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宝探し屋のひ・み・つ

温かな陽射しが心地良い秋晴れのある昼休み。
和やかな雰囲気の中、さて昼飯でも買いに行こうとしていた俺に八千穂が話し掛けてきた。
「ねぇ九チャン、素朴な疑問なんだけど」
「ん?何かな八千穂」
シニヨンヘアを微かに傾けると、八千穂は真剣な表情でこうおっしゃいました。
「九チャンって赤ちゃんできるの?」

・・・・・・・・。

和やかな談笑ムードだった教室内が一瞬で静まり返る。
さすが八千穂、よい意味でも悪い意味でも場の空気を全くといってよいほど無視しまくった彼女の一言の破壊力はニトロマイト級だ。
「・・・は?」
さすがの俺もそう答えるのが精一杯だ。
あまりの衝撃に声も出ないのか、周囲の視線は俺達二人に釘付けだ。あ〜あ、中には飲みかけの牛乳を吹き出したヤツもいるみたいだ。・・・まぁ無理もないけど
聞き間違いかとしばしほうけていると、八千穂は少し苛立ったようにまた尋ねてくる。
「だから赤ちゃんできるのってば!」

・・・・・・・・。

・・・今度こそ聞き間違いじゃないな。それにしてもよりにもよってなんてこと聞くんだよ!?
「あのな八千穂?俺一応生物学的には男なんだけど・・・」
心なしか顔をひくつかせながらできるだけ穏便にそう答えると、天然自然の爆弾娘八千穂は更なる爆弾を放ってきた。
「だって九チャンは半分はオ・・・」
「八千穂ーーーーッ!!」
「はぐッ!?」
俺は何かを言いかけた八千穂の口を塞ぐと素早く回りを確認する。
誰も聞いていないよな?
「・・・」
「ふぐんぐ」
余計にみんなの視線を集めたような気がするがこの際それはどうでもいい。
それにしてもいきなり何を言い出そうとするかなこの娘は!?
よりにもよって教室なんて公の場で俺の最大の秘密をしゃべるか!?
・・・悪気はないんだろうけどさ。悪気がないだけに余計にタチが悪いよな・・・
いまだふぐんぐ言っている八千穂を離すと、俺はできるだけ優しい声色で話し掛けた。
「八千穂?俺は男だから赤ちゃんは作れないからね?」
もちろん男だからを協調して、だ。
「う、うん!ご、ごめんね?私ったら九チャンがあんまり可愛いからオンナノコみたいに見ちゃったみたいッ」
やっと自分が言い出したことがやばいことに気がついたのか、八千穂はえへへッとかわいらしく笑ってごまかした。くそぅカワイイよなぁ〜。怒る気が失せちゃうよ
・・・まぁ言い訳は苦しいけどさ、下手なこと言われて墓穴を掘るよりはまだマシだな。
「はぁ、俺のどこをどう見たら女に見えるんだか」
常日頃からカッコいいことを信条にしている俺にとって、八千穂の可愛い発言は以外と堪えた。
溜息を付きつつ話題を反らそうと考え中な俺にクラスメイトの野郎どもが会話に混ざろうと話し掛けてきた。
「でも葉佩って可愛いよな?」
「いや下手な女より美人なんじゃないか?」
「はぁ?」
いきなり何を言い出すかなこいつらは?
男が可愛い言われて嬉しいわけないだろ?・・・まぁ俺は半分は女だけどさ。
「お前らな・・・」
「葉佩って外見はまんま女の子だし」
「そうそう、転入してきたときとか美少女が来たって噂になってたもんな〜」
「それに天香祭んときのシスターの恰好とか見てたら女に見えるってお前!自信持っていいぞ?」
そんなこと言われても嬉しくないっつの!大体自信持つって何にだよ?女装にか!?お前らは女装が似合うって言われて嬉しいのかよ!
俺の苛立ちを知ってかしらずか、三バカトリオ(こいつらなんて三バカで充分だ)のうちの一人がトドメの一撃を食らわしてきやがった。
「・・・なぁお前ホントに女の子じゃないのか?」
ぷっち〜〜〜ん!(堪忍袋の緒がキレた音ね)
「なんで女が男装して共学の学校に転入して来るんだよ!?素直に女として転入してくりゃいいだろうが!」
「九チャン落ち着いてッ」
あまりにも馬鹿な発言にキレた俺を八千穂が静めようとするが、悪ノリしまくっているやつらには俺の怒りが通じないらしい。しつこく食い下がってきやがる。
「いや、うち全寮制だし憧れの人と一緒にいたいから〜とか?」
「どこの少女漫画だそりゃ・・・」
「なんかありそうだよな?」
「あるある!」
「(・・・阿保かこいつら・・・・)」
呆れて言葉もでない俺を無視してバカどもが騒いでいる。
いくら温厚な俺でも怒る事はあるんだ!
せめて一言くらい言ってやらないと俺の怒りは納まらないぞ!?
(チャラッチャラ〜チャラチャラチャラ〜♪)
するとタイミング良くというか悪くというかメールがきた。
「・・・皆守からだ。はぁ、またカレーパンかよ」
皆守は俺からの返事が来ないことを知っているからほとんど命令状態のメールを送って来るんだよな。もうパシリも慣れたよ。
「八千穂行こう」
「うんッ!お昼買っていこう?」
これ以上付き合ってたらあることないこと噂にされるかもしれないしな。
俺は八千穂を促すと教室の出口へ向かった。扉を締める前にまだごちゃごちゃと討論している三バカに振り向きざま忠告してやった。
「お前ら二度とそんなこと言ってみろ?ギッタギタのメッタメタにしてやるからな?」
俺は極上の笑顔を向け、二度と振り返ることなく教室をあとにした。
教室内がまた静まり返ったみたいだけど、俺はもう知るもんか。
勝手に騒いでろバーカ。
・・・・・・はぁ・・・・。


おまけ☆3-C教室
三バカトリオの会話
「いや〜美人が怒ると恐いって本当だったんだな〜」
「おい、お前葉佩に殺されるぞ?」
「でも俺葉佩になら殴られてもいいかも・・・」
「俺も俺もッ美人に怒られてみたいかも〜」
「・・・お前らなぁ」
「そういうお前はどうなんだよ?」
「・・・一回だけなら」
「だろ〜?」
「うんうん!俺達は同士だ!」
「イヤな同士だな・・・」
美人に怒られ隊同盟結成の瞬間でした(笑)



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