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*「身代わりの護符」で主人公を入れ替えてみよう!*
もしもシリーズ−1−
「もしもポシュルが主人公の場合」


爽やかな風がうっすらと開いている扉から光とともに彼女の柔らかな毛並みを撫でている。時刻は太陽が昇り、、海辺の町の住人たちは皆それぞれの朝を迎えていた。
ニャーと子猫の声が彼女の「マイハウス」の外から声がする。

「うるしゃいでしゅるよ〜」

彼女、犬のようで犬ではない謎の生き物ポシュルは、のそのそと小屋の外に這い出てきた。怒られたネコは「ミャン」と鳴いて部屋の隅に逃げる。

「・・・・(謎の生き物?)レディに失礼でしゅる〜!」

「おや?起きたのかね?えらく今日はえらく寝坊じゃのう・・って、誰に向かって言ってるんじゃ?」

「ぷしゅるる〜〜?」

ポシュルは首を傾げると、体が重いのか2,3度大きくバウンドした。
最近太りすぎたと自覚しているポシュルがバウンドすると家自体が地震かと思うほど揺れ動く。
何だかイヤな夢を見たような気がする・・。
よく覚えていないのだが、そう、誰かを・・・そう確か金髪の小娘だったような気がする・・を刺す夢だ。
いかせん前後の記憶があいまいで思い出せないのだが・・。
彼女の足を(笑)刺した時の感触はまざまざと覚えている。
が、しかし・・、

(ポシュルはナイフ持てないでしゅるよねぇ〜)

「まぁいいでしゅるよ、きっとただの夢でしゅるし」

家の壁がパラパラとひびわれ、床に崩落していく様を眼の端で見て、内心蹴りとばしてたまらないレナの祖母は自分の世界に浸りきるポシュルの方を向いた。
いきなり前後の会話からぶっ飛んだ独り言には慣れているのかポシュルの独り言にはかまわず話を進める。

「そういえば、お前レナと約束があったんじゃないかい?約束の時間はとうに過ぎてるよ?」

「約束でしゅるかー?」

なんでしゅるかねー?と本気で忘れてるらしいポシュルに、「乙女のビンタ」を食らわしたい気分になる。しかし、よぼよぼのばぁさんが何を言うのか・・・「乙女」とは片腹痛い。

「・・・今は歳とってよぼよぼじゃがのう!これでも昔はこの村のマドンナじゃったんじゃぞう!それはそれは美しい乙女じゃったんじゃ。わしが歩けば男どもは振り向き・・・・」

「年寄りの話は長いでしゅる〜」

ぽそりとするどく突込みを入れたポシュルは、家の窓から見える桟橋に立つレナの元へ向かうために外へ飛び出した。

「よぉ〜ポシュル!あのレナ姉ちゃんの約束をすっぽかしたんだって!?やるなぁ、さすがポシュル!」

外に出たとたんレナの弟ウーナに声をかけられた。

「まぁともかく早く姉ちゃんにボーイフレンドが出来てくれたらいいんだけどな!もう手が早くって・・昨日なんか往復ビンタもらっちゃったよ!」

くどくどと話が長いウーナを無視して、ポシュルは桟橋方面へと駆けて行った。

「ひゃほぉ〜〜!」

と大声で飛び込もうとする子供に追いつこうと必死で走りよるが、そのまま海へ落ちそうになる。
一度で言いから話しかけたいと思って無駄に行き来するにだが・・・。

「本当に無駄でしゅるな〜」

「あら?ポシュル、お早いお目覚めね!」

刺のある言葉だがポシュルはあえてそれを無視した。
気にかけて文句を言ったとしても100倍返しにあうのは御免こうむる。
それに彼女は本気で怒っているわけではないらしい。怒らせると怖いと定評だが、根は優しい少女なのだ。

「おーい、ポシュル!姉ちゃん怒らせると大変だぞー!」

「あんた達うるさいわよ!ほら、深い方にいかないの!」

まったくぅ、と腰に手を当ててため息をつく。

「それで、今日の約束は覚えているのかしら?」

「なんでしゅるか?」

「・・・・んもう!ポシュル!昨日さんざん言ったじゃないの!」

忘れたの?という問いかけに素直にうなづいた。
ここで下手に嘘ついてもばれる上に何をされるかわからない。

「今日はコドモ大トカゲのウロコ集めて、ネックレス作ってくれるって約束じゃなかったかしら?」

「そうでしゅるか?」

「そうなのよ!もう!」

「でもそれって、男の子から女の子に送るのが流行りなんじゃないでしゅるか?ポシュルは女の子でしゅるよ?ははぁ・・レナしゃん、貰う相手がいないでしゅるから、自分で取ってきて貰ったでしゅる〜!って自慢するつもりでしゅるね?そうでしゅるか?それとも貰ったって自慢して気を引こうとしてるでしゅるか?」

ポシュルは背が低いのでレナの表情は見えなかった。
しかし、遠くから見ていたレナの弟たちと、近くで居眠りをしていたおっさんは、レナからただよるとてつもない気配を敏感に察すると、こっそりとその場から逃げ出していた。
後に漁師のおっさんによると、目は吊り上り口元には冷やりとした微笑を浮かべていたそうだ。桟橋を命からがら逃げ出してしばらくして、ポシュルが何故か両ほっぺたをふくらませて、よろめきつつ歩いてきた。どうやら水浸しのようである。

「ひどいでしゅる〜乙女のビンタと乙女のこころを繰り返して使うなんて、ひどいでしゅる〜」

「・・・・?どうしたんだい?ポシュル?」

「んあ?セルしゃん!」

無残な姿になってしまったポシュルを遠巻きに眺めていた村人の中から、一人の少年が歩み寄って声をかけてきた。
「どうしたんだ?」と聞きつつ訳はどうやら薄々気がついているらしく、遠くに立つレナを振り向いて呆れた様にため息をついた。セルジュは近くに住むレナよりひとつ年上の幼馴染で、彼女の事も良く知っていた。

「あぁ・・びしょぬれだね」

「セルしゃん〜〜!」

優しい言葉に感激してポシュルは彼の飛びついた。

「!」

「ひ、ひどいでしゅる〜」

思わずかわしてしまったセルジュは、さすがに悪かったと思ったのかポシュルを自宅へと招いた。

「ふ〜ん、それでトカゲ岩に行くんだ」

「一緒に行ってくれるでしゅるか?」

「んーごめん、ポシュル。僕これからある女の子と、約束があるんだ」

「お願いでしゅる〜一人じゃ無理でしゅる!」

「ごめんね」

どうやらレナはセルジュに恋心を抱いているようで、彼とともにウロコを持ってかえれば、機嫌も良くなるだろう。
このままでは夕飯のおかずどころか、大好きなヘケランの骨ももらえない。
涙目で見上げてみても効果はない。おかしい、レナの本で「涙目で見上げると男はイチコロ」と書いてあったのに。もう一度やってみる。

「ポシュル・・・」

(効いたでしゅるかぁ!?)

「お腹減ったなら母さんに言ってもらってね」

「せ、セルしゃ〜〜ん!!」

去っていくセルジュに手を(前足?)をのばすが、彼は元気良く自室を後にするのだった・・・。

<以下続く?>



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