++ 徒然日記 ++

未発表作品その2 ペルソナ3 
2018年01月20日(土)
「うぅッ・・・寒い・・・」
巌戸台分寮の玄関の扉を開けたとたん、襲い掛かって来た寒さに僕は体を震わせた。
見上げた空は寒空って感じの白っぽい曇り空で、雨か雪が降り出しそうだった。
(傘持っていったほうが良いかな・・・)
あぁだけど、今から部屋へ取りに戻るにしても身体が重くて仕方が無い。
学校へこれから向かう事自体、無謀なんじゃないかってくらい身体中が疲れている。
(休もうかな・・・でも、もう4日も休んじゃったしなぁ・・)

今日は2月5日、金曜日だ。
あの決戦の日――1月31日に無事に生還してから3日間くらいは起きれないくらい疲れ果てて、それこそ文字通り泥みたいに眠っていた。
起きたのは3日目の昼だったけど、薄情な仲間達は見舞いにすら来なかった。
飲み物だけは部屋に常備していたからどうにかなったけど、ここまで薄情な連中とは思わなかった。
(そういえば、秋に風邪引いたときも来なかったなァ・・)
テレッテ・・・順平はともかく、女子の誰一人来てくれなかったのがショックだった。
あの頃よりは絆は深くなっているはずなのに、誰も来てくれなかった。
(もしかして、僕、嫌われてる・・?)
いやいやいや、そんなはずない。テレッテじゃあるまいし、そんなはずはない。
(でも、アイギスすら来てくれないなんて・・・ショックだ)
なんか、その辺の隅に蹲って、「の」の字を地面に書きたくなる。つまりいじけたくなった。
「・・・・そんなことないよな・・・。戻ってきたとき、皆あんなに喜んでくれてたし・・」
生還した時、皆は泣いていた。
僕のほうを見て、感涙という涙を流してくれていた。
あれにウソなんかはないと思う。そのくらい、見たこっちも涙ぐむくらい共有してたと思う・・・皆で生きて戻れたことが嬉しくて。
(だからきっと、たまたま忘れ去られてただけ・・・・・って、それも辛いよぅ・・)
考えれば考えるほど、寂しくなっていくから頭を軽く振って寮を後にした。


ガタン、ゴトンと音ともに体が揺れる。
乗りなれたモノレールなのに、今の僕は立っているだけで背一杯だ。
「・・・・・ッ」
訂正、立っているだけで辛い。そろそろ限界。
手摺りに縋り付くみたいにして、どうにかポートアイランド駅について人並みに揉まれるように転がり出た。
「はぁ・・・・・・・はぁ・・・」
酸素が!酸素が足りないッ!息切れしながらあんまり綺麗とは言えない空気を吸う。
立っているのも辛くて、駅を出てすぐの階段に座り込んだ。
「はぁ・・・・・・・」
だめだ、もう無理、限界。立ちあがる力も残ってない。
(・・・・なんか、おかしい・・・)
どうしてこんなに僕は疲れてるんだろう?
整わない呼吸を少しでも楽にしようと、リボンタイを緩めた。
(あ・・・なんか、目の前が・・・)
真っ暗・・・・。

