紀ぶりかなぁ」
僕はグランドリオンよりもダリオさんに駆け寄ったリデルさんが気になってた。
抱き起こしてるんだけど・・何かやりそうで怖いなぁ・・。
「新しい宿主はー・・・・」
リデルさん、手に何を持ってるんですかっ。僕の見間違いじゃなければ、あれは・・
「ヤマネコが!!!」
「え?」
ヤマネコ?どこ??
僕はカーシュの言ったヤマネコという言葉にだけ反応した。一体何??
気がつけば僕は注目されていた。ラディウス村長が知った顔で
「大丈夫じゃろう、グランドリオンからは邪悪なものは感じられない」
は??
一体何がどうなったんだ?そう思ってキョロキョロしていたら、耳元で声がした
『よろしくね、新しいマスター』
マスター??僕が?
「わ!なんだよ、これっ!」
僕は驚いてそれを持ち上げた。
僕の大事なシースワローが!!!!
変化していた。原型をとどめていないくらいに!
がーん。
『変なマスターだな、選ぶの間違えたかも・・』
失礼な!僕は変じゃないよ!変って言うのはヤツだ!
「セルジュ、何をぶつぶつ言っておる・・」
『変なヤツ?僕達に掛れば、そんなヤツいちころさっ!』
え?そうなの?本当に?
『そうだよー』
それなら、良いや。うん。頼りにしてるよグランドリーム!
僕は上機嫌で周りを見渡した。
「・・あ、あのリデルさん・・」
リデルさんは先ほど手に持ったもので、ダリオさんのまぶたに落書きをしていた。
目を書いているらしい。なかなか上手い。
「・・あら、ちょっとした仕返しくらい許されますよね」
にこり、といつもの優しげな微笑を浮かべられて僕はうなずいた。
・・彼女の名前を新しく作る「ブラック・腹黒リスト」に載せておこう。
要注意人物・・・だよね・・。

ダリオさんはその後、まぶたに書かれた目に気づかずに、蛇骨館復興に力を注いでいる。
<END>



【感想切望中(拍手)


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