「・・・・・い!おいッ!」

「え・・・・?」
誰かに乱暴に肩を揺らされてはっと顔を上げると、見覚えのある顔が覗き込んでいた。
「皇帝さん・・」
「は?」
「あ、いやいや・・えっと・・・・」
咄嗟にコミュの名前しか浮かばなくて焦る。えっと、皇帝のコミュの・・・生徒会のこの人は・・なんて人だったっけ・・?
「片桐さんだっけ・・」
「・・・・・・小田桐だ。まったくキミは相変らずというか・・・なんというか・・・・」
「どうしてここに・・?」
「どうしてって、普通に駅から出てきたところだが・・・大丈夫か?具合が悪いんじゃないのか?」
「あぁ・・そうか、ここ駅前の階段だったっけ・・」
そう言いながら、自分が意識を失っていたことに気付いて内心焦る。
(・・・やっぱり、変・・・だ・・)
「大丈夫か?顔色が悪いが・・・」
「大・・丈夫です」
いけない、意識を集中してないとすぐぼんやりとしてしまうみたいだ。慌てて頷いて、放り出していたカバンを引き寄せた。
「そうか?キミは自分のことには無頓着な部分があるからな・・・」
「本当に平気です」
「・・・学校へ向かうんだろう?一緒に行かないか?」
小田桐さんの気遣いが感じられて、なんだかこそばゆい。
もうコミュMAXだから上がらないけど、それでも嬉しいと思った。
「はい」
「そうか、ならば行こう」
小田桐さんにもう一度頷いて見せて立ち上がろうとするけど、足に力が全然入らない。
身体に重しが乗ってるみたいに、重く感じられる。
「・・・・・ッ」
(風邪・・・とかなのかな・・・)
自分の身体の異常さに、じわりと恐怖心がせり上がってくるようで怖い。
「・・・・手を、ほら」
小田桐さんに手を掴まれて引き立てられるけど、立ったまま、足に力が入らなくて階段についている手摺りを慌てて掴んだ。
(・・・・・・・・・・本気で、これ・・・)
風邪だよね、そうに違いない。熱とかないとは思うけど、実は高熱とか出てるのかもしれない。
「大丈夫か!?」
「・・・・・・・大丈夫じゃ、ない・・みたいです」
「そうみたいだな・・・今日はもう帰りたまえ、そのままでは学校まで歩くことすらきついだろう」
「・・・・・はい・・」
「タクシーを呼ぶか?」
「・・・・・お金はありますから、呼んでもらうだけ・・・やってもらえますか?」
「あぁ、すぐ呼ぶ。それまで座って待っていろ」
小田桐さんは少し慌てながら早口でそう言うと、いつもの余裕ありそうな動きからは想像できないくらいバタバタと走っていった。
(携帯持ってないのかな・・・)
そんなことを思いながらもう一度階段に座り込むと、異常なくらいの寒さに震える。
「やっぱ・・・風邪、だよね・・」
だからこんなに寒いんだ。きっとインフルエンザとかだよ・・・3日も食べてなかったし。
(・・・・そうだよ、きっと・・・)

戻ってきた小田桐さんに肩を借りてタクシーに乗り込む。心配そうに必死に何か言われていたけどもうほとんど覆えてなくて、朦朧としたまま頷いていた。お金はすでに払ってもらっていたらしく、あんなに心配してくれていたのに名前間違えたりして悪かったなって思った。


寮に帰ってきて、部屋で眠ってどれくらいたったんだろう。
気がついたら部屋中夕暮れ色に染まっていた。
「・・・・・え、夕方?」
昼前に戻ってきたのに、いくらなんでも寝過ぎだろう・・・というか、よほど自分は具合が悪いのか・・。
「風邪、だといいけど・・・」
風邪だと思い込みたいのに、この恐怖心はなんだろ・・・・せり上がってくる、とても怖いもの。
(考えるのは、よそう・・・)
風邪なんだ、きっと。だから大丈夫だ・・。
ベッドから身を起こして立ちあがる。今度はふら付いたりはしなかった。
もしかしたら・・・疲れが取れきっていなかっただけなのかもしれない、と自分にこじつけて、部屋を出た。
寮の中はシンと静まり返っていて、人の気配がしない。
携帯も時計も外しているので時間はわからないけど、この時間なら皆ラウンジにいるかもしれない。自動販売機で温かい飲み物を購入してから気をつけて1階に下りた。

「・・・・・・・・?」

誰も居ない。
(まだみんな、学校・・・・・?)
不思議に思いながらラウンジの入り口方面へゆっくり歩く、ふと何かの気配を感じて振り向いてみた。
「あ、コロ・・・」
「クゥーン?」


未発表作品その1について 
2018年01月19日(金)20:45
書きかけて書く気力がなくなった作品をちょいと紹介
幻水4のやつは設定なども決めて書いてたんですが、続かなかったという
ラプソディアが面白かったんで書こうとしてたみたいです(´・ω・`)

【話の内容・設定】
ラズロを息子だとほぼ確信しているリノ王とフレアの話。4部構成くらい
第1話
→時期は決戦前の数日間。船の補強とかしている最中。ラズロとの会話で確信したリノがフレアを呼びだすところから始まる。
第二話
→時期はラプゾ前。EDのあれをちょっといいように解釈(笑)ラズロとリノのオベルデート(?)
ラズロが息子という証を虎視眈々と狙い続けるオヤジ。登場人物・フレア・ミレイ等
第三話
→時期はラプソ中。やっぱり証を狙い続けるオヤジとオヤジから逃げるラズロ。
第四話
→ラプソ後、これだけはシリアス。前半はラズロの本音とオヤジの涙
後半〆はオベル王族正装の話とフレアの話

オヤジが怪しそうですが、いたってノーマルの話です
幻水4の作品自体pixiv等ネット上にもかなり少ないので、pixivに他作品が移行できたら書くかもしれないです
ラプソと幻水4が絡んだ創作が読みたいんだー!w
ただ文字を長らく書いてないので・・妄想だけでおわりそう・・w
というわけでその1でした


未発表作品その1(幻水4)途中まで 
2018年01月19日(金)19:14
「なんであんなこと・・・言っちまったかなー・・・」
今まで誰にも話したことがない。それくらい簡単に口に出せないくらい、自分にとって重い話だった。
もう15年も昔の話なのだが・・・、リノ・エン・クルデス・・・オベルの王としての自分ではなく、父親として、そして夫として・・1個人の自分として、今でも拭い去れない損失感がそれを口にすることを躊躇わせてきた。
それくらい失ったものはあまりに大きく、胸の中には抉られたような損失感で常にいっぱいという状態だった。
事実は口にすることは出来る、それくらいは割り切っている。
だが・・・。
「はー・・らしくないってか・・」
リノは手に持ち今まで整備していた武器を窓辺に立て懸け、窓を開けた。
とたん、流れ込んでくるのは潮騒の香り、波の音。
窓から見える景色はすでに闇に染まり、月明かりに照らされた水面は穏やかだ。
「考えてみりゃ・・、初めてだな・・」
誰かに・・話をしたのも、口にしたのも、15年間一度もなかった。


『お前のその紋章な・・王国の遺跡から、15年前に持ち出したのはオベル王妃、俺に妻だった・・

それでも、その力を使わないように普通に暮らしてたんだぜ。だけどある時海賊に襲われた・・・。

その船には俺の子供たちも乗ってたんだ。小さいフレアと、まだ生まれたばかりの弟・・、そいつらを守ろうとして、あいつは死んだ。

海賊たちはやっつけたが、こっちも船は大破したし、下の子も・・・行方不明になった・・。

・・・・生きてりゃお前くらいだったかな・・・。もうちょっとすりゃ、一緒に酒が飲めるくらいの・・・』


下の子の事について、口にしたことは・・・今までなかった。
ましてや、『生きてればお前くらいだったかな』とか、『一緒に酒が飲めるくらいの・・』とか、どこかで生きていると・・祈るように願って居ても、実際に口にすることなどありえないことだった。
それを口にすることすら、避けていた。
『どこかで生きていれば』なんて、そんな希望を抱けるほど生易しいものじゃないのは知っている。海の厳しさは海とともに生きていれば誰もが身にしみている。
小さな、小さな赤ん坊だった。
まだ乳飲み子だった・・そんな赤ん坊が、どこかで、など・・・。思えるはずがなかった。
そのはずだった・・・なのに、さっきのは驚くほど自然に出てしまった。

この船のリーダーである少年―――ラズロの顔を見ていたら。

(あいつには・・、『だからお前に肩入れしたわけじゃない』なんて言っちまったが・・)
よくよくじっくり考えてみれば、初対面の時から異常なほど肩入れしてしまったような気がしなくもない。
顔を見て一目で、決めてしまったよなものだった。
人を見る目は持っていると自信を持って言えるが、それでも信じてしまうにはあまりにも早かった。
(しかも罰の紋章だ・・)
あの紋章の行方は、最近では海賊ブランドが所持していたと聞いていた。
それを持つ少年・・・海賊の回し者であったとしてもおかしくない。紋章の特徴を知っていれば疑うのが当たり前なくらいなのに、だ・・・。
今にも沈みそうな船で遭難していたというあたりも、激しく胡散臭い。
それでも・・そんな警戒心など思いもしなかった。
一目見た瞬間、欠けていたピースがはまったような・・・妙な安心感を感じた。
それが『こいつは信じられる』というものに繋がったような気がする。
「あいつが近くに・・、目に見える位置にいると妙に安心するんだよな・・・」
(それはフレアにも言えることなんだが・・・)
フレア・・娘の方は、それでもだいぶ大人しくなった。昔はもっとお転婆娘で手を焼いたものだが・・・。
昔ほどハラハラと見守ってしまうようなこともない。あいつなら大丈夫だと、自信を持って言える。
それよりも・・。
「ラズロか・・・・・」
罰の紋章を宿しているせいか、倒れることが多い。
夜もあまり眠れていないようで、危なっかしくて見ていられない。
その上、全ての事を自分でやらないと気がすまないのが、あちらこちらへ毎日飛び回っている。それこそ休む暇もなく。
倒れたり、苦しんでいる姿を見ると、どうしようもなく助けてやりたくなる。
無意識に、守らねば、という使命感みたいなものが出てきてしまう。
一個人としては問題はないが、王としての立場がある自分が前に出ると・・・船団の力関係を崩しかねない。
それは不味い。軍師エレノアにも釘を刺されたりもした。
自分でも重々わかっている。
(それでもな・・・手を貸してやりたいって思っちまうんだよな・・)

おまけに・・。

最近ふとした時に気付いたのだが・・・。

ラズロは、誰かによく似ている。面影が時々被ってしまう。

あれは、誰だったか・・・。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・他人って気がしないってもの問題なんだよな・・」

ラズロの顔を思い出しながら、リノは重苦しく呟くと、深々とため息をついた。

「誰のこと?」

「う、うわああああッ!!!フ、フレアッ!?」
「キャッ!びっくりしたーッ!いきなり大声を出さないで頂戴、お父さん!」
突然背後からかかった声に激しく驚き、思わず壁に縋りついたまま娘―――フレアを見た。
フレアは両手に布のようなものを抱えたまま突っ立っていた。
「お、お前な・・・。いくらオヤジの部屋だからって、ノックもなしに入るなよな。年頃の娘なんだぞ?しかも王女なんだぞ?わかってんのか?」
「失礼ね!ちゃんとノックしたわよ・・・足でだけど」
「足でか・・」
「両手が埋まってるんだもの、仕方ないでしょ?それより、ほら、洗濯物!」
「お、おぉ・・・悪いな・・って、お前な・・」
昔から王女らしくはなかったが、この頃拍車かかってないか?とため息をつくと、ドザッ!と布の塊が顔めがけて飛んできた。
「痛い。・・・・・俺のパンツか・・」
「いつもいつもセツに持ってきてもらってるんでしょ?たまには自分で取りに行ってよね。ここでは王って身分はない、とか言ってたんだから」
自分のことは自分でするの!と、王女らしくないセリフを更に吐き出した娘に苦笑いで答えた。
「あーはいはい、わかったわかった・・」
(まぁ、あれだな・・俺自身も王らしくないと言われるからな・・)
その辺そっくりだなーと、自分の血を引いているという事を感じてついつい顔がニヤけてしまったらしい。
フレアはそれを見て、物凄く呆れた顔をして持っていた布を再び投げつけてきた。
「もう、何ニヤニヤしてるのよ!お父さん」
再び顔面を襲った布きれ・・・見覚えのあるそれは先日汚したので洗いに出した寝間着だった―――を取り去り、イスに投げかけながら笑う。
「いや、なに・・親子だなってのをな、再確認してな・・」
「えぇッ!それってお父さんと私が似てるってこと?・・・・・やだわ」
「やだ・・ってオイッ!」
本気で嫌そうな娘にショックを受けながらツッコむと、フレアは誤魔化すように笑った。
「やぁね、冗談よ」
「・・・・・・・おまえなぁ・・」
「大丈夫。今さら言われなくても私自身もお父さんに似てるとこあるなってわかってるから」
「フレア・・」
「ふふッ、親子だものね。似ていて当たり前よ」
「あぁ、そうだな・・・・・んんッ!?」
『似ていて当たり前』というフレアの言葉に引っかかりを覚えて、考え、気づいた。
「どうしたの?お父さん」
「あぁ・・・いや、な・・、他人の様な気がしないってのが何故だかわかってだな・・」
「そう言えば、入って来た時盛大に独り言喋ってたわね。誰のことなの?」
「あぁ・・・ラズロのことなんだが」
「あら、お父さんもそう思ってたの?やっぱり、そうなのかしら・・」
「あぁん?そりゃどういう意味だ?」
聞き返したリノに、フレアは楽しげに眼を細めて笑った。
「だから、似てるって思ったんでしょ?」
「あ、あぁ・・・:」
なんで分かったんだ?・・・と思いつつ頷けば、フレアは満面の笑顔でこちらを指さした。
「お父さんと、似てるよね」
「・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?」
「え?違うの?」
驚く事を言われ茫然としながら頷くと、「ええっ!?あんなにそっくりなのに・・」とフレアは呟いた。
「・・・俺に、じゃないだろ。俺が言いたかったのは、お前に似てるってことだ」
「私に?」
「あぁ」
(だからこそ、あいつに構っちまうんだよな・・)
うんうん、と自分で納得しながら言うと、フレアは驚いたように首を振って否定した。
「違うわよ、私じゃないわ。お父さん、気がつかないの?そっくりじゃない」
「いいや、お前に似てるんだ」
「違うわよ」
「お前だ」
「お父さんよ!」
「お前だ」
「お父さん!」
頑固に言い募る娘に、呆れて大きくため息をついた。娘と喧嘩するときはいつもこうだ。
「・・・じゃどこが似てるんだ」
観念してそう聞くと、フレアは楽しそうに指差した。
「まず、服装から似てるわね。お揃いじゃない!」
「・・・どこが?って、あぁ・・これか」
自分の履いているズボンを見下ろして納得する。確かにラズロも足をさらしている―――が。
「だが、偶然だろ?群島は夏でなくても暑い、涼しげな格好をするのは当然だろうが」
足をさらしている分涼しい。そう主張すると、フレアはふふん、と笑って見せた。
「そうだけど、それだけじゃないのよ」
「あん?」
「まず身動きがそっくりね。振り向いたり、見上げたり、身がまえたりするときとか・・並んでる時に見てたら笑っちゃうくらいよ」
「はぁ・・?そうか?」
「眼付きも似てるわね」
「そうかぁ?俺とあいつ、顔は似てないぞ」
「眼付のわるッッッ・・・・ごほんごほん、鋭さ、はそっくりよ」
「・・・・・今悪さって・・」
「やぁね、気のせいよ。お父さん。そ、それより、ラズロと私はどこか似てるって思ったの?」
ごまかすように笑って聞き返してきた娘を横目でじろりと睨んでから、リノは椅子に腰かけた。
「そうだなー・・。お前は見たことあるか?」
「なにを?」
「あいつ・・ラズロが笑ってるところだ」
「うーん・・・、ないかも・・。だって、あの子いつも真面目な顔してあちこち行ってて、ゆっくり話したことないのよね」
「確かに、あんま笑わねぇな・・・」
フレアの言葉に胸が痛むような気がした。
ラズロはずっと無表情だ。まるで凪いだ海のように穏やかだ。

―――まるで・・・

「あの子、何かを・・・ううん、死ぬ事を、覚悟してるような気がするの」
「フレア・・」
自分と同じ考えに行きついた娘に驚きを隠せずに見つめると、彼女は遠い目をして両手を握りしめた。
「感情をあまり出さないんじゃなくて・・・出せないのかしら・・。感情が凍ってしまってるというのとも違うわ・・」
「そうだな・・、あいつは、感情を出さない。だが・・フレア、俺は見たことがあるぞ」
「笑うところ?」
「あぁ・・、一度きりだがな・・。ラズリルの騎士団の仲間と、一緒に釣りをしてた時だった・・」
大物を釣りで引っかけ、竿が重すぎて持ち上げられなくて仲間たちが全員で助けてやり・・・ようやく釣り上げれば沈没船の破片で・・・。
「爆笑する仲間たちを見て、それが嬉しかったのか・・楽しかったのか、あいつは笑ってた」
愛しそうに、仲間たちを見て・・・微笑んでいた。
あれが多分、本来のラズロなんだろう。
「そう・・笑えるんだ。良かった・・」
ホッとして微笑んだフレアと、記憶の中のラズロの微笑みが被る。
「あぁ、やっぱ似てるじゃないか・・」
「え?」
「笑ってるところがな、お前と似てるんだ」
「え・・・ッ?そ、そうなの・・・?」
「あぁ」
「何て言うのかしら・・・くすぐったい気持ち、かも?」
照れくさそうに笑った娘を微笑ましい気持ちで見つめながら、唐突に思い浮かぶ微笑みがもう一つ。
「・・・・ん?」
「どうしたの?お父さん」
「いや・・・」
「お父さん?」

『あなた・・・』

遠い過去―――けれど何よりも大切な思い出の中の女性は微笑みを浮かべた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「お父さんってば!」
「・・・悪い。もうしばらく待て、待てったら待て」
(ちょっと待てッ!!!何故俺はそれに気付かなかったんだ・・・)
フレアは、若いころの女房・・・オベル王妃であった母親にそっくりだ。
亜麻色の髪に、アクアマリンのような美しい瞳の・・・惚れに惚れこんだ女だった。
成長したフレアを見ると思いだして、心の奥底の押し込んだ悲しみがせり上がってくる時もあった。
(そのフレアに・・ラズロが似てる・・・?ということは・・、まさかな・・)
先ほどラズロとの会話を思い出し、「まさかな・・」と呟いた。
「何がまさかなの?」
「ッ!あ、い、いや・・」
「・・・あ!わかった!やっぱりお父さんも考えてるのね?」
ポンと両手を打ち合わせ、フレアは楽しげに笑いながら言った。
「ラズロが・・私達の家族かもって、そう思ってるんでしょ?」
「・・・・・・・・・・フ、フレア・・?」
核心をついた言葉に動揺し、椅子から立ち上がる。
娘は父親の驚きに何のリアクションも起こさずに続けていった。
「私ね・・・、ラズロを初めて見たときから・・・”あの子”なんじゃないかって思ってるの」
「お前・・」
「お母さんが、あの紋章を使ったとき私と”あの子”は別々の避難用の小舟に乗せられたわ」
「・・・・・・」
フレアを茫然として見詰めた。
娘が、あの時の出来事を口にするのは・・初めてだったからだ。
リノが無意識に言葉にするのを避けていたように、フレアもまた、詳しく話すことを避けていた。
「・・お父さん、私5歳だったけど・・・覚えてるの」
「何を・・」
「お母さんのこと。もうあまり思い出せないけど、ラズロの雰囲気はお母さんにそっくりなのよ・・」
「・・・あぁ・・」
それはリノ自身も感じていたことだった。
深く考えないようにしていただけで・・。
「この前、夜目が覚めて外に空気を吸いに出たんだけどね・・」
フレアはゆっくり窓辺に移動し、少しだけ開かれている窓を開いた。
「こんな夜だった。月明かりがとても綺麗で・・、甲板には一人だけ先客がいたわ」
「ラズロか・・?」
「えぇ。右手で・・左手を包み込んでたわ。まるで祈るみたいに・・じっと目を閉じて」
「・・・それは、あいつがよくしてた仕種だな。覚えてたんだな」
あいつ―――王妃が罰の紋章を宿してから、何度もそんな風にしているのを見ていた。
まるで紋章を宥めようとするように・・・。
「それを見て、確信したの。あの子は絶対に生きているって信じてたから・・、ラズロがそうなんだって、絶対にそうなんだって・・」
「フレア・・」
4歳離れた弟を、フレアはとても可愛がっていた。
『お姉ちゃんらしくなったな』と褒めると、誇らしげにしていた小さな姿を思い出す。
「お父さんも、そう思ってるんでしょ?ラズロが・・そうかもしれないって」
「あー・・それなんだがな・・」
ゆっくりと窓辺に凭れかかるフレアの隣に移動し、同じように外を眺め白状する。
「思わなかった・・・っていうより、思わないようにしていた、か・・?」
「どういうこと?」
「ラズロは・・罰の紋章を持ってるだろ・・・だからだ」
「な・・ッ!呪われた紋章を持ってるから、ラズロが”あの子”かもしれないって思いたくないってこと!?」
ぐいっと胸倉をつかまれ、物凄い剣幕で詰めよわれる。
その蒼い眼から逸らさずに、静かに続ける。
「・・・ラズロが、俺の息子で・・母親が持ってた罰の紋章を持っているかもしれない」
「・・・?」
「もし、そうだとしたら、俺は・・・どうしようもない気持ちになるんだよ、フレア・・」
「お父さん・・・」
「俺は無力だ。あいつが・・お前の母さんが、苦しんでるのを・・俺は見守るしかなかった」
「・・・・・」
「命を削り取られ、それでもお前たちを愛し・・心配させないために微笑みを絶やさなかったあいつを・・俺は見守るしかできなかったんだ」
死刑を宣告されたのと同じだ。
あいつはそれでも、微笑んでいた。
そして、子供たちを守るために・・・紋章を使い・・。
「あの時の痛みはな・・まだあるんだ」
「お父さん・・」
「ラズロが・・・息子だったら、俺はどうすりゃいい・・。あいつはもう3度も紋章を使ってる。次使えば・・どうなるかわからない」
ラズロが他人の子供であれば、まだ理性は持てる。王としては、だが・・。
「イヤなの?また失うのが・・怖いの?」
「そうだな・・似合わないことに、怖いんだろうさ」
自嘲の笑みを浮かべた父親へ、フレアはそっと手を伸ばし抱きしめた。
「嬉しくないの?」
何を、とは言わない娘を抱きしめ返しながら呟いた。
「嬉しいさ・・・、あんなに大きくなったんだな・・あんなに小さかったのによ・・」
「そうね・・小さくてフワフワ柔らかかったわ・・」
「あぁ・・・・・ホントにな・・こんな風に小さくて・・」
「・・・・こんな風に・・?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お・と・う・さ・ん?」
いきなりバリっと突き飛ばされ慌ててフレアの顔を見ると、そこには般若がいた。
「お、おいおい・・・やわらかってほど、お前に胸はない・・・・ッッッ!」
失言に気付いてももう遅い。

「・・・・うふふふふふふふふふふ・・・・」

ぎりぎりぎりとフレアの持つ弓がしなりを上げた。



「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!!!!!」



「ねぇ、スノウ。何か悲鳴が聞こえたと思うんだけど・・・?」
「そうかい?少し疲れてるんじゃないのかな・・ラズロは頑張りすぎだから」
「そうかな・・やっぱり疲れてるのかなぁ・・」


ちゃんと生息 
2018年01月19日(金)19:03
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なんというかなんといいますか・・お久しぶりでございます
一応PCつけたとき、HPが最初の画面なんですけど・・、日記とか内部触るの久しぶりすぎて(ーー;)
前回の日記から、今日まで何をしてたかっていいますと・・

・猫を飼った
これです、これにつきます
画像うまくはれてたら見れると思いますけど、可愛いだろ!?

あとはまぁ、ネトゲしてたりオフゲしてたりしてますね
最近クロノクロスをちょろっと触って自分の作品を読み直したりしてました
pixivあたりに気になる部分修正して転載しようかな〜と思ってます

あとは九龍も書き直したい・・
九龍長編は、叔父さん編は1,2章まとめられるので・・、ざっくりわかりやすくしたいなぁと読み返すたびに思うんですよね
あとは、TOPのサーチ系の魔人と九龍のが切れてるので修正とか色々やりたいです
作品も途中までのをこの後載せておこうかな・・

ということで、まぁ今年やれたらいいなぁと思いつつ、またでございます


久しぶりすぎる 
2015年04月10日(金)23:49
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お久しぶりです・・放置しすぎ!ヽ(゜ー゜;)ノ
サイトはまだ置いておくけど、進退はそろそろ考えないとなぁ〜

■近況
おかんが入院しております・・なんというか色々心配事が増えてますね
自分も昨年12月に顔面片側麻痺という病気にかかりまして、ものすごく驚きました
いまだに調子悪いですね〜ストレスかな?
書きかけの小説も書きたいですし、九龍もいまだに好きですし、幻水のとあるサイトさんに影響されて幻水2再プレイしてたりもしてちょっと話書いて見たい・・かなー

■ゲーム系
FF14は画像もだしてますが楽しんで遊んでます
気の合う友達が出来ましてね〜楽しんでます
ネトゲ以外ではキングダムハーツとか上にも書いた幻水かな
幽撃隊も勿論遊びました
しかし物足りない・・九龍か魔人か続きがやりたい!
最近のゲームは絵にこだわりすぎて、絵で表現しすぎて、シナリオがよくわからないものが多い気がします
ムービー的なインパクトあるシーンを先に作って辻褄合わせてるような感じ?
だいたい声も付いてくるからなぁ・・絵と声の表現で完成させようとしてる気がするというか
なんかこう先が予測できないワクワクするゲームが減ったな〜と思います


更新というか、色々簡素にしたいなーサイト
それではまた1年後に(!?